本編開始前に悪役令嬢を断罪したらうちでバイト始めた

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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる

18.わんわん君、卒業の試練 3

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教室に入ると、5人が前に出て待っていた。

ザムと、木工職人の息子イリオ、ニムルス、リーナ、司祭様。


……司祭様!?


司祭様は、その長い白髪をかき上げて、ふっ、と嗤った。

「私も昔は、教会の職務でよく……ふふ、この先は神の怒りに触れますから秘密です」

ああ、正義の戦いとは、心躍るものですね、と、力こぶを見せつけてこちらを見やる。


……ちょっと待って参加するな見届け役!!


「さあ、最初の試合はイリオとよ!位置について!レディー!!」

リーナまてまてまだ座ってねえ!!

急いでイリオと俺は椅子に座って身構える。

「ゴー!!」

合図と共にやっと手を握った。あ、まずいちょっと肘の位置が悪

がん!!


……あれ。

「勝者、カイル!!」


わあぁぁ!ぱちぱちぱち。
周りから拍手が聞こえる。え、あ、あれ、勝ったのか。
俺の右手の下になったイリオの手は、赤く腫れてきていた。
え、うそ。まだ力入れたつもりねぇのに。


「いってぇぇぇ!!わ……カイル!なんだよそれ。どうやったんだよ!!」

真っ赤になって手を押さえるイリオ。いやそれ俺が聞きたい。

「え、と、わざとじゃないんだ。ごめん」

そこに、すっとロザリーがやってきた。

「カイルはリーナの家で、特訓を受けているのよ。お手伝いを兼ねて、ね。本当にわざとではないと思うわ。許してあげてくださらない?」

すっ、と、イリオの手にその擦り傷だらけの細い指を添える。
ふわっと緑色の光がにじんで、イリオの傷は治っていった。

……ちょっと待ってそれ最終学年で覚えるやつ。

ロザリー、もしかして、リーナんちに泊まり込んでるのって。そうなのか?勉強、してるのか?


なんか、また、ロザリーが遠く感じた。

ちょっと、なんか、もやもやする。


「次は俺だ!犬っころめ、早くやるぞ!!」

腕をぶんぶん振り回してきたザムの声が、うざい。

「いっつも勝負じゃ互角だったからな。俺が上だって、証明してやる!」

いや今ちょっと忙しいんだよね。

「さあ、ほら、おすわりって言わねえと分かんねえか?」

俺もう座ってるけど?

「ほら早くやるよ!レディー…」

「一生俺の犬として飼ってやるよ!」

なぁ、さっきからさ。

「ゴー!!」


「うるせえんだよ」


どん!!


一瞬で、勝負はついた。

ザムの手は、机にめりこんでいた。


いてぇぇぇ、とか、周りの歓声とか、色々聞こえてきたけど、なんか遠かった。

こいつこんな奴だったのか。


どうでもいいや。


金色の巻き髪が、また、魔法を使うのを、俺はただ、呆然と見ていた。
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