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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる
11.断罪は終わらない 2
しおりを挟むニムルス。めったに、表に出てこないやつ。
リーナの近くにはいつもいて、俺が近づくとさりげなく遠ざけるけど、それだけ。いつも、静かにしてるタイプのやつだ。
こんな風に、目立つところに出るやつじゃない。
2回目だな。リーナんときと、今と。
ニムルスは、カラムとよく似た顔をくしゃっと綻ばせた。
「ダメだよ。ザムはどうでもいいけど、それは、カイルにとってよくない。やり返しちゃ、ダメだ」
何も、言い返せなかった。
「でも、俺には確証がある。だって、これ、ザムの字だもんね?ほら、手も石筆の白い汚れで汚れてる。
君は、俺の友達を、傷つけたんだ。これは立派な、報復の理由だよ。いいね?」
くるっと、ザムに向き直る。
「え、いや。おれじゃな」
「みんな見てたよ?きみが書いてるの。ついでに書いてるとこ、司祭様にも来てもらって確認してもらってる。今も教室の外で待っててもらってるからな。
だから、おれ、全力できみを殴ろうと思う」
「いや、それは、誤解で」
ニムルスは、迷いなく歩いていく。
ザムは後ずさりしだした。確かにあれは怖い。
「あとね、言っておきたいことがあるんだけど」
ザムの首根っこを捕まえて、顔をぐっと引き寄せて、ニムルスは、宣言した。
「リーナの婚約者は、俺だ。気に入らないなら俺にかかってくるんだな」
そう、言った瞬間。
ごうっ、と、音がして。
ニムルスの拳が、ザムの顔の直前で止まった。
止まったのに、ぱあん、という音がして、ザムは倒れた。
「……ちょっとニムルス。私、りょうしょう、してないんだけど?」
いつの間にか、アリスを抱き起こしていたリーナが、机の下から声をかけた。
「時間の問題だろ。リーナの攻撃を受け止められるの、俺以外にいるか?いないよな?それすらできない奴らに、リーナに近づく権利があると思うか?」
なぁ、と、教室内を見回す。
しん、と、静まり返った室内で、言葉を発するやつは、いなかった。
「……私に、勝てたらね」
「え?」
「なんでもない!」
リーナは、アリスを乱暴に担いで、どこかに行ってしまった。
医務室だよな?大丈夫?リーナだからな、大丈夫かな。
まあ、魔法でアリスの傷は治ってたし、大丈夫だろ。うん、そういうことにしよう。
哀れ、ハンカチ屋。後でお礼言わなきゃな。痛かったよな。
ニムルスは、さっきの勢いはどこへやら、顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。
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