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第六章 ハンカチ屋奪還作戦
戦いの終わり
しおりを挟むそのままリーナとニムルスは、わたくしの前に立ち、遮るように水平に手を繋いだ。反対の手は、前にかざしているようだ。
二人の声が揃う。
「ばんぶつに宿る水の力よ、われの呼び声に応えてけんげんせよ。あくいある炎をけちらすちからを、わがてに!……ぶふっ」
ちょ、笑うな!わたくしの呪文!!
でも、こうかは、てきめんだ!
ぱきぱきと目の前の地面が凍り出す。どこからか現れた氷の壁が、高く高く伸びていく。
「なんですかその楽しそうな呪文は!!」
お母様の声を合図に、巨大な火球が放たれた。
風圧と温度差で屋敷の窓ががたがたと軋む。近くのものはひび割れを起こした。
ばぁん。
リーナとニムルスの氷の壁は、一撃で弾け飛んだ。
ぶわっと熱風が頬を撫でるも、二人も、わたくしも、無傷だった。
「……面白いわ!さぁロザリー、やってみなさい!」
お母様が、また火球を作り出す。まだ手のひらサイズだ。
「ロザリー、氷使えたっけ?」
「いや、飲み物冷やすくらいだよなまだ」
……そうだよ!あの呪文唱えてね!!
「じゃあ、同じ火のやつね!いっけぇ!!」
いっけぇじゃないのよリーナ!!
くっ、やるしかないか。
すっと右手で顔を隠し、左手をかざす。少し上目遣いがポイントだ。
「万物に宿る炎の力よ。我の呼び声に応えて顕現せよ。何者にも負けぬ意思の力を、困難を打ち払う魔の化身よ、この手に!」
「なにそれ新作!」
……今作ったのよ!!
左手には。
ぼうっと巻きつく炎が、横向きの弓と矢の形を形成していた。
さながら火の鳥が翼を広げているようだ。うんだけど日本の知識がある私にはわかる。これはボウガンだ。火の。
右手でツルの部分を引いてみる。ああ、やっぱり。腕に沿う形で伸びる火の線は鳥の嘴の先端に繋がっている。うん、これは矢だ。矢なんだ。要はイメージだ。
「格好ばかりつけても何にもならなくてよ!」
お母様の火球は、バスケットボールサイズになっていた。大きくならないうちに先手を。
「お母様、通して!!」
ぎりぎりと右手で引いたツルを、放つ。
ごっと放たれた一閃。紅の軌跡が、お母様へと真っ直ぐに伸びる。
お母様は、成長途中の火球を放たざるを得なかった。
それは一瞬。
私の火の矢は、お母様の火球を打ち破った。
破裂した火球は宙に消え、矢はお母様へと迫る。
危ない!
ぎゅっと目をつぶった。わたくし、なんてことを!
ばぁん、と音がして、ぱちん、と、また音が聞こえた。
ぱちん?
「よく、できましたね。屋敷に入る許可を与えるわ」
恐る恐る、目を開けると。
お母様は、焦げた扇を従者へとノールックパスしていた。従者はさっと淀みなくそれを受け取る。
ごごん、と重厚な音を立てて、屋敷のドアは開いた。
最高の笑みを浮かべたお母様には、焦げ跡ひとつ見つからなかった。
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