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18.拒絶
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触れたい――。
その思いのままに動くセイラの身体。
「どういうつもりだ?というかお前は誰だ?」
ウィリアムの低い声にビクリとした後動きを止めるセイラ。もちろん彼女のことは知っているがそういう問題ではない。高位貴族に名乗りもしないなんてあり得ない。
「え!?私のこと知らないんですかぁ!?セイラ・タバサですよ!あなたのセ・イ・ラ!ウィリアム様があまりにも素敵だから……思わず触りたくなっちゃいましたぁ」
ぽうと頬を赤らめるセイラから無表情のままウィリアムは3歩下がる。
「ハリス殿下に挨拶もしないとはどういうつもりだ?反逆か?」
「え?あ、ああ。ハリス殿下御機嫌よう」
「はっはっはっ。清々しいほど面倒くさそうな挨拶だね」
朗らかな笑みを浮かべているがその目は全く笑っていない。
「伯爵令嬢ごときが皇子になんと無礼な」
流石に皇子相手に失礼だったかもしれない。一瞬だけそんな考えが過ぎるがハリスの顔をちらりと見てすぐに思い直す。
「でも仕方ないじゃないですかぁ。だってぇ私のタイプじゃないんですもん」
ハリスの朗らかな笑みを浮かべた顔が――
ウィリアムの怒り顔が――
周囲で聞き耳を立てていた生徒たちの動きが――
セイラの言葉によって全て止まった。
「皇子様って感じで文句無しにかっこいいんですけどぉ、リリベル様と同じ色合いだし顔も少し似てるから苦手なんですよねぇ」
おいおいおいおいマジか。
それを皇子様に言っちゃうのね。
ハリスとウィリアムより先に時を取り戻した生徒たちは恐る恐るハリスに視線を向ける。
「…………………」
あ、まだ固まっている。皇子固まっていても文句無しに麗しいご尊顔ですからね!
ではこちらは――――ひっ!?
「…………ふざけているのか?」
ウィリアムの固まっていた怒り顔は更に眉間に皺が深く刻まれた鬼の如き怒り顔に変わっていた。いつも以上に低い声が更なる恐怖を人に与える。
「なんでそんな怖い顔をするんですかぁ!?私はウィリアム様の顔の方が好きだって言っただけじゃないですか!好きとか言っちゃった!きゃっ恥ずかしい」
ヒィィィィィィ。
本当にやばいやつだ。
あのまじもんの怒りに動じもしなければ、目をうるうるさせて上目遣いなどをして更に彼の怒りを買うような愚行までやってのけるとは。
「ハリス皇子無駄な時間を過ごしてしまいましたね。参りましょう。あの…………………皇子?」
「あ、ああすまない。人というのは驚きで本当に固まってしまうのだな。公爵家の三姉妹もなかなかな女性たちだと思っていたが、本当の無礼というものは一味違うな。彼女たちの無礼からは愛があると気づきがあったよ」
「皇子にとって気づきがあられたのなら何よりです。ですがこれ以上は間違いなくただ!ただ!無駄なだけです。さ、参りましょう」
「ああそうだな。ではタバサ伯爵令嬢失礼するよ」
彼女の横を通り過ぎようとした時――
「いったーい!」
セイラの悲鳴が上がる。
「なんのつもりだ?」
あまりにもの気色悪さに怒りを通り越し顔を蒼白にするウィリアム。すれ違い様に手をぎゅっと握られたのだ。
ぶわぁぁと肌は粟立ち、女性相手であるものの思わず触れられた手を強く振り払っていた。
「……汚らわしい」
そう言ってウィリアムは手を拭こうと制服のポケットを探るがそこに入れているはずのものがない。
「はっはっはっ。ウィリアム制服は高価なんだぞ?」
困ったようにハリスは笑う。ウィリアムの手はハリスの背中を何度も撫でていた。
