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雰囲気に呑まれてもやりません
しおりを挟む「信じられないっ!」
私はカンカンに怒ってルジェクに水をかける。
「冷たいっ、心臓発作起こしちゃうじゃないのっ」
ルジェクは大笑いしている。その笑顔を見て、ドキッとなった。だって、こんなに屈託なく笑っている彼を見たのは初めてだ。
こんな異常な状況だもの、当たり前か。
ちょっといっちゃってるけれど、彼は洋画に出て来そうな文句なしのイケメンなのだ。しかも全裸。
これ見よがしな筋肉は好きじゃないのだけれど──例えば油を塗ってテカテカしているようなのはダメ。
「きれてますっ! きれてますっ!」と持ち上げる気にもなれない。
でも、この傷だらけの筋肉は、格闘家みたいで好き。
「いくらイケメンでも許されないんだからねっ」
私は頬を膨らませる。十月に入ったっていうのに、水風呂なんてひどい。
「まあまあ、お前も洗うがいい」
なんでいきなり知らない外人と、風呂に入らなければならないのか。
「何でって、お前が俺のこと好きだからだろ」
「はい? はーいー? ハァァアイ?? 何言ってるの?」
「さっき泣きながら『私から離れるなんて許さないんだからぁぁあ』ってしがみついてきたではないか」
違う。ニュアンスが違う。
「あのね、こんな変な状況であなたしかいないのよ? 独りぼっちになったら怖いでしょ? あなただって、向こうの屋敷で仲間がいなくなって心細かったんでしょ?」
「まあね」
さっきからにやにや笑っているのが頭に来るな。
「でも、脱いだ方がいいと思うぞ」
何でよ。
そこで、安いお取り寄せコスプレ服が水に濡れ、体に張り付いているのが分かった。
私は女友達から絶賛されるほどのエロい体の持ち主だ。だから今まで、体目当ての変な男しか寄ってこなかったんじゃん? とよく言われるけれど。
それが今、ぺとりと体に張り付いて、大変なことになっている。大丈夫。ストラップレスのブラジャーはしてるから、乳首は浮いてない、セーフ!
突然チューブトップごとブラを下げられた。
「きゃぁああああああ」
私はFカップの胸を隠す。
「ルジェク、また殴られたいの!?」
「殴っていいぞ」
ニヤニヤ笑い。そうだろうね、殴るためにオッパイから手を放したら、パイオツがコンニチワするもんね!
「言っておくけど、強姦じゃだめなのよ!? 愛し合わないと、ここから出られないの」
「うん」
ルジェクは大人しく頷く。だけど、私の腰に手をやって引き寄せたまま、放してくれない。
「ねえ、私あなたのこと愛してないのよ?」
「俺もだ」
「放してよ、ねえ」
ルジェクの目が、欲望に潤んでいる。
「でも、好きになりかけてる。少なくとも俺は」
「そそそ、それはね、ただムラムラしてるだけでしょ? そういうのは愛とは言わないのよ!」
「そりゃそうだけど、お前がずっと誘惑してくるからじゃないか」
ルジェクは腕に力を込めて私を抱きしめる。
「そんな下半身丸出しの恰好で──。普通、女は足の先まで隠すような長いスカートなのだぞ。上半身は多少胸チラしてもいいが、下半身は貞淑でなきゃならんのだ」
分からないっ。あんたの世界のファッションセンスなんて分からない!
