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第六章 ハンカチ屋奪還作戦
ハンカチ会議第二回 4
しおりを挟む「大丈夫なのか?なんか事情があるんだろ?」
多分1番よくわかってないカイルが一番心配してくれる。
ふふ、わたくし、強くなったもの。
学校で本気なんか出せないくらいにね。
「大丈夫よ。護衛なんていなくても大丈夫なくらいに鍛えたということをお父さまに認めさせるわ。ああ、毒対策もしなければね」
はぁ、とため息が聞こえる。ニムルスだ。
「それ、間に合うのかよ。毒を体に慣れさせるなんて、短期間でできることじゃないぞ」
……その通りよ。ニムルス、詳しすぎない?
なんか違和感。
でも!時間がないなら、別の対策があるわ!
「毒対策は、何も慣らすだけではないわ。毒消しを用意しておけばいいのよ。相手が使うものの予測はつくわ。
ふふ、望む結果は勝ち取るものよ。ねえ、ニムルス?」
にやりとニムルスを見やると、ちょっと赤くなって顔を逸らした。
ふふ、リーナに近づく男子たちを牽制するのは大変でしょうに、見事にやってのけているものね。
当の本人は、何やら黒猫を抱いてのほほんとしているのだけど。
「二週間後よ!それまでに、パーティの礼儀の基礎を叩き込まなくてはならないわ」
びくっとカイルが反応する。あ、そうよね。一番難しそうだわ。
「パーティの礼儀とか……俺、わかんねぇよ」
ふふ、想定内よ!
「だったら、勉強すればよいのです!」
くるっと後ろのカウンターを見る。許可を求めなければ。
「しばらくは、開店前の今の時間を勉強に充てたいのです。ディアスさん、構いませんか?」
カウンターの中で肉を串に刺していたディアスさんは、振り向いてにやりとする。
「ああ、構わないよ。カイルの掃除のスピードも段違いで上がってきてるからな。リーナとニムルスは復習するくらいでできるから、カイルに重点的に教えてやってくれ」
はい!と答えて、振り返る。
リーナとニムルスが、顔を合わせてにやにやしている。最近よく店に来る黒猫を二人で撫でる。
あれ、ずいぶん余裕じゃない。
「……二人とも、パーティ、大丈夫なの?」
「出たことはあるさ。親父の戦果を讃える宴くらいだけどな。俺たちは、多分ロザリーについて歩けばそれでいいんだろ?」
「よろしくね、ロザリー!ついていくわ、あなたに!」
リーナはいい笑顔で拳を握っている。
うわ、これ絶対ついてこない。確信できる。
「……ニムルス。リーナをよろしくね」
「ああ、任せとけ」
なんでだろう。この時、唯一の貴族であるわたくしが皆を引っ張っていかなければならなかったのに、なぜかニムルスに任せた方がいい気がしていた。
その勘が間違いでないのを知るのは、二週間後の話。
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