公爵家の女たちは男運だけがない

たくみ

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42.お手柔らかに

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 リリベルの回想は終わり王宮。

「おー夫人も夫人だが君も言っちゃったなあ」

「言っちゃったわよ!思わず言っちゃったわよ」

 未来の義母に普通に喧嘩を売った?いや買ってしまった?

「だってだってどうしたって絶対に好かれることなんてないじゃない!?私なんだって完璧にこなしちゃうんだもん、美しいんだもん、絶対にお母様を彷彿とさせてしまうわ!」

 はははは、我がいとこはなんたる自信家さんなのだろう。

「でもさーどうしようもないことをはっきりと言われたら受け止めるしかないじゃん!?その考えを捻じ曲げることなんてできないだろうし、心を受け止めた上でこちらが気にせずにいるしかないじゃん!」

「そうだな」

「そうだなじゃないわよ!お母様と確執があった人の息子を推すなんて酷いじゃない!」

「そうは言ってもなあ……彼以上にいいやつも君にふさわしいやつもいないだろう?」

「う……」

 言葉に詰まるリリベルに今だと言わんばかりに言葉を紡ぐ。

「嫁姑問題はどの家にもあるものだ。厳しい指導やらなんやらはあるだろうが食事を与えられなかったり体罰などは行われないはずだ。君はフライア公爵家の姫君なのだ。それにリース公爵夫人もそんなことをする方ではない」

「その指導が問題なんでしょ。きっとねちねちねちねち言われるわ」

「言葉による応酬はあるだろうが君は負けないだろう?むしろ燃えるタイプだろう?エレノア様のシゴキにも耐えてきたんだし」

「……………………」

「なんの問題もなしだ」

「でもお義母様だって嫌でしょ……」

 俯きがちにポツリと呟くリリベル。ハリスはふ……と軽く笑う。なんやかんやいってこのいとこ殿は優しいのだ。

「大丈夫よリリベル」

「皇后様……」

 ハリスがやんわりと心を和ませている間に皇后が口を挟んだ。立ち上がりリリベルに近づきその手をゆっくりと包み込む。

「ナタリーは公爵家のことをとても大切に思っているから家を発展させる優秀な嫁に無茶苦茶なことをする方ではないわ。厳しいことや酷いことも言われるかもしれない。でもやり合うことなど家族であればいくらでもあるはず。でもあなたなら乗り越えられるはずよ」

「はい」

 皇后の言葉に素直に頷くリリベルにその場はほっこりちゃん。

 1名を除いて。

「ちょいちょい待て待ておかしいだろ!同じこと!僕も母上も同じこと言ってるー!それはおかしい!リリベルそれはないぞー!」

 ハリスの叫びは無視された。





~~~~~~~~~~


 翌日

 公爵邸の客間にはリリベルの前で頭を下げるウィリアムの姿があった。

「リリベル昨日は母がすまなかった。気分を害しただろう?」

「何をおっしゃいますかウィリアム様。全然気にしていませんわぁ」

 いやいや、ではそのこめかみに浮かぶものはなんなのだ。ソファに腰掛けるリリベルは眩しいほどの素敵な笑みを浮かべているがこめかみにぶっとい青筋が浮き出ている。

「公爵夫人になるのですもの。多少の困難など当たり前にあるものです」

「で、では婚約破棄などは考えてはいないと?」

「もちろんですわ!」

「よ、良かった」

 ほ、とする様子のウィリアムにリリベルは心が温かくなる。

「それが心配で来ましたの?」 

「ああ、せっかく手に入れた君との縁を早々に切るわけにはいかないからね」

「ふふっ」

 嬉しそうな表情をするリリベルにウィリアムまで嬉しい気持ちになる。

「私だってせっかく繋いだ帝国一いい男の婚約者の立場を手放すつもりなどありませんわ。いい女にはいい男、これ常識ですわ」

 高飛車で傲慢な物言いだが、彼女にはそういった言動がよく似合う。思わずくすりと笑うウィリアムに気づくことなくリリベルは言葉を続ける。

「私お義母様のこと好きですわよ」

「本当か?」

「きっと悪い方ではないのでしょう。私の目を見て真っ直ぐ言葉を発し、私の言葉もしっかり聞き受け止めてくださる方。公爵家を支える女主人が厳しさを持たずして、完璧を求めずしてどうしますか。うまくやっていく為には本音を吐き出すことはとても大切です」

 そう言ってもらえると少し気が楽になる。母も自分にとっては大事な存在。憎しみ合うのは心苦しい。 

「裏でごちゃごちゃ言われてはこちらも表だって言えませんが、目の前で言われたら言い返せますしね」

 お、おお確かに。姑に物申せぬ嫁は多いものだがリリベルは全くもって逞しい女性である。

「それに私……難題を与えられるほど燃えますの。あなた様の母君であろうと完璧にこなしてギャフンと言わせてみせわすわ。ご承知おきくださいね」

 そう言うリリベルの顔は至極自信満々でやる気に満ち溢れ生き生きと輝いている。

「お、お手柔らかに頼むよ」

 引き気味に笑うウィリアムにリリベルは任せろとばかりにニッコリと笑った。






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