「俺の股間がコッドピース要らずになった」
「いいことじゃない」
あんな常に勃起するようになっている詰め物入りの股袋なんて、要らんでしょうが普通。こっちの世界だと通報案件だわよ。
「この股間を使用せんのは、男の股間にかかわ──」
「沽券!──むぎゅぅ」
口を塞がれた。彼の薄い唇で。
必死に彼の肩を押し、引き離そうとするも力が入らない。なんていうか、ダメだって分かっているのに、たぶん抱きしめられて思い出したのだろう。
一年ぶりの生の人肌を。
腰が砕けそうになる。
ましてや水風呂で寒いし、鳥肌と同時に乳首もこんなに立ってしまって。
「──っ」
ごつい手が、むき出しの胸をそっと包んだ。ピンピンに立った乳首を親指で攻められ、頭が真っ白になる。キスも美味い。厚い舌が私の口蓋を嘗め回し、舌を絡めとり、すする。
あごを抑えられて逃れられないけれど、不快ではなかった。それどころか、下腹部がきゅうっと絞られて──。
「ふ……ん」
鼻から抜けるような声が出てしまう。
雰囲気に流されてはいけない。今までの恋人たちと同じようなことになってしまう。人柄をよく見たつもりで付き合ってもアレだったんだから。
だいたい彼は、私に欲情しているだけで……。
ルジェクは私の首筋に舌を這わせた。
「俺のつけた切り傷、血が止まっていて良かった。悪かった」
体内時計が止まっているから傷がそのままとか、そういうルールは無いのね。どんな理屈か分からないのだけど。
「寒い……」
ルジェクの体温が心地いい。筋肉のせいだろうか。水に浸かっているのに、なんでこの人の体はこんなに温かいのだろう。
ルジェクは私をお姫様抱っこして、浴槽から上がる。
「そなたの体は冷たいな」
リネンをぐるぐるに私に巻き付けて水滴を拭いてくれる。
「脱衣所のボタン押してみて」
「ん?」
私は目で脱衣場を見やる。
「スイッチの横に、パネルがあるの。暖房って書いてあるところ。読めるはずよ」
ルジェクがおそるおそる扉の外に腕を出して押すと、ふぁぁああと暖かい空気が洗い場の天井から落ちてくる。
「そなたの世界の魔法はすごいな」
言いながら、私の体をゴシゴシ拭く騎士。麻のような感触が乳首をこすって、ますます立ち上がる。
「あっ、ダメ……わ、わたしそこ敏感なの」
コチコチに立ってしまったそこをまじまじと見られ、恥ずかしくなってしまう。別に感じているわけじゃなくて、布で擦れたからだもん。
「ひっ」
むしゃぶりつかれた。冷えた突起を、生温かい感触が包み込む。舌でレロレロしているではないか。
「あぅ……きゃっ、コリッて」
歯で噛まれた。これではぜんぜん治まってくれない。ルジェクは顔を離すと、両手で乳房を持ち上げ、確かめるように何度も揉みほぐした。
「胸がデカい」
ボソッと呟かれた。
「他はこんなに細いのに、なんで胸と尻だけ──」
今度は私の足に手を這わす。
「これは伸びるが、何の素材で出来ているのだ? 新しい鎖帷子かと思って驚いたぞ」
網タイツを引っ張る。破けちゃう……そう言いたかったけれど、胸の頂に彼の頬が当たって感じてしまい、それどころではない。
時間が止まっているとしか思えないのは、彼の髭が伸びてこないこと。でももともと濃い方なのか、剃り痕がザリザリしている。それに敏感な部分をこすられると、体が熱くなってしまう。
靴下止めの部分から、するりと腿に手を這わせるルジェク。そのままパンツの布地に行き当たった。
「粘ついてる」
はっと息を吸うように言われ、私は赤くなる。
仕方……無いじゃない。私も流されてるんだもん。
「これ、どうやったら脱がせられる? 貞操帯なのか?」
違います。
ガーターベルトのいいところは、パンティだけ下げれば用が足せるところ。ストッキングのお尻周りの圧迫感が嫌いで、実は普段使いしている私だ。
もじもじしながらも、パンツだけスルッと降ろした。
「言っておくけど、あなたのこと好きじゃないからね」
「じゃあなんでそれを脱いだのだ?」
残った網タイツとガーターベルトの淫靡な光景を目の当たりにすると、男はだいたいこんな表情になる。
理性などふっとぶ。
相手が何者であろうが、もうどうでもいいのだ。たとえ背後にヤクザが居そうな女であろうが、ガーターベルトとタイツを見ると「美人局上等だよ!」となるらしい。同じゼミの男友達がそう言っていたっけ。
いや……みんな気を付けようよ。夜の街一人でウロウロしている女とホテル行ったら危ないか──
