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第六章 ハンカチ屋奪還作戦
ハンカチ会議第二回 1
しおりを挟む次の日。私はリーナやニムルス、わんわ……間違えたカイルに声をかけて、アリスのことで話があると伝えた。
剣術の授業を休ませてしまって申し訳ないけど、ニムルスもカイルも充分強いもの。一度くらい休んだっていいじゃない。
ニムルスは器用になんでもこなすけど、わん……カイルは最近ちょっとおかしい。
剣の一振りで、地面に亀裂が入るんだそうだ。
あ、と思った。
私も石畳に亀裂を入れたことがある。暴漢を杖で殴りつけて。
カイルがここで掃除を手伝うようになったのが春の始め、今は夏の終わりだから……そうね、そろそろ私と同じ効果が出てきてもおかしくないわね。
あれはひどい。慣れるのにけっこう時間がかかった。
リーナの店の備品は、本人が耐えられるギリギリの重さに調節される、とリーナのお母さんに聞かされたのは、暴漢に襲われた夜だった。
しんたいきょうか、という魔法らしい。ここで働くと、自然と使えるようになるのだとか。
わんわ……カイル、それ、調節できるようにならないとえらい目に遭うわよ。
私がそうだった。慣れるまで、教会で板書する石版を割ってしまったり、机を真っ二つにしたり、ちょっと手をついたつもりのその辺の木をなぎ倒してしまったりした。
その度に、ごまかしてほほほと笑うけど、もうみんなは白い目でしか見ない。
あいつ絶対変だよな、お嬢様っぽいと思ってたけど実は怪力なんだぜ、腕相撲しかけるの絶対やめよう。というのは男子の意見。
女子からは、ますます頼りにされている。勉強も運動もそつなくトップのリーナが我が道を行くタイプなので、私に寄ってくるのはこの春からだったんだけど、男子がけんかなんかしていると必ず私が連れて行かれて仲裁役をさせられている。
顔を出すだけでぴたっと騒ぎは収まるから、楽なものなのだけど。
……カイル。がんばれ。
まあ、そんなわけで、慣れるまでカイルも剣術はやっぱり休まなきゃダメだ。
ていうかもう斧とかでいいじゃない。このままリーナの家で鍛えて、怪力生物として生きていきなさいな。さぞや頼もしい兵士になることでしょう。
さて、みんな集まった。
開店前の店のテーブルを囲む、このメンバー。
怪力のカイル。
口の上手いニムルス。
公爵令嬢のわたし。
最終兵器リーナ。
このメンバーで、行くわよ。
「近く行われる、王の生誕祭のことは、みんな知っているわよね。その日、貴族は王城の一角に集うわ。アリスはそこに来るはずよ。みんなで行くわよ!アリスを止めるのよ!!」
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