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四 霞染月に惑う
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1.
「岸本、みっけ」
「うっす」
駅前の公園で煙草をふかしている男を見つけた敦はニヤニヤ笑いながら近寄っていった。
「何、ここんところやりまくってるって? 店の No.1 をあまり疲れさせんなって誰かがこぼしてたよ」
置かれている灰皿に近い壁に寄りかかりながら岸本が面白くなさそうに煙を吐きだした。敦を見つめながら無表情に肩を竦める。こいつのこういった鉄面皮みたいな表情が人を怖がらせるんだろうなと、敦は中学時代以来の仲の良い相方を眺めた。今は上着に隠れている背中の墨も人を怖がらせる原因の一つでもあるが、混んでいる筈の数少ない喫煙所なのに岸本の周りだけ人口密度が無茶苦茶低いのが笑える。自分が吐いた煙がこの男の方に流れていくのを怖れるおっさん達が風下で固まっている。
「オメーの方はどうなのよ?」
「あ?」
「辰巳にきいてっぞ。お気にが出来たって?」
「うっそ! たっちゃん、お喋り!」
ふざけたお姉言葉のイントネーションで文句を言いながらも、敦はニヤつく。
「年端も行かない小娘だよ。でも妙に肝が据わってて生真面目で面白いの」
「ふーん?」
敦は少し地面を睨んだ。そういえば、あの「マユ」という子に関しては真剣にどうしたいなどと考えた事はなかった。しばらく考えて、彼は言葉を選びながら口を開いた。
「あえて例えれば、チョウチョが1匹紛れ込んでいる?」
「何それ?」
「まあ、そんな感じの女の子。山野を飛んでると、生き生きとしていて綺麗なのに、間違って都会に紛れ込んできた感じ? いつ落とされて、汚されるかってハラハラしちゃう」
岸本は妙な顔つきで黙っていたが、少しかすれ気味の声で口を開いた。
「落とされて、水溜りに浮かぶ前に自分で捕まえて標本にしたら?」
敦は眉を顰めた。目の前の岸本はフーッと煙を吐き出しながら煙草を灰皿に落としている。落とされた煙草は中に溜まっている水に触れてジュッと音を立てて浮かんだ。
「何言いたいの?」
「あっちゃん、結構そのチョウチョ気に入ってる様だから言ってんの。いっその事、自分で捕まえてピンで刺したら? 綺麗なまま殺してさ」
は……と苦笑いを浮かべて敦は岸本の胸倉を掴んだ。
「何、エロい事言ってんの、岸本? オメーって時々犯罪まがいでフェチな発言するね。超アブねー」
「あっちゃんってさ、自分の事わかってないよね」
岸本は冷静に自分を掴んでいる敦の手を外す。その落ち着いた様子に少しムッとした敦が何か言う前に言葉を続けた。
「いい人振んなよ。その時が来たら、率先してチョウチョ叩き落とすんだろ?」
黙りこんだ敦を覗き込んで少し笑う。
「まあ、力加減だけ間違えんな。俺、ガキの時に捕まえようとしたチョウチョ殺した事あんだ。虫取り網を強く振り回しちゃって、捕まえたけど本体潰しちゃってさ」
ニヤニヤしながら話を続ける。
「綺麗な羽は残ったけど、あん時は後味悪かったなー」
普段は無口なくせに、こんなスケベなたとえ話になるとこいつは口が立つ。敦はムカついて岸本を置いて歩き始めた。「おい、待てよ」と言いながら岸本が後ろから追ってきた。
「腹減った。何か、食いにいこーぜ」
「けっ」
2.
人の悪意というものはどこから沸いてくるのか、見当もつかない。
「あれ?」
公園寄りの飲み屋の店員は遠目に数人の人間が工事現場に入っていくのに気付いた。どこかの不良学生が何かよからぬ事をする為に入ったのだろうか。この頃の工事現場は浮浪者や不良の溜まり場となったり、木材その他の部材の盗みが起こるのを嫌い、厳重に鍵を掛けて入れないようにしている場所が多い。この現場もしっかりとした骨組みが組まれ、本格的な工事に着手したら、その様な囲いが組まれると考えられるが、今のところは幌で覆っただけにすぎない。つまり、現在は誰でも入れる状態なのだ。
彼は両眼の視力が非常に良く、共に 2.0 を誇っていた。工事現場に入った人影の中に髪の毛が長い女性が1人いた事、引っ張られていた事、知り合いのバーテンダーから聞いている尋ね人の条件に近く感じた事を鑑みて、一瞬迷ったが自分の携帯を取り出した。
丁度、休憩時間で煙草の為に店の裏手に座り込んでいたのだが、表通りからは微妙に死角になる場所だった。
スマホの着信音が鳴り始めた時、敦は岸本と共にラーメン屋から出てきた所だった。
「たっちゃん、ばんわ。どったの?」
道を歩きながら軽い言葉を囀っていた敦が途中から普通に喋りだしたので、一緒に歩いていた岸本は不思議そうに敦を見やった。
「ん、わかった。念の為に確認してみる。あんがと」
会話を終えた敦は隣の岸本を見て、首を傾げる。
「公園近くのマンション建設現場はオメーんところの工務店で下請けしてないよね?」
「してねー」
「ちょっと確認したい事あっから、一緒に来て」
「何? 荒事?」
「わかんねー。相手の人数も状況もわかんねーし。ぶっちゃけ、オメーは保険」
「ふーん? いいよ。それがその工事現場ね?」
「そうそう」
「じゃ、この通りを突っ切ろう。近道」
詳しい事は何も聞かずに岸本はあっさりと了承した。基本的に荒事好きであるが、昔から敦が持ち込むトラブルには好んで巻き込まれる傾向があるせいでもある。
勿論、逆も又然りである。そういった所が2人でセットの様に周りから考えられる所以でもあった。
3.
