3 / 17
リンジーの悪口 ※イベイラ目線
しおりを挟む
サイラスの部屋にサイラスとイベイラの二人はいる。
サイラスの部屋は心地よい柑橘系の香りがする。
部屋には暖炉が焚かれ、パチパチと弾ける音がする。
暖かい。まるでサイラスの愛のように。
天井にはロウソク型のシャンデリアがある。
部屋にはなぜかトランペットが置かれていた。
二人はソファーに座っていて、身体を寄せ合っている。
「サイラス王子殿下。本当にリンジーと婚約破棄して後悔無いですか?」
サイラスはイベイラの顎に手を添えた。
「勿論だよ。あんな女、もう懲り懲りさ。絵描きなんかより、クラリネットが吹けるイベイラの方が好きだ」
と言って愛撫した。
「そう? ありがとうございますわ」
イベイラはサイラスの頬にキスをした。
「イベイラこそ、クリストファーの事はどうしたんだ?」
「あんなハゲ、もう飽き飽き。あたしは髪の毛フサフサなサイラス王子殿下の方が好みですわ」
「そうか。じゃあクリストファーとは離婚してくれるな?」
「ええ」
と言ってイベイラは笑った。
「イベイラ。お前のその八重歯、可愛いな」
「そうですか? そう言って頂いて光栄ですわ。なんでも、この八重歯はコンプレックスだったのですよ」
「俺は八重歯は好きだよ」
と言って抱きしめてくれた。
「お前は学園時代、リンジーに音楽を教えていたんだろ?」
「そうですわ。リンジーは声が低くて『高い声を出すにはどうしたら良いか?』な~んて聞いてきたから、教えてあげたんですの」
「そうだったのか。噂に聞くと、お前はクラリネット奏者コンテストでいつも1位だったみたいだな」
「そうですわよ。流石はサイラス王子殿下。あたしの事をよくわかっていますわ」
サイラスは髭を弄っている。
「その髭、素敵ですね」
「この髭は男の象徴だからな」
「ねえ、聞いて下さいよサイラス王子殿下。クリストファーとくれば女々しいったらありゃしないですわ。ガルシア邸に泥棒が入ってきたら、真っ先に逃亡しましたわ」
「クリストファーとはそういう男か?」
「そうですわよ」
サイラスは身体に腕を回してきた。
「温かいですわ」
外は寒い。
相変わらずなごり雪が降っている。
「俺はリンジーと婚約破棄をして、お前と婚約したと家族に告げる」
「でも、あたしとクリストファーが結婚した事は国王陛下も王妃殿下も、マックス王子殿下も知っているじゃないですか」
「りーこんした事にするのさ」
「そうですわね。あたしもクリストファーとは離婚する気満々だし」
「お前も挨拶してくれるな? サイモントン家に」
「ええ」
イベイラの出自はコントラバス奏者の当主を持つサイモントン子爵家。
それだけに、ご令息やご子息には音楽を叩きこんでいる。
そんなイベイラは家庭教師からクラリネットを習っていた。
また、楽器演奏のみならず、歌も優秀だった。
なぜなら、サイモントン子爵夫人は王立合唱団に入っていて、メゾソプラノを担当していたからだ。
王立交響楽団と王立合唱団でサイモントンと夫人は邂逅した。
「離婚などと言ったら、サイモントン子爵も驚くだろうな。でも、俺と婚約したんだからな」
と言ってイベイラに指輪を渡した。
「ありがとうございます。サイラス王子殿下」
「それはガルシア家の人間には見つからないようにな。なかんずく、クリストファーには注意だ」
「はい、サイラス王子殿下。抜かりなく」
サイラスから受け取った婚約指輪はガーネットだった。
「今は指につけられませんが、いつか身につける時が来ると信じていますわ」
二人はまた抱き合った。
このぬくもり、1ミリとも外の寒さを感じさせない。
「しかし、イベイラは美人だ。リンジーは背が高すぎる。しかも、俺より背が高いんだ。イベイラは言い方悪いけど背が低いだろ? 俺は背が低い女性の方がが好みなんだよ」
「本当にですか?」
イベイラは心躍るように嬉しかった。
なぜなら、背が低い事がコンプレックスだったからだ。
「リンジーは背が高すぎるますわ。まるでシルエットを見れば男か女かわからない位」
「そうだ。あんな化け物みたいに背の高い女は圏外だ」
「でも、王子殿下はなぜリンジーに惚れたんです?」
イベイラは不思議に思っていた。
「それはお見合いだったからさ。あいつの家の当主は王室専属の弁護士だ。だから、王室とアボット家は親交が深かったわけだ」
え!? とイベイラは思った。
