勇者の曾孫の迷走録

たくみ

文字の大きさ
15 / 38

15.君に合う名はなんですか?①

しおりを挟む
「今日は精霊獣召喚するぞー」

 いえ~~~い!

 フリッツ先生の気だるげな声とは正反対のやる気に満ちた生徒たちの声。ちなみに今いるのは学園内にある召喚の間だ。

 この世は魔王を倒したもののまだ魔界に魔物はたくさんいる。たまに人間界に迷い込んできて人を襲う。それに相反する存在が精霊獣だ。彼らは天界に住み、人間の呼び掛けに応じ契約を交わすことで力を貸してくれる。……たまーーーーーーに。

 精霊獣を喚べる人は少ない。魔力量が多い少ないというより精霊獣に魔力の質を気に入られないと喚ぶことはできない。即ち波長が合えば誰にでもチャンスがある。

 そして、精霊獣は天界と人間界をつなぐことのできるでっかい丸の中にこれでもかと複雑な紋が描かれた召喚紋に魔力を流し込まないと喚べない。この魔法陣は誰にでも描けるわけではなく莫大な魔力と絵のセンスがないと無理だ。

 そして学園には一つ召喚の間という部屋の床にデン、と召喚紋が描かれている。学生たちは2年生と3年生と授業内で年に1回ずつ召喚チャンスがある。だが2年で喚び出すことができなかったら3年でも無理なことがほとんどだ。なので今回で精霊獣と契約できるかどうかが決まると言っても良いかもしれない。

 出席番号順に呼ばれていくが今のところ誰も喚べたものはいないようだ。

「アレン・デラクシア」

「はい」

 呼ばれて召喚紋の上に立つ。

 ちょこっと緊張するが、思ったより心は軽い。誰も喚べていないから自分が喚べなくても仕方ない。

 でもできたら出てきてくれると嬉しいな……。

 きゃっ恥ずかしいとか心の中でふざけていると

「!?」

 力が抜けて膝をついていた。

 うおーーーーー!
 可愛いーーーーー!

 何がうおーだ。膝をついたのが可愛い?なんのことだ。
 辺りを見回そうとして

 うおっ!

 何やら顔にもふっとしたものが………………

 癒される。

 

 が、ガシッというかモフッと掴むと無理矢理離す。

 眼の前にいたのは

 真っ白のフッサフサの毛が生えた両手で抱っこできるサイズの大福に毛が生えたみたいな生き物がいた。

「もっふん!」

「「「もっふん?」」」

 あっヤバっ。

「あっいや、なんかこいつ見てたらもっふんっていう名前が浮かんだんだよ」

 へーーー名前つけるのはやー
 おーーー似合ってる似合ってるー

 概ね良好な反応が返ってくる。

 こら、誰だ微妙にあの顔でもっふんとか可愛い名前つけるのうけるとか言ったやつ。俺の顔は関係ないだろうが。

 でもとりあえずごまかせて良かった。

 こいつもっふんはもふもふという生き物だ。昔英雄の婚約者が召喚した精霊獣。ちなみに彼女は夢見がちな設定だったからこのもふもふの名前はアントワーヌにしたが、俺はもっふんと呼んでいた。俺の推しキャラだ。どう見ても獣には見えないが全身毛が生えてればOKという考えだ。

「お前の名前はもっふんだ。これからよろしくなもっふん」

 推しキャラ。素直に嬉しい。

『よろしくもふ』

「しゃべった……」

『しゃべらないと意思の疎通できないもふ。お腹すいたモフご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯………………』

 なんか……語尾にもふがついて可愛らしいが、なんとも素直な性格のようだ。

「んあっ、飯か。あそこに用意してあるから好きに食べると良い」

 部屋の隅に山盛りのおにぎりと肉とサラダや果物が……。先生なんで飯の用意が。

「いや、精霊獣は腹すかした状態で結構喚ばれるんだよ」

 へ~~~~~、こいつが変わってるわけじゃないのか。ちらりともっふんを見る。…………結構お口大きいのね。毛で覆われて見えなかったが結構デカ口開けて吸い込むようにご飯を食べている。

 その後も続々と召喚に挑む2年生たち。だが喚べたものは数人。ジャックは……しょげている。友達と肩を組んで慰め合っている。

 エリザは……うわ……なんとも優美な毛並みを持つ茶色い犬みたいな精霊獣を喚べたみたいだ。もっふんがもふもふとした毛並みならサラサラとした毛並みをしている。あっ!サラって名前つけた。

 もしや毛並みからか?

 睨まれた。なぜだ。

「リカルド・ライオネル」

「はい!」

 みんなの視線がリカルドに集中する。おお……これはプレッシャーだ。当の本人は気づいていないのか気にならないのか平然としている。

 召喚紋が光る。

 ーーーーーーーーーー沈黙が満ちた。

 期待外れでではない。

 現れた獣の迫力に優雅さに圧に皆呑まれたからだ。

 
 
「でかい犬だな……」

 ポツリとこぼされた言葉。リカルドだ。

 冷たい空気に包まれた後静寂、そして………………

「ごらあ、どこが犬だ!」

「リカルド様、見る目なさすぎぃ!」

「なんで見る目のねえリカルドが選ばれんだよ!顔か!顔なのか!やっぱり世の中顔なのか!?」

 阿鼻叫喚となる部屋で呆然となるリカルド。

「えっ……いやなんかごめん。なんか前こんな感じの犬の魔物みたから……」

 素直に謝るリカルドに毒気を抜かれていく面々はんんっと咳払いして何事もなかったようなすまし顔になった。何じゃそりゃ。…………そして、なぜ皆俺を見る。

 はぁとため息を吐くとリカルドに視線を合わせる。

 何が犬だ。お前がぺしゃんと耳が垂れた犬に見えるぞ。

「よく見てみろ。この見事な黄金色のたてがみ、凛々しい優雅な佇まい。どこをどう見ても百獣の王たるライオンだろう」

「言われてみればライオンだな」

「言われなくてもライオンだろうが!」

 それにしても本当に見事な黄金色に輝くライオンみたいな精霊獣だ。動物のライオンと違う部分と言えばしっぽが3本あるところくらいだろう。それにしても見事なたてがみだが、立派すぎると触りたいとか思えないものなんだな。

『我に名を授けよ』

 ズシンと身体に響く重低音の心地よい声。我らのくだらないやり取りも黙って面白そうに見守っていた心の広い精霊獣から発されたよう。

「名前……」

 再び視線が集まる。

 一体どんな名前をつけるのか。

 くれぐれも変な名前はやめろよ。皆が思念波を飛ばす。

 だがやつが発した言葉は俺達が誰も思いつかなかった答えだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!

くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました! イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。 あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!? 長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!? 二人共あの小説のキャラクターじゃん! そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!! へっぽこじゃん!?! しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!? 悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!! とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。 ※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。 それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください! ※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい ※不定期更新なります! 現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...