「なるほど、これなら誰でも入れるね」
その現場を一目見て、岸本は笑った。彼は自分の職場で受け持っていない作業場に対しては関心が薄い。おかしな話だが、これが自分達で足場を組んだ現場になると神経質なまでに野良犬がうろつくのを嫌う。他社の現場に対してはそのテリトリー意識が働かないらしく、どうなろうと知ったこっちゃないという徹底的な自己中ぶりを発揮する。
岸本が工事現場の施錠もしていない、幌で覆われた場所に足を踏み込むと見張りらしい男が2人居た。
「こら、入ってくんな。酔っ払い?」
「ここはトイレじゃないよ」
あーんと威嚇しながら不注意に近寄ってきた男の胸倉を掴んで引き寄せると、相手の正体に気付いた男が「あっ」と呻いた。
「何? 岸本さん?」
「奥で何してんの?」
無表情に問いかけると「いや、そのちょっと……」と口ごもる。
「だってさ」
振り返ると敦が入ってきた。工事現場特有の生コンクリートや木材の臭いが鼻をつく。眉を顰めて辺りを見回す彼は機嫌が悪そうに見えた。この敷地は新しいマンションの建設予定地で、まだ「地鎮祭」を執り行ってそう時間は経っていない。骨組みと足場が組まれ始めたばかりの様子だった。
「ちょっと気になったから確認させてね」
横目で男達に笑いかけると、彼らは「へへへ」と頭を掻いた。
「お楽しみは奥?」
「まあ……そんなとこで」
ぶらぶらと踏み込んでいくと、行き止まりの様な場所で女を組み敷いている男とそれを見ている男が2人居た。一目でレイプ中なのはわかる。女は1人で口を塞がれ、着ていたセーターと上着が近くの地面に落ちていた。下着はキャミソールも含めて、まだ身体に纏っていたが、破かれて乳房が露出していた。
「つまんね。さっさと確認して、こんなとこでよー」
うんざりした様に岸本が口を開くと、立っている男達2人がギョッとした様に振り向いた。近寄ってきた人間が見張りの2人と思い込んでいたのだろう。どこかで見た顔の男達だったが、名前は覚えていない。女を組み敷いている若いのには見覚えが無かった。
「ちょ……」
「何? 敦さん?」
「もしかして、ここまずかった?」
敦は話しかけてくる男達に手を振って黙らせると、地面の2人を眺める。工事の垂れ幕のせいで隣のビルからの明かりはあまり射し込まないが、揉みあう様子はわかる。口を塞がれた女は見知った顔に見えた。
2人の傍に膝を付くと、組み敷いている男に頓着せずに話しかける。
「マユ?」
思わぬ場所で自分の名前を呼ばれた女は目を見開いて近くに居る男を見上げた。
「こんなとこでお楽しみ? あんま清潔な場所じゃないよ」
呆れた様な声を出しながら辺りを見回す男を凝視した彼女は「うっ……うっ」ともがきながら言葉を綴ろうとしている。
「何だ、あんた?」
邪魔をされた男がすごい剣幕で睨んでくる。
「引っ込んでろ、三下」
「あれ? 俺、怒られちゃったよ。愛の語らいを邪魔しちゃったのかな?」
「わかってんのなら、とっととどっか行け。チンカス」
その時、後ろから伸びてきた岸本の腕が男の首に嵌った。
「うっせーから、こいつ、このまま落とす?」
「いや、まあ、そのままにしといて」
敦は面白そうに笑った。
「ちょっと確認取りたかっただけだし。んで……マユ、聞いてる?」
彼女の口はまだ男の手によって塞がれてるので、首を縦に振る事で彼女は頷いた。
「彼と逢引中?」
自分の上に乗っている男を指差された真由は頭を横に振った。
「愛の語らいじゃないみたいね」
敦は含み笑いの後、横目で男を睨んだ。その男は岸本に喉を押さえられているので身動きも取れないし、声も出ない。視線を立っているほかの男に移すが、その男達は困った様に視線を逸らす。
「じゃ、俺とならどう? 愛の語らい」
