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第二十二話
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「――あ。先輩、起きた?」
「ぇ、ぁ、はっ……?」
少しの間、今の自分の状況が呑み込めなかった。だが、グチュリという水音と共に、腰から脳天までを電流のような快楽が突き抜け、一気に現実へと引き戻された。
「ぁっ、ひぁ、ぁあッ!?」
思い出した。レックスは宣言通り、あの後、執拗におれの後孔を責め立てたのだ。そして通算五回目の絶頂の直後、あまりに強い快楽に、おれは意識を失ったのである。だが、意識を失ったのは数秒程度のことだった。
おれの意識が遠のいたからといって、レックスは指による愛撫を止めてくれたわけではなかった。前立腺と膣を両方いっぺんに責め立てられ、無理やりに引き戻されたのだ。
「ひっ、あっ、ぁっ、れっくす、おれ、もう……ぁっ、あアッ、んぁあッ!」
「はは、本気汁の量、やばっ……これで五回目のメスイキか。思ったより時間かかったなー」
おれの下半身は、今や透明な愛液ですっかりびしょ濡れになっている。後孔は度重なる絶頂によってほぐれ、その奥にある膣も口をやわらかくして、胎内にうずまったままのレックスの指にきゅうきゅうと絡みついていた。
「ふぁっ、ぁっ、ん、くっ……ん、ぁっ……」
連続絶頂によって体力を使い切り、おれは全力疾走をした後のように肩で大きく息をしていた。
快楽の余韻で頭がぼうっとして、考えることもままならない。
だが、何よりも恐ろしいのは、こんな状態になっても、身体の内の燻りが収まらないことだった。もう無理だと思うほどの絶頂を味わったのに、身体の熱がぜんぜん引いていかないのだ。
オメガのヒートはかなりしんどいと聞いていたが……これほどとは思わなかった。
ヒートを発症したオメガは、今後は、三か月に一回の頻度でヒートが起こるという。ヒートは一週間ほど続くというが……まさか、今日から一週間もこんな状態が続くのか?
しかも、これから三か月に一回?
番になってくれるアルファが見つからない限り、一生?
そう考えると、うちの両親が子供のうちからおれの婚約者を必死に探してくれた気持ちが、今さらながら身に染みて理解できた。
なるほど、これなら当事者同士の気持ちを無視してでも、早いところ<番>を見つけてやりたいと思うわけだ……
そんなことを考えていた時、ぎしりとベッドの軋む音がすぐ間近で響いた。見れば、いつの間にかレックスがおれの後孔から指を抜いて、顔を寄せている。そのまま、覆いかぶさるように唇を重ねてきた。
「んっ……ん、ぅ」
レックスはおれに完全にのしかかる体勢で口づけてきたため、おれの下腹部には布越しに彼のいきり立ったものが押し当てられていた。
「なぁ、先輩……悪ぃけど、俺もそろそろ限界……」
熱っぽい瞳でレックスはおれを見つめた。彼は頬にキスを落としながら、自分で下衣の前をくつろげて勃ち上がった陰茎を取り出した。そして、わざと腰を揺らめかせて、おれの陰茎に自分のものを擦り付ける。陰茎同士が触れ合う感覚は今までにない感覚で、背筋にぞくりと新たな快感が奔った。
「っぁ、ん、ぅ……」
「なぁ。俺、先輩のことぜったい大切にするよ。だからさ……先輩のこと、俺のものにしていい?」
「っ、レックス……」
熱のこもった瞳がひたとおれを見据える。
彼の声音は疑問形ではあったが、有無を言わさぬ重みがあった。その証拠に、彼はキスを終えると返事を待たずに、おれの両足を抱えた。
そして、あらわになった後孔へとぴったりといきり立った陰茎を押し付けた。彼の肉棒は淫水焼けをしていて、太さも長さも、正直、おれのものとは比べ物にならなかった。
アルファとオメガはこんなところも違うのか、なんて思いが一瞬だけ頭によぎったが、彼の陰茎がつぷりと後孔へ挿入された瞬間、そんな悠長な考えはすぐに霧散した。
「ぅッ、ぁ、く、ぅうッ、ぅぁっ、ぁっ……!」
「くっ……すげ、先輩のナカ、めっちゃ熱い……!」
指とは比べ物にならないほどの圧迫感。
肉壁をめりめりと割り開いて、肉棒が無理やりに押し入ってくる感覚に、おれは喉をのけぞらせて、引きつれた悲鳴をあげた。
「ぅっ、く、レックス……ぁっ、んっ、くっ」
だが、しばらくすると、身体は苦しいぐらいの圧迫感を感じているのにもかかわらず、肉壁はきゅうきゅうとレックスの肉棒にまとわりつき始めた。
まるで、アルファの陰茎に対して、身体が服従の意を示しているようだった。おれの気持ちとは裏腹に、身体は勝手に、この陰茎の持ち主が自分の<番>であると認識したみたいだった。
いや、それとも……心に身体が従った結果が、これなのだろうか?