リンジーの実父が弁護士だったなんて……。
「王室専属の弁護士」
「そうだ。だから、お見合いさせられたんだよ」
「でも、なぜお兄様であるマックス王子殿下とのお見合いでは無く?」
「それにも理由がある。兄はなかなか人に心を許さないタイプでね。だから、俺とお見合いする事になったんだよ」
「そうだったんですか……」
イベイラはマックスに直接謁見した事は無いが、王室主催の晩餐会や舞踏会などで見たことがあった。
「リンジーを気に入った理由はなんですか?」
やはり気になる。
「当時は絵描きが良かったんだ。リンジーの描いた絵は極めて本物っぽいんだ。そこに惹かれたわけだ」
リンジーの絵は絵とは思えないほどリアリティに溢れていた。リンジーの絵をイベイラも見たことがある。
「しかも、優しいタッチでな」
「そうだったんですね」
「でも今は同じ芸術でも音楽が好きだ。やはり音楽に勝るものは無い。君が奏でる音には何者も敵わない」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「リンジーとは月とすっぽんだ」
「私もクリストファーと比べるとサイラス王子殿下とは雲泥の差ですわ」
「あんな奴、婚約破棄して良かったんだ。だから、お前と一緒になれる」
と言って再び頬にキスをしてきた。
「私もクリストファーとは絶対に離婚しますわ」
と言ってイベイラもサイラスの頬にキスをした。
「俺たちは相思相愛だ。この世にはとんでもない馬鹿力の人間がいる。だけど、愛に勝るチカラは無い」
「そうですわね。愛のチカラは永久不滅ですわよね」
イベイラはサイラスに会う度にクリストファーへの離婚をき決めるのだった。
――あんなハゲ。
「まさかあそこまで禿げるとは思いませんでしたわ」
ある意味結婚詐欺よ。
あたしは騙されたのよ。
イベイラはクリストファーの髪がまだふさふさだった時に結婚した。
クリストファーの髪の毛の色は栗毛色。
しかし、今はつむじの辺りが薄くなっている。
しかも、額も徐々に広くなってきている。
そんなクリストファーにイベイラは嫌気が差していた。
サイラスの部屋は心地よい柑橘系の香りがする。
部屋には暖炉が焚かれ、パチパチと弾ける音がする。
暖かい。まるでサイラスの愛のように。
天井にはロウソク型のシャンデリアがある。
部屋にはなぜかトランペットが置かれていた。
二人はソファーに座っていて、身体を寄せ合っている。
「サイラス王子殿下。本当にリンジーと婚約破棄して後悔無いですか?」
サイラスはイベイラの顎に手を添えた。
「勿論だよ。あんな女、もう懲り懲りさ。絵描きなんかより、クラリネットが吹けるイベイラの方が好きだ」
と言って愛撫した。
「そう? ありがとうございますわ」
イベイラはサイラスの頬にキスをした。
「イベイラこそ、クリストファーの事はどうしたんだ?」
「あんなハゲ、もう飽き飽き。あたしは髪の毛フサフサなサイラス王子殿下の方が好みですわ」
「そうか。じゃあクリストファーとは離婚してくれるな?」
「ええ」
と言ってイベイラは笑った。
「イベイラ。お前のその八重歯、可愛いな」
「そうですか? そう言って頂いて光栄ですわ。なんでも、この八重歯はコンプレックスだったのですよ」
「俺は八重歯は好きだよ」
と言って抱きしめてくれた。
「お前は学園時代、リンジーに音楽を教えていたんだろ?」
「そうですわ。リンジーは声が低くて『高い声を出すにはどうしたら良いか?』な~んて聞いてきたから、教えてあげたんですの」
「そうだったのか。噂に聞くと、お前はクラリネット奏者コンテストでいつも1位だったみたいだな」
「そうですわよ。流石はサイラス王子殿下。あたしの事をよくわかっていますわ」
サイラスは髭を弄っている。
「その髭、素敵ですね」
「この髭は男の象徴だからな」
「ねえ、聞いて下さいよサイラス王子殿下。クリストファーとくれば女々しいったらありゃしないですわ。ガルシア邸に泥棒が入ってきたら、真っ先に逃亡しましたわ」
「クリストファーとはそういう男か?」
「そうですわよ」
サイラスは身体に腕を回してきた。
「温かいですわ」
外は寒い。
相変わらずなごり雪が降っている。
「俺はリンジーと婚約破棄をして、お前と婚約したと家族に告げる」
「でも、あたしとクリストファーが結婚した事は国王陛下も王妃殿下も、マックス王子殿下も知っているじゃないですか」