助けて欲しいかと尋ねられたら戸惑い無く頷いたかもしれないが、予想もしなかった事を聞かれた真由は固まった。敦の手が伸びてきて彼女の耳元をくすぐる。抵抗した際に打たれた頬の腫れに目を留めた敦はそこにそっと指を這わせた。
「俺じゃ嫌って言うのなら、退散するよ。基本的に他人の恋路の邪魔はしたくないし」
敦は後ろを振り返ってニヤニヤした。
「もしかして、マユ1人で5人のお相手するつもりなのかな? 壊れないといいね」
目を当てられた男達は頭を掻いて愛想笑いを浮かべている。
「よろしければ、敦さんもいかがっすか?」
「誘われちゃったよ。俺と岸本が入れば7人か。まじで相手できる?」
視線を戻して引き攣ったように震える真由を眺めた。
「岸本、邪魔だからその兄ちゃん、どかして」
無言で引っ張られた男がヨロヨロと立ち上がる。
「そいつ、逃がさないでね。俺をチンカス呼ばわりしやがった。ムカついたからそいつに自分のチンカス食わせよう。んで、マユ」
岸本に捕まった男に代わって、敦が素早く彼女の上に跨る。後ろ手にちらっとスカートの様子を確認する。
「まだ、突っ込まれる前だったのね。……返事ちょうだい」
まっすぐ目を覗き込むと真由は口を震わせて睨んでくる。口を塞いでいた手はなくなったので、今は喋れるはずだ。しかし、しばらく待っても彼女からの返事は無いので、敦は悲しそうに首を振った。
「なんつー強情な女。頑固はいいけど、状況を少しは顧みろって俺は思うよ」
「そりゃ、その子の足元見てるからじゃね? どう考えても卑怯者だわ、あっちゃん。ところでこいつどうすんの?」
岸本は手元で暴れる男の首を絞めなおしながら尋ねてくる。
「そいつはどうでもいいや。煮るなり焼くなり、後腐れが無い程度にね。この女は俺の顔見知りだから連れてくよ」
前半は岸本、後半はそこに佇んでいた男達に告げられた。真由は何も言えずに自分の上で采配を振っている男を眺めていたが、不意に彼に見つめ返された。伸ばされた手に後頭部を押さえられ、もう片方の腕で背中を抱きすくめられながら引き起こされる。
「地面の服拾って」
「はい」
先ほどまで下卑た笑いと共に自分を取り押さえ、「わっせ、わっせ」と神輿を担ぐようなふざけた声を上げていた男達は愛想笑いを浮かべながら脱がせた真弓の衣服を拾い上げて敦に差し出した。
「彼女の上に乗っけて」
醒めた口調で男達に命じ、衣服が真由の上に乗せられると身振りで下がらせる。
「マユ、自分で着て。とりあえず、スゲー格好だから」
そう告げると、積み上げられた木材の上に腰掛け、自分の隣の影になった場所に彼女を座らせた。彼の身体から我が身を離すと、露出した乳房が丸見えである事に気付いた彼女は赤面した。慌てて、セーターを被る。下着は悲惨な状態になっているが、とりあえずそれらを纏ったまま衣服を重ねていく。
近くで重いものが殴られている様な殴打音が聞こえ、「ぐっ!」とか「うっ」とかいう呻き声が聞こえてきた。
「岸本さん、あまりヒデー事しないでください。そいつ、素人の学生さんなんです」
「素人さんが何でオメーらみたいなの使って強姦ごっこしてんのよ?」
「いや、知り合いなんで……」
「もしかして小遣いでも貰った? 毛色が違うね」
そんな会話が続いている最中も足で蹴っているのだろうか、地面に近い場所から物を蹴る音と呻き声が聞こえてくる。
「おい、免許証か何か持ってるだろ? 見せてみろ。学生証でもいいよ」
本格的に嬲ろうとしている岸本の意地悪そうな声を聞きながら敦は隣の女を窺った。
「マユ、服着た?」
「はい」
「んじゃ、ご褒美もらおっかな」
「え?」
隣から伸びてきた手が真由の顎に掛けられた。やんわりと顔を仰向かせられ、ごく自然に敦が唇を重ねてきた。
(うそっ!?)
