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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる
12.ザムとの話
しおりを挟むその後すぐに司祭様が来て、授業は始まった。
不思議なことに、ザムに怪我はなかった。ちょっと倒れたときに背中をぶつけたとかそんなもんだ。剣術の授業ではよくあるから、そのまま医務室にも行かずに終わった。
司祭様は、リーナの時と同じように、罰は神が与えるもの、という訓示を垂れていた。
ザムの顔は、蒼白だった。右手を抑えていた。
うん、俺よりやばいな。リーナは頑丈だけど、アリスは普通の女の子だもんな。鼻血とか出てた。
リーナが回復魔法を使えなかったら、大騒ぎだっただろう。
気持ちが、よくわかる。
誤解して、かっとなって、殴っちゃって、全部自分が悪かったって、後でわかる。
ザムは、授業中、ずっと右手を見つめていた。
その日、リーナ以外に、俺をわんわん君っていうやつはいなかった。その代わりになんか、みんなの輪からちょっと外れてる気がするんだけど。
性に合わなかったので、剣術の授業の相手にザムを指定した。ちゃんと話すためだ。
「……なんだよ。お前、関係ないんだろ?リーナんちには、ただ悪いことしたから行ってるだけなんだろ?なら、そう言やいいじゃねぇか」
いやだから、そうなんだってば。
そう言いたかったけど、リーナに感じるなんだかまとまらない変な気持ちが、邪魔をしていた。
結果、無言になった。
ザムは、それを、ちょっと斜め上に捉えたらしい。
「お前に、あいつが倒せんのか」
あいつ?ニムルスのことか。
「倒す気なんてねえよ。無理だしな。あいつリーナ並みに強いぜ」
俺は知ってる。最近になって時々、店の開店前にニムルスがやってきて、リーナと鍋とお玉で戦ってるんだ。
切り結ぶ、いや鍋とお玉なんだけど、それだけで衝撃が飛んできて倒れそうになる。
あれを倒そうなんて、思わない。
「……じゃあ、そうなのか。俺の、誤解なんだな」
はぁ。だからこいつなんなんだよ。
「最初から言ってなかったっけ?」
ぎりっと、木の剣を握り直してザムは構えた。
「聞いてねえな」
ごっ。と、ザムが上段から切り掛かってくる。
あれ、言ってなかったっけ?
まあいいか。俺も今日、なんかすっきりしたところなんだから。
あいつらは、俺とは違う生き物なんだ。そう思うことにした。
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