「は!?私は何を!申し訳ありません。何かで拭かねば耐えられなかったものでして……自分の服で拭けば良かったですね」
「頭が錯乱状態になったんだろう。彼女の言動に混乱する気持ちはよく分かるから許す」
男気溢れるハリスは自らの制服で手を拭かれても笑みを崩さなかった。
「ウィリアム様ぁ!お話しましょうって言ってるじゃないですかぁ。なんで皇子様と一緒に行っちゃうんですかぁ?酷いですぅ」
頬をわざとらしく膨らますセイラ。プンプンと音が出そうなほど怒ってますアピールをしてくるがただ目障りなだけだ。
「皇子との交流よりも君との交流の方が大事だということか?君は皇子より立場が上の人間なのか?国に関わるような話があるのか?」
別に国政の話などしていないが、嘘も方便である。
「もちろん皇子様の方が偉いに決まってます!」
褒めて褒めてと言わんばかりに胸を張るセイラ。
「でもぉ」
何やらくねくねとする彼女に嫌な予感しかしない。
「ウィリアム様にとって大切なのはわ・た・しだったりして!やだぁ!」
やだぁは見ているこちらのセリフだ。
あまりにもの愚行に足を止めて魅入っている他の生徒たちは皆一斉に心の中でツッコミを入れた。
「タバサ伯爵令嬢。申し訳ないが君の耳には私の言葉は届かないようだ。これから君と必要以上に話す気はないことを今はっきりと言っておく。くだらない話であれば返事をするつもりもないので覚えておくように」
「え~!?ウィリアム様の素敵な声はちゃんと耳に入ってますよぉ!返事してくれないと寂しいですぅ」
こいつには何を言っても無駄なようだ。
「ハリス皇子行きましょう」
「そうだな」
ハリスが馬車に乗り込み、ウィリアムもその後に続く。
「え、ちょ……いたっ!」
セイラは去ろうとするウィリアムの手を再び取ろうと手を伸ばすが躱され地面に倒れこむ。手や足に擦り傷ができたのを見て目を輝かせる。
「いたぁい!手も足も怪我しちゃったあ!痛いよぉウィリアム様ぁ……てちょ、え、行っちゃうの!?酷くない!?」
2人はどれだけセイラが騒ごうと一瞥することなく去って行った。
その思いのままに動くセイラの身体。
「どういうつもりだ?というかお前は誰だ?」
ウィリアムの低い声にビクリとした後動きを止めるセイラ。もちろん彼女のことは知っているがそういう問題ではない。高位貴族に名乗りもしないなんてあり得ない。
「え!?私のこと知らないんですかぁ!?セイラ・タバサですよ!あなたのセ・イ・ラ!ウィリアム様があまりにも素敵だから……思わず触りたくなっちゃいましたぁ」
ぽうと頬を赤らめるセイラから無表情のままウィリアムは3歩下がる。
「ハリス殿下に挨拶もしないとはどういうつもりだ?反逆か?」
「え?あ、ああ。ハリス殿下御機嫌よう」
「はっはっはっ。清々しいほど面倒くさそうな挨拶だね」
朗らかな笑みを浮かべているがその目は全く笑っていない。
「伯爵令嬢ごときが皇子になんと無礼な」
流石に皇子相手に失礼だったかもしれない。一瞬だけそんな考えが過ぎるがハリスの顔をちらりと見てすぐに思い直す。
「でも仕方ないじゃないですかぁ。だってぇ私のタイプじゃないんですもん」
ハリスの朗らかな笑みを浮かべた顔が――
ウィリアムの怒り顔が――
周囲で聞き耳を立てていた生徒たちの動きが――
セイラの言葉によって全て止まった。
「皇子様って感じで文句無しにかっこいいんですけどぉ、リリベル様と同じ色合いだし顔も少し似てるから苦手なんですよねぇ」
おいおいおいおいマジか。
それを皇子様に言っちゃうのね。
ハリスとウィリアムより先に時を取り戻した生徒たちは恐る恐るハリスに視線を向ける。
「…………………」
あ、まだ固まっている。皇子固まっていても文句無しに麗しいご尊顔ですからね!
ではこちらは――――ひっ!?