「魔女だろうが娼婦だろうが上等だよ!」
ルジェクが吠える。目の色が変わっていた。お尻を掴みあげ、浴室の壁に押し付けられる。
「待って、魔女とか娼婦とか取り消して! 私はただ──」
網タイツに包まれた片足を持ち上げられ、襞を広げられる。それから、ごつい指を入れられた。
とぷん。
「ひ……」
この人、指太い。
「私はただ、なんだ?」
ざらざらした声が、彼の喉から漏れる。青い目が野獣のように光り、私を見据えていた。
くちゅ、と指が動く。
「この蕩けた膣はなんだ?」
「あぁっ……いやだ、かき回さないで! ひあぁああああ」
指を抜き差しされて、気持ち良さに何も言えなくなる。喘ぎ声以外。
「言えよ、ただなんだ?」
「あっ……あっ……」
二本、三本と増やされ、それでも必死に唇を開いて言おうとした。
「貴方を好きじゃない、ただ、雰囲気に流されているだけ! はむっ」
唇に吸い付かれた。ねぶる様に唇を食べられる。息継ぎのために口を離して彼は言った。
「どう思おうが、お前を犯すことには変わりない。もう抑えてるのは無理だ」
きゅっと彼の指が肉の芽を摘まんだ。私の腰がビクッと動き、つるっと愛液が内腿を伝うのを感じた。
「だらしなく何か垂らしている。ルカよ、誰にでもこうなのか?」
面白がるように聞かれ、私は悔しくなって相手の顎に噛みついてやろうとした。しかし避けられる。
目の前に下半身から引っこ抜いた指を持ってきて、見せつけるルジェク。
「これはなんだ? お前、体から蜂蜜が出てくるのか?」
パクッとルジェクは自分の指を舐めとった。
「ふむ、甘い」
甘いわけ無いじゃん、恥ずかしさのあまり目を逸らす私の顎を掴んだ。
「他の男にも、簡単に足を開くのか?」
目つきが鋭くなり、まるで尋問されているような気分になる。
「──淋しい時だけよ」
ふてくされてそう言った。人肌が恋しい。そんな時はある。でもそんな相手とやったって、あとでむなしくなるだけだとも知っている。
「許さぬぞ」
ルジェクが激昂する。
「オレ以外にもう股を開くな!」
ぐいっと何かが押し付けられた。もう片方の足も持ち上げられ、私は慌てて彼の首にしがみついた。
股間に、マグマのように熱い何かがグイグイねじ込まれた。それは、襞をかき分けるように侵入してくる。想像を絶するほど太い。
「まっっ! ルジェク待っておっき──」
外人のサイズ舐めていた! こんなの……こんなの今までのをポッキーに例えると、まるきり大根だ。
そりゃあ私だって見た目から「ガバガバなんじゃないの?」とよくセクハラされるタイプだけど、こんなのは絶対入らない!
「こわい、裂けちゃう……止めて」
恐怖で必死に彼の耳にささやく。圧迫感がとにかく怖かった。彼はそこまでで止めてくれた。
「あ、ありがと──きゅっ」
乳首を摘ままれた。片方の手でお尻を支え、片方の手で乳首をもてあそぶ彼。手が大きいので、抱えていることに何の負担も無いらしい。
それでいて、耳たぶをまるでハロウィンのお菓子のように舐めしゃぶっている。
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ。
「ねえ、私、乳首弱くて──はっううううあああああああ」
体内に、彼の楔を埋め込まれた。根元まで。油断した。ふっと目の前が真っ白になる。意識が飛ぶ。
「動いてないぞ、まだ」
一突きで達してしまった私の耳に、喉の奥で笑いながら囁くルジェク。
「動いたら、そなたはどうなるのだ?」
だめ、だめだめだめ、絶対。
「ひぁあああああああ」
引き抜かれた。膣壁が擦れ、それだけでまだ達っしてしまった。ルジェクは笑いながら再び私に口づけする。
──ズブッ──コンッ──ズブッ──コンッ──
「んんんん! ……んんんんっ!」
殺される。そう思った。快楽の波に押しつぶされて殺される。悲鳴すら彼に吸い取られ、このままこの洋館で死ぬんだわ、私。
だって、だんだん彼の腰が早くなってきて──。彼が突き上げるたびに、浴室の壁の感触を背中に感じた。
彼の大きなものに串刺しにされ続けていた私は、いつの間にか火照った体を汗びっしょりにしていた。
ルジェクは最後に一番奥を突いた後、一気に引き抜く。お腹に生温かい物がかけられた。
あ、外に出してくれたんだ。
私はほっとしながらも、気を失った。
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