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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる
16.わんわん君、卒業の試練 1
しおりを挟む教室に入ると、みんながもう、集まっていた。
そこにアリスも紛れていた。
いつもぎりぎりの時間に来るリーナも、今日は来ている。
なんだ、俺、早めに来たのに。全員いる?
今日なんかあったっけ?
机が、教室のわきに片付けられて広くなってる。
ぽつんと、ひとつだけ真ん中に置かれた机と、それを挟むように並べられた、二つの椅子。
ちら、と、リーナを見る。
にやりと、いつもより一段と悪い顔で、リーナは嗤った。
ぞっとした。
なにが、始まるんだ。
ぱん!と、リーナが手をひとつ叩いた。
「さて、今日は、カイル君のわんわん卒業式、腕ずもう大会を開催します!!」
ぱちぱちぱち。みんなが拍手している。
「ルールは簡単。みんなで腕ずもうして、勝った5人、カイル君に挑戦してもらいます!男子は強制出場、女子はエントリー制!
勝った人は、カイル君をわんわんって言っていい権利を獲得しまーーーす!!」
ぱち、ぱち。
まばらな拍手が響く。
そうだよな。微妙すぎるだろこれ。
昨日の今日だぞ。なに考えてんだ。
「ちなみに、権利を獲得したひとには、うちのご飯を一回無料で御招待!みんな、うちのごはん、おいしいかーーー!!」
ぱちぱちぱち!!おおおおお!
今度は威勢のいい返事が返ってきた。
「みんな、わんわん君のこと、すきかーーーー!!」
ぱちぱちぱち!!ばーかばーか!
……最後!お前だろザム!!
「さぁて、最初のカードは、くじ引きで決めます!この箱の中の木札を取って!わんわん君……間違えたカイルは、5人の挑戦者が決まってから勝負ね!」
「見届け人は、司祭様だ。いいな、カイル!」
ん?ニムルス、まさか。
教壇を、ちらと見る。司祭様がちょうど教室に入ってきて、教壇に座った。
すごく、穏やかな笑顔で。
公式イベントかよ!!いいのか神の教え!
「あくまでも、カイル君の了承があればですが。平和的に解決できるのなら、それもよいでしょう。あなたなら大半の子に勝てると、私は思っておりますのでね」
……司祭様の頭が意外と、お貴族様のふわふわパンみたいに柔らかかった。
こんな人だったのか。知らなかった。
「カイル!最後の戦いは私とよ!覚悟はいい?」
リーナの、声だ。
何回も負けた。そのたびに、言えなかった。
わかったよ。やってやる。
「いいぜ。今度こそ、勝ってやる!」
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