舌先がチロッと彼女の閉じた唇をなぞっていく。顎に掛かっている指が圧力をかけずに顎と唇を這い回る。その硬い指先が自分の指に絡んできたあの時の光景を思い出して、真由は股間の奥深くが反応した様に感じた。
(やだ……)
「マユ、口開けな」
やっと唇を外した男に耳元で囁かれた彼女は鳥肌が立った。
「向こうのパーティーに加わりたいなんて言うなよ? 岸本は女相手でも容赦無いから」
囁きながら耳朶に吸い付き、うなじにも舌を這わせてくる。
「やっ」
開いた唇の間からするっと舌が侵入してきた。抱えられて彼の膝の上に座らせられると、本格的に口腔内を舐られ始めた。一体これは何なのだろう?
獣に襲われて食われかけたら、もっと強い猛獣が乱入してきて結局は食われるという締まりのない話なのだろうか。以前、イギリスのテレビ局が製作したアフリカのネイチャー番組を思い出した。チーターが倒したインパラかガゼルをライオンが横取りするシーン。
既に死んでいるか、死に掛けている動物の伸び上がった様な後脚が草原から突き出ていて、それがとても哀しく真由の目には映った。多分、今ならあの死に行く動物の気持ちがわかるだろう。誰でもいいからさっさと食って、開放してくれ。
いつの間にか、涙が出てきていた。唇も開放されていた。自分を抱えている男がため息をつくのが聞こえた。
「俺とした事が小娘の色香に血迷って、当初の目的を忘れかけたわ。ごめん」
(何で今更謝られるのだろう?)
「何で……」
敦が自分の顔を覗き込んだのがわかった。
「何で、ここにいるの?」
「マユを探してたから。この前、ジュースの代金って1万円も置いてった。多すぎだっつーの」
真由の上着に付着している泥をパンパンと軽くはたいて落としている。
「おい、そこにある靴とバッグ」
「はい」
真由の持ち物が拾われて持ってこられる。靴を履くと、敦の膝から降ろされた。バッグを渡されて中身を確認するよう言われる。
「送ってやるよ。ついてきな」
やれやれと肩を落としながら、後ろからついてくる娘を促しながら敦はその建設現場を後にした。
4.
真由は、以前、敦と会った飲み屋に連れて行かれた。
「たっちゃん、ビンゴだった。情報あんがと」
「まじか? マユちゃんだっけ? お手洗いでちょっと汚れを落としておいで」
専用の容器からビニール袋に梱包された熱いオシボリを2~3個取り出して、真由に持たせながら案内する。
「ありがとうございます」
小声で礼を言う娘を個室に追い込み、中からしっかりと施錠されたのを確認するとカウンターに戻ってくる。店のマスターもカウンター内に居たので、敦は彼と喋っている最中だった。岸本が店に入ってきた。
「あっちゃん、先に行っちゃうんだもん。つめてーな」
「1人じゃサビシーって? オメーは小学生かよ? あいつ絞めてやった?」
「うん。名前も住所もチェック済み。もう悪さはしないと思うよ」
「一緒にいた奴ら、どこの連中だったっけ? 大崎んとこじゃないよね?」
「確か、二宮さんとこの新米だったと思う。まだ学生気分が抜けないのね」
「ふーん?」
敦は戻ってきた辰巳に目配せする。
「たっちゃん、今夜の事は借りね。お礼は後日って事で」
「ういっす。[喜助] の大友にも会ったらお礼言っておいてね。あいつからの情報だったんだ」
「ああ……なるほど。確かに現場近くの店だったね。まあ、情報を周知させていたオメーのおかげだわ」
「ミイラ取りがミイラになりかかったけどね」
「ぶっ」
「テメー、岸本、黙れ」
「まじか? やっぱり?」
うひゃうひゃとからかわれた敦が声を荒げた時に真由が戻ってきた。敦はマスターから古いムスタングの鍵を受け取り、身振りで礼を示した。
「ありがとうございました」
「汚れは取れたな。じゃ、送っていくよ。マスター借りるよ」
「やっさしー。敦さん、わざわざ車借りたの? ちゃんと金返しとけよ」
「うっせ。単車じゃ寒いでしょーが」
連れだって店を出て行く2人を眺めながらその場に居た人間は苦笑した。
「珍しく、女に優しーね」
辰巳の言葉に岸本は首を傾げる。
「どうかな? 相手にあわせてるだけじゃね? そのうち、パクッといきそうだけどね」
「高校生ぐらい? 若いね。でも今時の高校生はエグいよ」
岸本はニヤニヤ笑う。
「俺達がコウコウセーだった頃も充分エグいの居たけどね。こんなのは年齢じゃないよ。年いった乙女もいたら、若いビッチも居るって」
辰巳の耳に口を近づけて内緒話の様に囁く。
「さっさと喰っちまえって焚き付けたら、逆に我慢しちゃったかも。あっちゃんって妙に天邪鬼だし」
プッと辰巳や近くに居たマスターが笑った。
「岸本、みっけ」
「うっす」
駅前の公園で煙草をふかしている男を見つけた敦はニヤニヤ笑いながら近寄っていった。
「何、ここんところやりまくってるって? 店の No.1 をあまり疲れさせんなって誰かがこぼしてたよ」
