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第二章 悪役令嬢視点 断罪は終わらない

14.危険が去ったあと

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前方から、沢山の馬の足音が聞こえた。

「全員動くな!……あれ、終わってましたか。さすがディアス殿」

がしゃん、と音を立てて、馬上の人が地面に降り立つ。白い鎧。白の警備隊だ。
なんでこんなところに。

「ああ、半数はエリサと、ひとりは狙いの人物が直接な。おそらくあれが首謀者だ。徹底して裏を取ってくれ。色々きな臭い」

はっ、と、白の警備隊の人がディアスさんに礼を取る。
え、どうして。白の警備隊っていえば、騎士爵に限りなく近い人たちのはずだ。


後から来た警備隊の人たちに、黒いフードの人たちは続々と縄をかけられていった。
ディアスさんとエリサさんは、警備隊の人から手渡された白い布で、剣の血糊を拭っている。

……ディアスさん、もしかしてえらいひと?
いやいや、元冒険者なだけのはず。
じゃあ、有名人?


「俺と、ロダン殿で状況の説明をする。
ロダン殿、うちで一晩、ロザリーをお預かりしてもよろしいですかな?うちがおそらく一番安全なので」

「……城も、ロザリーにとって安全ではないですからな。拙宅にも、どうやら間者がいるらしい。お願いできますか?」


え。お城も、ロダンさんのおうちもダメなの?

じゃあほんとうのおうちは、もっと、ダメなの?


私、帰れないんだ。

かたかたかた。また、なにかのおとがきこえてきた。
めのまえが、まっくらになりかけた、そのとき。


ふわり。いい匂いが、私を包んだ。

ぎゅっと抱きしめられる。
ピンクベージュの髪の毛が、私の視界を覆った。

「大丈夫。あなたのお父さんはとても頑張っているのよ?こうして証拠が捕まったのだから、もう安心よ。ね。じきに帰れるわ」


ぎゅうぅぅっと、更に力を込めて、抱きしめられる。
ふぇ、と、情けない声を上げかけて。

気づいた。

息が、苦しい。


「本当に、よく頑張ったわね……半年、耐えたのはあなたよ。ええ、許すわ。
あなたは、ずっと、口にうめぼしを作りながら……くっ、うめぼ……ふふっ、ふふふっ、あ、ごめんなさいね。
まあ何にせよあなたの根性の成果よ。誘って本当によかったわ」


すっと離されて、ぷはっと息をする。

わざとか!わざとなのか!
そしてエリサさんまでうめぼしって!!


ぐぬぬぬ、と、顔に力がこもる。


エリサさんは、耐えきれずに爆笑しだした。

ひぃひぃ言いながら、くしゃくしゃと頭を撫でられた。ここの人たちは、髪を乱すのが、本当に好きだ。全くもう。

私も笑った。なんだか視界がぼやけて、頬がいっぱい冷たいけど、きっと気のせいだろう。
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