本編開始前に悪役令嬢を断罪したらうちでバイト始めた

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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる

17.わんわん君、卒業の試練 2

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俺は、教室を出された。
予選は時間がかかるから、外に出て何かやってて、と、リーナに雑に追い払われたんだ。

そういうとこだぞ、リーナ。


はぁ、と、ため息をついて、教会の花壇のところにやってきた。

エントリーしていない女子達も、庭に出て花を摘んで冠を作ったりして遊び始めている。


わんわん卒業か。
なんにも、言えないままに、終わるのか。

右手が、ぴりぴりと痛む。


たっぷりと水を吸った花達は、とても元気だ。


「カイル。ここにいたのね」

金髪の縦ロール。
話しかけてきたのは、ロザリーだった。

「ロザリー、参加しないのか?」

たぶん、あの店で働いてる時間が長い分、ロザリーの方が力があると思う。俺でも負けるんじゃねえかと思ってる。


くす、と、色の薄いベージュの瞳を細めて、ロザリーは続ける。

「わたくしには、そもそもあなたを、あのような呼び名で呼ぶ権利などないのです。主犯はわたくしですから。
そもそもあなたは巻き込まれただけなのに、このようなことになって、ごめんなさい」

……それは。違う。

この、右手の痛みは。巻き込まれたなんて言い訳でごまかせるものじゃない。
女の子を、思いっきり殴ったんだ。

みんなを守る立場になりたい、俺が。


「贖罪ならば、もう充分行なっていると思いますわ。
あの後、あなたが繰り返しリーナに突っかかっている時。なにも言わせてもらえなかったのも、みんなわかっているわよ。
だから、わんわん君と、親しみを込めて呼ぶのです。
その呼び名が、罪を認めている証なのだから。
途中までは、その言葉に嫌らしい意味はなかったでしょう?」


……うん。たぶん。男連中が騒ぎ始める前は、別に気にならなかった。ちょっとはネタになったけどさ。


「あなたに嫌な感情を持っている人は、そこまで多くはないということです。
思い切って、挑戦して、リーナにだって、勝ってみなさいな。
無理かもしれませんけどね。」


ふふっ、と、笑いながら、ロザリーは、俺の背をぽんと叩いた。
押されたその先には、ハンカチ屋もといアリスがいた。

用事があるのか、ロザリーは、立ち去って行った。


「あ、あの!頑張ってね!」

ハンカチ屋もといアリスは、なんだか緊張しながらこっちにやってくる。、

「ああ、アリスの仇は俺が討つ。絶対後悔させてやる」

ふふっ、と、アリスが笑う。

「ねえ、私と初めて話した時のこと、覚えてる?」


……いや。いつだったかな。
ハンカチ借りた記憶しかねえんだけど。


「ザムに、入学初日に髪の毛引っ張られたりしてからかわれたんだよ。それを、止めてくれたでしょ?確かそれが、カイルとザムがしゃべるきっかけだったと思う」

あんなに仲良くなるとは思わなかったけど、と、くすくすハンカチ屋が笑う。

全然思い出せねぇ。


「なんか言いそびれててさ。
ずっと、言いたかったの。……ありがとう」


うっ。やっぱり思い出せねぇんだけど。

でも、そっか。俺以外にもいるんだな。
言いそびれてた、か。そっか。そうだな。


「いや、俺の方こそ、ハンカチいっぱい、ありがとうな」


遠くで、リーナが俺を呼んでる。

よし、勝負だ。俺は教室に、なぜか全力で走った。
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