置かれている灰皿に近い壁に寄りかかりながら岸本が面白くなさそうに煙を吐きだした。敦を見つめながら無表情に肩を竦める。こいつのこういった鉄面皮みたいな表情が人を怖がらせるんだろうなと、敦は中学時代以来の仲の良い相方を眺めた。今は上着に隠れている背中の墨も人を怖がらせる原因の一つでもあるが、混んでいる筈の数少ない喫煙所なのに岸本の周りだけ人口密度が無茶苦茶低いのが笑える。自分が吐いた煙がこの男の方に流れていくのを怖れるおっさん達が風下で固まっている。
「オメーの方はどうなのよ?」
「あ?」
「辰巳にきいてっぞ。お気にが出来たって?」
「うっそ! たっちゃん、お喋り!」
ふざけたお姉言葉のイントネーションで文句を言いながらも、敦はニヤつく。
「年端も行かない小娘だよ。でも妙に肝が据わってて生真面目で面白いの」
「ふーん?」
敦は少し地面を睨んだ。そういえば、あの「マユ」という子に関しては真剣にどうしたいなどと考えた事はなかった。しばらく考えて、彼は言葉を選びながら口を開いた。
「あえて例えれば、チョウチョが1匹紛れ込んでいる?」
「何それ?」
「まあ、そんな感じの女の子。山野を飛んでると、生き生きとしていて綺麗なのに、間違って都会に紛れ込んできた感じ? いつ落とされて、汚されるかってハラハラしちゃう」
岸本は妙な顔つきで黙っていたが、少しかすれ気味の声で口を開いた。
「落とされて、水溜りに浮かぶ前に自分で捕まえて標本にしたら?」
敦は眉を顰めた。目の前の岸本はフーッと煙を吐き出しながら煙草を灰皿に落としている。落とされた煙草は中に溜まっている水に触れてジュッと音を立てて浮かんだ。
「何言いたいの?」
「あっちゃん、結構そのチョウチョ気に入ってる様だから言ってんの。いっその事、自分で捕まえてピンで刺したら? 綺麗なまま殺してさ」
は……と苦笑いを浮かべて敦は岸本の胸倉を掴んだ。
「何、エロい事言ってんの、岸本? オメーって時々犯罪まがいでフェチな発言するね。超アブねー」
「あっちゃんってさ、自分の事わかってないよね」
岸本は冷静に自分を掴んでいる敦の手を外す。その落ち着いた様子に少しムッとした敦が何か言う前に言葉を続けた。
「いい人振んなよ。その時が来たら、率先してチョウチョ叩き落とすんだろ?」
黙りこんだ敦を覗き込んで少し笑う。
「まあ、力加減だけ間違えんな。俺、ガキの時に捕まえようとしたチョウチョ殺した事あんだ。虫取り網を強く振り回しちゃって、捕まえたけど本体潰しちゃってさ」
ニヤニヤしながら話を続ける。
「綺麗な羽は残ったけど、あん時は後味悪かったなー」
普段は無口なくせに、こんなスケベなたとえ話になるとこいつは口が立つ。敦はムカついて岸本を置いて歩き始めた。「おい、待てよ」と言いながら岸本が後ろから追ってきた。
「腹減った。何か、食いにいこーぜ」
「けっ」
2.
人の悪意というものはどこから沸いてくるのか、見当もつかない。
「あれ?」
公園寄りの飲み屋の店員は遠目に数人の人間が工事現場に入っていくのに気付いた。どこかの不良学生が何かよからぬ事をする為に入ったのだろうか。この頃の工事現場は浮浪者や不良の溜まり場となったり、木材その他の部材の盗みが起こるのを嫌い、厳重に鍵を掛けて入れないようにしている場所が多い。この現場もしっかりとした骨組みが組まれ、本格的な工事に着手したら、その様な囲いが組まれると考えられるが、今のところは幌で覆っただけにすぎない。つまり、現在は誰でも入れる状態なのだ。
彼は両眼の視力が非常に良く、共に 2.0 を誇っていた。工事現場に入った人影の中に髪の毛が長い女性が1人いた事、引っ張られていた事、知り合いのバーテンダーから聞いている尋ね人の条件に近く感じた事を鑑みて、一瞬迷ったが自分の携帯を取り出した。
丁度、休憩時間で煙草の為に店の裏手に座り込んでいたのだが、表通りからは微妙に死角になる場所だった。
スマホの着信音が鳴り始めた時、敦は岸本と共にラーメン屋から出てきた所だった。
「たっちゃん、ばんわ。どったの?」
道を歩きながら軽い言葉を囀っていた敦が途中から普通に喋りだしたので、一緒に歩いていた岸本は不思議そうに敦を見やった。
「ん、わかった。念の為に確認してみる。あんがと」
会話を終えた敦は隣の岸本を見て、首を傾げる。
「公園近くのマンション建設現場はオメーんところの工務店で下請けしてないよね?」
「してねー」
「ちょっと確認したい事あっから、一緒に来て」
「何? 荒事?」
「わかんねー。相手の人数も状況もわかんねーし。ぶっちゃけ、オメーは保険」
「ふーん? いいよ。それがその工事現場ね?」
「そうそう」
「じゃ、この通りを突っ切ろう。近道」
詳しい事は何も聞かずに岸本はあっさりと了承した。基本的に荒事好きであるが、昔から敦が持ち込むトラブルには好んで巻き込まれる傾向があるせいでもある。
勿論、逆も又然りである。そういった所が2人でセットの様に周りから考えられる所以でもあった。
3.
