未来の悪役令嬢

えりんこ

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第5章 男の子って何でできてるの?

薔薇は赤く菫は青い ③

驚異のカウント力を持つ男爵令嬢 フルール=バロワン
彼女は一体、何者だろう?殿下を魅了してしまえるほどの人物なのだろうか?この先、進展してはまずいと思いアルフレッドは、彼女の周辺を探ぐらさせた。・・が

何も出ないのだ。彼女の実の両親の死も流行り病で亡くなっている。
事件性は何も無い。
バロワン男爵夫妻がフルールを引き取った経由も別段、不審ではなかった。
(婦人の従妹の娘が天涯孤独になり実子のいなかった夫妻が引き取った)

何も不審な点が無いのが何とも言えないモヤモヤ感をそそっていた


その頃、アンジェリーナは信号機三人娘と一緒に図書館にやってきていた
一週間後に小テストがあり調べ物をしようと訪れていたのだ。
マリエッタは正式に婚約者として発表され お妃教育が始まった しかしまだ未成年で中等部の学生という事もあり余り詰め込んだ教育はされていない。
週2日 王族としての勉強している。(マリーがいないと寂しいですわ)

四人でテキストを開き勉強に没頭する どれ位時間が過ぎたのだろう?
アンジェリーナは少し引っかかる例題に頭を悩まされていた (煮詰まっている)
こういう時は無理せずに気分転換をしようと席をたった。 
「アンジー様、どちらへ?」アンネッタが声を掛ける  
「ああ、ごめんなさいね。少し疲れちゃったから気分を変えて何か軽い読み物でも読もうと思って。貴女方はお続けになって。少ししたら戻りますわ」

とテーブル席を離れた。煮詰まっているのは自分の問題だ
もしこれ以上解けない様だったらアルフレッドにも教えてもらおうと考えた。
「何か軽い読み物・・・童話とかにしようかしら?」と方向を変えたその時

ドンッ!!!

「!!!」「?!」

前方から本を何冊も抱えた女生徒とぶつかってしまった
(痛っ、鼻をぶつけてしまいましたわ~」
本をぶちまけた女生徒が目に入る 彼女もまた尻餅をついて痛そうだった

「ごっ、ごめんなさい。私が前を良く見てなかったから」
「こちらこそ 急に方向を変えてしまったので不注意でしたわ。お怪我はございませんか?」

目の前の女性とは高等部の生徒だろう襟の部分のラインが紺色である
リボンも同様の紺色である。
因みに中等部のラインは赤なので直ぐに分かる。
本がぶちまけられているのでアンジェリーナも一緒になって拾う

「これで最後ですわね」と本を渡す。相手の女性とは酷く恐縮していた
「すみません。こっちが悪いのに拾って頂いて」
「私こそ 高等部の先輩に失礼しましたわ。あっ、名乗りもせずに申し訳ございません。私、中等部1年のアンジェリーナ=ラ=トゥール=エトワールですわ」
と奇麗な所作で挨拶を交わす

「知っています、有名人ですから。とっ、御免なさい 私はフルール=バロワン 高等部の二年です 宜しくお願いします。図書委員もしてます」と挨拶を返した。
「本 お好きなんですか?随分と沢山の本を持ってらっしゃるので」
とフルールの抱えた書籍の山を見て笑いかけた

目の前の美少女の問いかけに赤くなりながらフルールは
「はい、大好きなんです 昔から。特に続き物だと気になってしまって・・・。一冊読んだら返してまた借りる手間が惜しいというか・・・本当はこんな物臭な事駄目なんですけどね。頭では分かっているんですがどうしても一分、一秒が惜しくて・・・」とはにかんだ

(分かりますわーその気持ち 止まらないんですわね)と同士を得たような気分のアンジェリーナだった
「私も書籍は何でも読みますわ。気持ち分かりますわ」

「時間って本を読んでいると直ぐに経ってしまいますよね?嬉しいです。分かってくださる方がいて」
そう言って笑った彼女は(自分より年上だが)可愛らしく見えた
自分達の最近読んだ本や面白かった本の感想などを話していくうちにどんどん時間が経っていった
似たようなジャンルを読んでいる事も分かり仲良くなるのも時間が掛からなかった

「アンジー様?中々お席に戻りませんので心配しました」とブリジットが探しにきた
「あら、ごめんなさいブリジット。フルール様も貴重なお時間を御取りして申し訳ございませんでしたわ。今度、お勧めの本を紹介して下さると嬉しいですわ。もう、お友達と思っても宜しいかしら?それでは御機嫌よう」
「此方こそ光栄です。放課後は大体、図書室にいますのでお待ちしております」

アンジェリーナはブリジットと自分の席に帰っていった

(彼女が噂のアンジェリーナ様か・・・本当に奇麗な子だったな。大貴族なのに鼻にかける素振りもなくてとても素敵な女の子だった。それに気さくだし卒業したエティエンヌ殿下を思い出させるな~。殿下も気に止めて下さって 私みたいな身分の人間にも優しかったし身分の高い人こそ見下さないんだな)
と優しくしてくれた王子殿下の事を考えた。身分が違いすぎて恋心なんて恐れ多くて抱けやしなかったが憧れはあった。まさに少女の憧れの王子様だった。

理想の王子様と言えば先程のアンジェリーナの婚約者であるアルフレッドだろう
それは絵本の中にいる完璧な王子様だった。エティエンヌ同様、
見ているだけで嬉しい王子様だった
理想と現実は違うのだ 憧憬は憧憬のままが望ましい
アンジェリーナとアルフレッドが並んで歩いているのを良く、目にする機会があるが鑑賞用に過ぎない
あの二人は見ているだけで目の保養になるのだ。


その見目麗しいアンジェリーナと読書友達(?)になれたみたいで
自分の立場も省みず
フルールは純粋に本好きな友達が増えて嬉しかった
少しばかり裕福な家に生まれた為に無理してこの学園に入ったまでは良いが身分が違いすぎて気遅れしてしまう
両親は流行り病でなくなってしまい、遠縁のバロワン男爵の養女となり名前だけは貴族の立場になった。男爵令嬢となっても庶民生活が長すぎて相に合わない。材木商だったとは言え成り上がりの成金だったのだ。例え商人でも何代も続いた名家とは違いすぎる。
数少ない友人は平民か下位貴族の令嬢達ばかりだった。

本当の両親と暮らしていた時の隣に住んでいた幼馴染を思い出した
立派な家具職人になったのかしら?もう17歳になるんだから恋人は出来たのかな?
と純愛小説を手に取りながら考えた。同じ歳の彼は10歳から職人の学ぶ学校に行ってしまい、自分は学園の寮に入ったので中々、会う機会が無かった。そして両親の死。男爵家に引き取られてからは益々、機会が無かった。

別に特別に好きだったわけじゃないけど・・・
学園を卒業してしまえば何処かの、適当な貴族のお坊ちゃんとお見合いして婿取りが決まっている未来だ。
この小説の様に一度で良いから身を焦がすような恋愛してみたかったなと一人ごちた

図書室に目立たぬ様にひっそりと咲いている菫は
そっと本を閉じた。未来は幾重にも分岐していた。

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