「…………ふざけているのか?」
ウィリアムの固まっていた怒り顔は更に眉間に皺が深く刻まれた鬼の如き怒り顔に変わっていた。いつも以上に低い声が更なる恐怖を人に与える。
「なんでそんな怖い顔をするんですかぁ!?私はウィリアム様の顔の方が好きだって言っただけじゃないですか!好きとか言っちゃった!きゃっ恥ずかしい」
ヒィィィィィィ。
本当にやばいやつだ。
あのまじもんの怒りに動じもしなければ、目をうるうるさせて上目遣いなどをして更に彼の怒りを買うような愚行までやってのけるとは。
「ハリス皇子無駄な時間を過ごしてしまいましたね。参りましょう。あの…………………皇子?」
「あ、ああすまない。人というのは驚きで本当に固まってしまうのだな。公爵家の三姉妹もなかなかな女性たちだと思っていたが、本当の無礼というものは一味違うな。彼女たちの無礼からは愛があると気づきがあったよ」
「皇子にとって気づきがあられたのなら何よりです。ですがこれ以上は間違いなくただ!ただ!無駄なだけです。さ、参りましょう」
「ああそうだな。ではタバサ伯爵令嬢失礼するよ」
彼女の横を通り過ぎようとした時――
「いったーい!」
セイラの悲鳴が上がる。
「なんのつもりだ?」
あまりにもの気色悪さに怒りを通り越し顔を蒼白にするウィリアム。すれ違い様に手をぎゅっと握られたのだ。
ぶわぁぁと肌は粟立ち、女性相手であるものの思わず触れられた手を強く振り払っていた。
「……汚らわしい」
そう言ってウィリアムは手を拭こうと制服のポケットを探るがそこに入れているはずのものがない。
「はっはっはっ。ウィリアム制服は高価なんだぞ?」
困ったようにハリスは笑う。ウィリアムの手はハリスの背中を何度も撫でていた。
「は!?私は何を!申し訳ありません。何かで拭かねば耐えられなかったものでして……自分の服で拭けば良かったですね」
「頭が錯乱状態になったんだろう。彼女の言動に混乱する気持ちはよく分かるから許す」
男気溢れるハリスは自らの制服で手を拭かれても笑みを崩さなかった。
「ウィリアム様ぁ!お話しましょうって言ってるじゃないですかぁ。なんで皇子様と一緒に行っちゃうんですかぁ?酷いですぅ」
頬をわざとらしく膨らますセイラ。プンプンと音が出そうなほど怒ってますアピールをしてくるがただ目障りなだけだ。
「皇子との交流よりも君との交流の方が大事だということか?君は皇子より立場が上の人間なのか?国に関わるような話があるのか?」
別に国政の話などしていないが、嘘も方便である。
「もちろん皇子様の方が偉いに決まってます!」
褒めて褒めてと言わんばかりに胸を張るセイラ。
「でもぉ」
何やらくねくねとする彼女に嫌な予感しかしない。
「ウィリアム様にとって大切なのはわ・た・しだったりして!やだぁ!」
やだぁは見ているこちらのセリフだ。
あまりにもの愚行に足を止めて魅入っている他の生徒たちは皆一斉に心の中でツッコミを入れた。
「タバサ伯爵令嬢。申し訳ないが君の耳には私の言葉は届かないようだ。これから君と必要以上に話す気はないことを今はっきりと言っておく。くだらない話であれば返事をするつもりもないので覚えておくように」
「え~!?ウィリアム様の素敵な声はちゃんと耳に入ってますよぉ!返事してくれないと寂しいですぅ」
こいつには何を言っても無駄なようだ。
「ハリス皇子行きましょう」
「そうだな」
ハリスが馬車に乗り込み、ウィリアムもその後に続く。
「え、ちょ……いたっ!」
セイラは去ろうとするウィリアムの手を再び取ろうと手を伸ばすが躱され地面に倒れこむ。手や足に擦り傷ができたのを見て目を輝かせる。
「いたぁい!手も足も怪我しちゃったあ!痛いよぉウィリアム様ぁ……てちょ、え、行っちゃうの!?酷くない!?」
2人はどれだけセイラが騒ごうと一瞥することなく去って行った。
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