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39話

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時間はシオンがエレベーターに乗った時まで遡る。


「ちっ、無反応かよ」

「ははっ、良いじゃんか。スッキリしたわ」

「まあでも少しくらい反応返してくれたら面白かったのになぁ」

「なんか俺たち見てるやつ多いぜ」

「はん、少なからず思ってる奴は多いだろうよ。飯作って、好き勝手下手な演奏して。そしてドロップ品貰って……偉い身分ですなぁ」

「言ってやんなって、ははははははは」

「がはははは……なんだ、てめぇ?」


男達の傍には4人の少年少女達がいた。

男たちは急に現れた4人に、呆けた声を出している。


刹那。

シャツと短パン姿の大柄な少年の蹴りが、男達の机を粉砕した。

急に壊れたこともあり、バランスを崩して床に倒れ伏す男達。

「『抜刀 神斬』

いつの間にか刀を持っていた顔立ちの良い少年によって、男達の両腕が瞬時に胴体から離れる。

「はっ、はああああああ?????」

「やめろよ!俺らが何をやったって言うんだ!!」

「おい、頼むからそんな目で見るなああああああ!!!」


「うるさい」


突如、今度は男達の両足が爆ぜた。

音もなく、血も出ていない。

だが、綺麗に無くなっていた。


「ひ、ひいいいいぃ」


男達の顔が絶望に染る。

「「「「………」」」」

少年少女達の目に光は無く、ただ虚ろな目で男たちを見ている。

溢れ出る殺気が1階を包む。

レベル7ダンジョンをソロ攻略している4人から溢れ出る殺気に、耐えれるものはいるはずもなく……重く冷たい空気が流れている。


「もう治ってますよね」


ワンピースに身を包んだ少女の冷たい声に、ハッとする男達の両手両足は、少女が言った通り、元通りになっている。


「おい」

「ひぃ!!」

「お前ら、シオンのことをなんと言った?寄生虫?コバンザメ?」

「ひいいいぃぃ」

顔立ちの良い少年の低く無機質な声に、男たちの口からは悲鳴しか出ない。

「陰で愚痴愚痴言われるのは仕方ない。傍から見ればそう思われることくらい分かってる。だが、がいる前でも言ったってことは覚悟が出来ているよな?」

再び繰り返される4人からの一方的な暴力に、ただ男たちは耐えることしか出来なかった。


時間にして10分。

ただし男たちには何時間にも思われた行為。


「今度俺達の前で同じことを言ってみろ。お前らの命は無い」


「「「「「はっ、はいい」」」」」

慌てて男たちは我先にと協会ビルを後にした。


少年少女達を見に来て大勢の人で溢れた1階も、今は静寂に包まれている。


チンッとエレベーターが到着して音が響いた。


ギターケースを抱えながら、サングラスにマスクといった怪しさMAXな姿の少年が出てきた。


「こっちだ、シオン!」

大柄の少年が呼ぶ。

4人の目に、段々と光を帯びていく。



「お待たせ~」

「良いよ良いよ」

「何その背負ってるの?」

「これねぇ、ギルドマスターから貰ったんだ!めっちゃ高い楽器だよ!」

「これは帰ったらシオンさんの演奏タイムですね!」

「もちろん!みんなに聞いてほしいよ!雑談配信しようよ」

「「「「良いねぇ」」」」


揃って彼らは協会のビルを後にした。



いつの間にか、静寂に包まれていた1階も、賑わいを取り戻す。


この日、探索者協会ビルでは、ある暗黙のルールが増えた。




【白夜】のリーダーの悪口を口にしてはいけない。

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