「なるほど、これなら誰でも入れるね」
その現場を一目見て、岸本は笑った。彼は自分の職場で受け持っていない作業場に対しては関心が薄い。おかしな話だが、これが自分達で足場を組んだ現場になると神経質なまでに野良犬がうろつくのを嫌う。他社の現場に対してはそのテリトリー意識が働かないらしく、どうなろうと知ったこっちゃないという徹底的な自己中ぶりを発揮する。
岸本が工事現場の施錠もしていない、幌で覆われた場所に足を踏み込むと見張りらしい男が2人居た。
「こら、入ってくんな。酔っ払い?」
「ここはトイレじゃないよ」
あーんと威嚇しながら不注意に近寄ってきた男の胸倉を掴んで引き寄せると、相手の正体に気付いた男が「あっ」と呻いた。
「何? 岸本さん?」
「奥で何してんの?」
無表情に問いかけると「いや、そのちょっと……」と口ごもる。
「だってさ」
振り返ると敦が入ってきた。工事現場特有の生コンクリートや木材の臭いが鼻をつく。眉を顰めて辺りを見回す彼は機嫌が悪そうに見えた。この敷地は新しいマンションの建設予定地で、まだ「地鎮祭」を執り行ってそう時間は経っていない。骨組みと足場が組まれ始めたばかりの様子だった。
「ちょっと気になったから確認させてね」
横目で男達に笑いかけると、彼らは「へへへ」と頭を掻いた。
「お楽しみは奥?」
「まあ……そんなとこで」
ぶらぶらと踏み込んでいくと、行き止まりの様な場所で女を組み敷いている男とそれを見ている男が2人居た。一目でレイプ中なのはわかる。女は1人で口を塞がれ、着ていたセーターと上着が近くの地面に落ちていた。下着はキャミソールも含めて、まだ身体に纏っていたが、破かれて乳房が露出していた。
「つまんね。さっさと確認して、こんなとこでよー」
うんざりした様に岸本が口を開くと、立っている男達2人がギョッとした様に振り向いた。近寄ってきた人間が見張りの2人と思い込んでいたのだろう。どこかで見た顔の男達だったが、名前は覚えていない。女を組み敷いている若いのには見覚えが無かった。
「ちょ……」
「何? 敦さん?」
「もしかして、ここまずかった?」
敦は話しかけてくる男達に手を振って黙らせると、地面の2人を眺める。工事の垂れ幕のせいで隣のビルからの明かりはあまり射し込まないが、揉みあう様子はわかる。口を塞がれた女は見知った顔に見えた。
2人の傍に膝を付くと、組み敷いている男に頓着せずに話しかける。
「マユ?」
思わぬ場所で自分の名前を呼ばれた女は目を見開いて近くに居る男を見上げた。
「こんなとこでお楽しみ? あんま清潔な場所じゃないよ」
呆れた様な声を出しながら辺りを見回す男を凝視した彼女は「うっ……うっ」ともがきながら言葉を綴ろうとしている。
「何だ、あんた?」
邪魔をされた男がすごい剣幕で睨んでくる。
「引っ込んでろ、三下」
「あれ? 俺、怒られちゃったよ。愛の語らいを邪魔しちゃったのかな?」
「わかってんのなら、とっととどっか行け。チンカス」
その時、後ろから伸びてきた岸本の腕が男の首に嵌った。
「うっせーから、こいつ、このまま落とす?」
「いや、まあ、そのままにしといて」
敦は面白そうに笑った。
「ちょっと確認取りたかっただけだし。んで……マユ、聞いてる?」
彼女の口はまだ男の手によって塞がれてるので、首を縦に振る事で彼女は頷いた。
「彼と逢引中?」
自分の上に乗っている男を指差された真由は頭を横に振った。
「愛の語らいじゃないみたいね」
敦は含み笑いの後、横目で男を睨んだ。その男は岸本に喉を押さえられているので身動きも取れないし、声も出ない。視線を立っているほかの男に移すが、その男達は困った様に視線を逸らす。
「じゃ、俺とならどう? 愛の語らい」
助けて欲しいかと尋ねられたら戸惑い無く頷いたかもしれないが、予想もしなかった事を聞かれた真由は固まった。敦の手が伸びてきて彼女の耳元をくすぐる。抵抗した際に打たれた頬の腫れに目を留めた敦はそこにそっと指を這わせた。
「俺じゃ嫌って言うのなら、退散するよ。基本的に他人の恋路の邪魔はしたくないし」
敦は後ろを振り返ってニヤニヤした。
「もしかして、マユ1人で5人のお相手するつもりなのかな? 壊れないといいね」
目を当てられた男達は頭を掻いて愛想笑いを浮かべている。
「よろしければ、敦さんもいかがっすか?」
「誘われちゃったよ。俺と岸本が入れば7人か。まじで相手できる?」
視線を戻して引き攣ったように震える真由を眺めた。
「岸本、邪魔だからその兄ちゃん、どかして」
無言で引っ張られた男がヨロヨロと立ち上がる。
「そいつ、逃がさないでね。俺をチンカス呼ばわりしやがった。ムカついたからそいつに自分のチンカス食わせよう。んで、マユ」
岸本に捕まった男に代わって、敦が素早く彼女の上に跨る。後ろ手にちらっとスカートの様子を確認する。
「まだ、突っ込まれる前だったのね。……返事ちょうだい」
まっすぐ目を覗き込むと真由は口を震わせて睨んでくる。口を塞いでいた手はなくなったので、今は喋れるはずだ。しかし、しばらく待っても彼女からの返事は無いので、敦は悲しそうに首を振った。
「なんつー強情な女。頑固はいいけど、状況を少しは顧みろって俺は思うよ」
「そりゃ、その子の足元見てるからじゃね? どう考えても卑怯者だわ、あっちゃん。ところでこいつどうすんの?」
岸本は手元で暴れる男の首を絞めなおしながら尋ねてくる。
「そいつはどうでもいいや。煮るなり焼くなり、後腐れが無い程度にね。この女は俺の顔見知りだから連れてくよ」
前半は岸本、後半はそこに佇んでいた男達に告げられた。真由は何も言えずに自分の上で采配を振っている男を眺めていたが、不意に彼に見つめ返された。伸ばされた手に後頭部を押さえられ、もう片方の腕で背中を抱きすくめられながら引き起こされる。
「地面の服拾って」
「はい」
先ほどまで下卑た笑いと共に自分を取り押さえ、「わっせ、わっせ」と神輿を担ぐようなふざけた声を上げていた男達は愛想笑いを浮かべながら脱がせた真弓の衣服を拾い上げて敦に差し出した。
「彼女の上に乗っけて」
醒めた口調で男達に命じ、衣服が真由の上に乗せられると身振りで下がらせる。
「マユ、自分で着て。とりあえず、スゲー格好だから」
そう告げると、積み上げられた木材の上に腰掛け、自分の隣の影になった場所に彼女を座らせた。彼の身体から我が身を離すと、露出した乳房が丸見えである事に気付いた彼女は赤面した。慌てて、セーターを被る。下着は悲惨な状態になっているが、とりあえずそれらを纏ったまま衣服を重ねていく。
近くで重いものが殴られている様な殴打音が聞こえ、「ぐっ!」とか「うっ」とかいう呻き声が聞こえてきた。
「岸本さん、あまりヒデー事しないでください。そいつ、素人の学生さんなんです」
「素人さんが何でオメーらみたいなの使って強姦ごっこしてんのよ?」
「いや、知り合いなんで……」
「もしかして小遣いでも貰った? 毛色が違うね」
そんな会話が続いている最中も足で蹴っているのだろうか、地面に近い場所から物を蹴る音と呻き声が聞こえてくる。
「おい、免許証か何か持ってるだろ? 見せてみろ。学生証でもいいよ」
本格的に嬲ろうとしている岸本の意地悪そうな声を聞きながら敦は隣の女を窺った。
「マユ、服着た?」
「はい」
「んじゃ、ご褒美もらおっかな」
「え?」
隣から伸びてきた手が真由の顎に掛けられた。やんわりと顔を仰向かせられ、ごく自然に敦が唇を重ねてきた。
(うそっ!?)