「りーこんした事にするのさ」
「そうですわね。あたしもクリストファーとは離婚する気満々だし」
「お前も挨拶してくれるな? サイモントン家に」
「ええ」
イベイラの出自はコントラバス奏者の当主を持つサイモントン子爵家。
それだけに、ご令息やご子息には音楽を叩きこんでいる。
そんなイベイラは家庭教師からクラリネットを習っていた。
また、楽器演奏のみならず、歌も優秀だった。
なぜなら、サイモントン子爵夫人は王立合唱団に入っていて、メゾソプラノを担当していたからだ。
王立交響楽団と王立合唱団でサイモントンと夫人は邂逅した。
「離婚などと言ったら、サイモントン子爵も驚くだろうな。でも、俺と婚約したんだからな」
と言ってイベイラに指輪を渡した。
「ありがとうございます。サイラス王子殿下」
「それはガルシア家の人間には見つからないようにな。なかんずく、クリストファーには注意だ」
「はい、サイラス王子殿下。抜かりなく」
サイラスから受け取った婚約指輪はガーネットだった。
「今は指につけられませんが、いつか身につける時が来ると信じていますわ」
二人はまた抱き合った。
このぬくもり、1ミリとも外の寒さを感じさせない。
「しかし、イベイラは美人だ。リンジーは背が高すぎる。しかも、俺より背が高いんだ。イベイラは言い方悪いけど背が低いだろ? 俺は背が低い女性の方がが好みなんだよ」
「本当にですか?」
イベイラは心躍るように嬉しかった。
なぜなら、背が低い事がコンプレックスだったからだ。
「リンジーは背が高すぎるますわ。まるでシルエットを見れば男か女かわからない位」
「そうだ。あんな化け物みたいに背の高い女は圏外だ」
「でも、王子殿下はなぜリンジーに惚れたんです?」
イベイラは不思議に思っていた。
「それはお見合いだったからさ。あいつの家の当主は王室専属の弁護士だ。だから、王室とアボット家は親交が深かったわけだ」
え!? とイベイラは思った。
リンジーの実父が弁護士だったなんて……。
「王室専属の弁護士」
「そうだ。だから、お見合いさせられたんだよ」
「でも、なぜお兄様であるマックス王子殿下とのお見合いでは無く?」
「それにも理由がある。兄はなかなか人に心を許さないタイプでね。だから、俺とお見合いする事になったんだよ」
「そうだったんですか……」
イベイラはマックスに直接謁見した事は無いが、王室主催の晩餐会や舞踏会などで見たことがあった。
「リンジーを気に入った理由はなんですか?」
やはり気になる。
「当時は絵描きが良かったんだ。リンジーの描いた絵は極めて本物っぽいんだ。そこに惹かれたわけだ」
リンジーの絵は絵とは思えないほどリアリティに溢れていた。リンジーの絵をイベイラも見たことがある。
「しかも、優しいタッチでな」
「そうだったんですね」
「でも今は同じ芸術でも音楽が好きだ。やはり音楽に勝るものは無い。君が奏でる音には何者も敵わない」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「リンジーとは月とすっぽんだ」
「私もクリストファーと比べるとサイラス王子殿下とは雲泥の差ですわ」
「あんな奴、婚約破棄して良かったんだ。だから、お前と一緒になれる」
と言って再び頬にキスをしてきた。
「私もクリストファーとは絶対に離婚しますわ」
と言ってイベイラもサイラスの頬にキスをした。
「俺たちは相思相愛だ。この世にはとんでもない馬鹿力の人間がいる。だけど、愛に勝るチカラは無い」
「そうですわね。愛のチカラは永久不滅ですわよね」
イベイラはサイラスに会う度にクリストファーへの離婚をき決めるのだった。
――あんなハゲ。
「まさかあそこまで禿げるとは思いませんでしたわ」
ある意味結婚詐欺よ。
あたしは騙されたのよ。
イベイラはクリストファーの髪がまだふさふさだった時に結婚した。
クリストファーの髪の毛の色は栗毛色。
しかし、今はつむじの辺りが薄くなっている。
しかも、額も徐々に広くなってきている。
そんなクリストファーにイベイラは嫌気が差していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
625
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる