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「そうしてここは、私が前世でやり込んでいた、あの…ゆ、『ゆうきりんりん♡魔法学園らぶぱ~てぃ』という、乙女ゲームの、中なん、ですぅ」
 私の顎ががくんと下がって戻らなくなっていた。
「おとめげーむ、ですか?」
 そういう小説とか漫画が流行ってるのは知ってる。知ってるけど、んー。
 まぁ異世界転移自体がもうアレだしね。転生もいるし。もう何でもありかな。はは。
「はい。ご存じですか? 『ゆうきりんりん♡魔法学園らぶぱ~てぃ』スーファミで大人気だったんですよ!」
 なにかが弾け飛んだのか、一気にテンションが上がったようだ。
「すみません、スーファミ自体を存じません」
 いや、名前とか画像では知ってるけどね? 触ったこともないよ、そんな古いゲーム機。
「そ、そうですわよね、私が前世で死んだ時だってすでに旧型もいいところでしたし。イマドキのお嬢さんは知りませんよね」
 一気に上がってたテンションが最低ラインまで一気に落ち込んだ模様。エリゼさん、ごめん。
 しかし。寂しそうにいうエリゼさんの享年が知りたいような知りたくないような…。
 まぁいいや。今は同じ年っぽいし。前世なんか覚えてないだけできっと私にもあるんだろう。判んないけど。

 エリゼさんの説明によるそのゲームの内容は、古典的といってもいいようなものだった。
 ある日、街中に大きな光が生まれ人々を驚かせる。それは異世界から少女が落ちてきた衝撃によるものだった。
 教会で保護された少女は、孤児院でおきた火事により大火傷を負った子供を魔法で治療したことで、光魔法の使い手だと発覚。王国の誇る魔法学院に急遽編入してくる。
 そこで、攻略対象達(メイン3人+隠し1人だって。少なくない?)と知り合い、その婚約者たちの仕掛けてくる罠を搔い潜りながら信頼を経て愛を勝ち取る。それだけだそうだ。最近流行りのバトルパートとかミニゲーム的ななにかはないらしい。
「そうなのですか、最近の乙女ゲームは物騒になったんですねぇ」
 エリゼさんは新しい知識(但し乙女ゲーム)に興味津々の様子だった。
「そうですね。婚約者を奪われた悪役令嬢たちは、国外追放ならまだマシで、奴隷落ちとか、戦争で敵国と通じてた事実が発覚したとかいって処刑されたりしてるみたいですよー」
 まぁやったことないから本当なのかも知らないんだけど。でも中学の時のヲタ仲間には乙女ゲーに嵌まっている子もいて、その子が「悪役令嬢うざっ。シねぇぇえぇぇ」「うおっっしゃーー、処刑キター」とかよく騒いでたから、そうなんだろう。

 そして。その攻略対象というのが、王太子ケルヴィン、王太子付近衛兵のムーア、そしてエリゼの弟で公爵嫡男ウィリアム・ゴードンの3人。
 残念ながら、隠しキャラについてはエリゼさんは知らないらしい。やり込み度が足りないわね。
 王太子様の婚約者はエリゼさん、そしてムーアさんの婚約者はリディアーヌさんという幼馴染さんで伯爵家令嬢、ウィリアムにはまだ婚約者はいないのでエリゼさんがこっちも悪役令嬢やるんだって。大活躍だね。
 そういえばスーファミって、容量少なかったっていうの聞いたことあるわ。シナリオと容量とのバランス取るのが大変そうだ。


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