舌先がチロッと彼女の閉じた唇をなぞっていく。顎に掛かっている指が圧力をかけずに顎と唇を這い回る。その硬い指先が自分の指に絡んできたあの時の光景を思い出して、真由は股間の奥深くが反応した様に感じた。
(やだ……)
「マユ、口開けな」
やっと唇を外した男に耳元で囁かれた彼女は鳥肌が立った。
「向こうのパーティーに加わりたいなんて言うなよ? 岸本は女相手でも容赦無いから」
囁きながら耳朶に吸い付き、うなじにも舌を這わせてくる。
「やっ」
開いた唇の間からするっと舌が侵入してきた。抱えられて彼の膝の上に座らせられると、本格的に口腔内を舐られ始めた。一体これは何なのだろう?
獣に襲われて食われかけたら、もっと強い猛獣が乱入してきて結局は食われるという締まりのない話なのだろうか。以前、イギリスのテレビ局が製作したアフリカのネイチャー番組を思い出した。チーターが倒したインパラかガゼルをライオンが横取りするシーン。
既に死んでいるか、死に掛けている動物の伸び上がった様な後脚が草原から突き出ていて、それがとても哀しく真由の目には映った。多分、今ならあの死に行く動物の気持ちがわかるだろう。誰でもいいからさっさと食って、開放してくれ。
いつの間にか、涙が出てきていた。唇も開放されていた。自分を抱えている男がため息をつくのが聞こえた。
「俺とした事が小娘の色香に血迷って、当初の目的を忘れかけたわ。ごめん」
(何で今更謝られるのだろう?)
「何で……」
敦が自分の顔を覗き込んだのがわかった。
「何で、ここにいるの?」
「マユを探してたから。この前、ジュースの代金って1万円も置いてった。多すぎだっつーの」
真由の上着に付着している泥をパンパンと軽くはたいて落としている。
「おい、そこにある靴とバッグ」
「はい」
真由の持ち物が拾われて持ってこられる。靴を履くと、敦の膝から降ろされた。バッグを渡されて中身を確認するよう言われる。
「送ってやるよ。ついてきな」
やれやれと肩を落としながら、後ろからついてくる娘を促しながら敦はその建設現場を後にした。
4.
真由は、以前、敦と会った飲み屋に連れて行かれた。
「たっちゃん、ビンゴだった。情報あんがと」
「まじか? マユちゃんだっけ? お手洗いでちょっと汚れを落としておいで」
専用の容器からビニール袋に梱包された熱いオシボリを2~3個取り出して、真由に持たせながら案内する。
「ありがとうございます」
小声で礼を言う娘を個室に追い込み、中からしっかりと施錠されたのを確認するとカウンターに戻ってくる。店のマスターもカウンター内に居たので、敦は彼と喋っている最中だった。岸本が店に入ってきた。
「あっちゃん、先に行っちゃうんだもん。つめてーな」
「1人じゃサビシーって? オメーは小学生かよ? あいつ絞めてやった?」
「うん。名前も住所もチェック済み。もう悪さはしないと思うよ」
「一緒にいた奴ら、どこの連中だったっけ? 大崎んとこじゃないよね?」
「確か、二宮さんとこの新米だったと思う。まだ学生気分が抜けないのね」
「ふーん?」
敦は戻ってきた辰巳に目配せする。
「たっちゃん、今夜の事は借りね。お礼は後日って事で」
「ういっす。[喜助] の大友にも会ったらお礼言っておいてね。あいつからの情報だったんだ」
「ああ……なるほど。確かに現場近くの店だったね。まあ、情報を周知させていたオメーのおかげだわ」
「ミイラ取りがミイラになりかかったけどね」
「ぶっ」
「テメー、岸本、黙れ」
「まじか? やっぱり?」
うひゃうひゃとからかわれた敦が声を荒げた時に真由が戻ってきた。敦はマスターから古いムスタングの鍵を受け取り、身振りで礼を示した。
「ありがとうございました」
「汚れは取れたな。じゃ、送っていくよ。マスター借りるよ」
「やっさしー。敦さん、わざわざ車借りたの? ちゃんと金返しとけよ」
「うっせ。単車じゃ寒いでしょーが」
連れだって店を出て行く2人を眺めながらその場に居た人間は苦笑した。
「珍しく、女に優しーね」
辰巳の言葉に岸本は首を傾げる。
「どうかな? 相手にあわせてるだけじゃね? そのうち、パクッといきそうだけどね」
「高校生ぐらい? 若いね。でも今時の高校生はエグいよ」
岸本はニヤニヤ笑う。
「俺達がコウコウセーだった頃も充分エグいの居たけどね。こんなのは年齢じゃないよ。年いった乙女もいたら、若いビッチも居るって」
辰巳の耳に口を近づけて内緒話の様に囁く。
「さっさと喰っちまえって焚き付けたら、逆に我慢しちゃったかも。あっちゃんって妙に天邪鬼だし」
プッと辰巳や近くに居たマスターが笑った。
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