「っ、先輩……!」
「ぁ、ん、ぁあッ!?」
「ゆっくりヤろうと思ってたけれど、そんなに締め付けられたら俺ももう我慢できねーわ……! 先輩、ごめん、なっ!」
「ぁっ、レックス、ぁ、そこ、やだっ、ぁあッ、あッ!」
さんざん絶頂を迎えたばかりだというのに、レックスが腰を押し進めてピストン運動を開始すると、おれの身体は再び絶頂を迎えた。
彼は腰を打ち付けながら、陰茎の先端でごんごんと膣口をノックしたかと思えば、今度はエラの張った部分でぞりぞりと前立腺を削る。
「ひぁっ、アッ、あっ、ぁっ!」
敏感になった身体は、その度に何度も何度も絶頂を迎え、おれは強すぎる快楽にボロボロと涙をこぼした。自分の陰茎からは、今や先走りとも精液ともつかない液体が漏れ出している。後孔からは、胎内からあふれた愛液があふれ続けて、室内にいっそう激しい水音を響かせていた。
「ぁっ、レックス、レックスっ……ぁ、ふぁっ、っ!」
押し寄せる快楽があまりにも強すぎて、自分がなくなってしまいそうだった。怒涛のような快楽があまりにも怖くて、おれはよすがを求めるように必死にレックスにしがみついた。
彼は一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐに片手をおれの身体に回して優しく抱きとめてくれた。
「先輩……っ、好きだ、先輩……」
「っ、レックス……」
彼の首におずおずと腕を回すと、レックスはおれの唇に口づけてきた。
唇を重ね合わせるだけのキスだったが、どうしてか、泣きたくなるほど優しいキスだった。
「先輩、俺……」
キスを終えて顔を離した時、レックスは何かを言おうと唇を開いた。だが、結局はその続きを告げることはなく、思いつめたような表情で唇を閉ざすと、おれの腰を両手でわし掴んだ。
「レックス、ぁっ……あ、んあッ、ふァあっ」
彼は一気に陰茎を引き抜くと、先端だけを埋めた状態でぴたりと止まった。後孔の肉壁は、彼の陰茎を恋しがるように先端にちゅうちゅうと吸いついている。
だが、続いてバチンと大きな音が立った瞬間、彼の陰茎は根本までがずっぽりとおれの中へ埋まっていた。
「ぃっ……!?」
結腸を突き上げるほどの勢いで陰茎を一気に押し込まれた快楽は、一瞬の間をおいて、おれの脳髄へと一気に叩きつけられた。
「ぁ、ひあッ、ぁああっ、ぁあッ!?」
「くっ……!」
おれは背筋をびくびくと痙攣させながら、目を見開いて絶頂と射精を同時に迎えた。
腸壁越しに子宮を殴られ、結腸を突き上げられる快楽は、すさまじかった。とうとう一度も触れられていない陰茎からは、白濁した精液がとろとろと零れだす。
同時に、レックスもまた射精を迎えていた。おれの中に陰茎を埋めたまま、びゅるびゅると熱い精液を吐き出している。
「ひっ、ぅ、ぅっ……んぅっ」
おれの身体は、精液を注がれる感覚にすら甘い快感を感じていた。アルファの精液を歓んで取り込もうと、肉壁がきゅむきゅむと彼の陰茎に吸いつく。その感触にすら小さな絶頂を迎えてしまい、おれは射精をしながら身体をびくびくと震わせた。
「ぁっ、ふっ、ぅっ……んぁ、はッ……」
レックスの陰茎が引き抜かれ、ぶるりと身体が震える。口を閉じることのできなくなった後孔は、くぱぁと口を開けて、彼の吐き出した精液と、おれの愛液が混ざりあった液体をどろどろとシーツに零していた。
「はっ、ぁ、あッ……ん、はぁっ、あっ」
だが、おれの身体は性交を終えた後も――いまだに熱が収まらなかった。
熱が収まらないどころか……むしろ、まだ満足しきっていないといわんばかりに、身体の熱は上がってていくようだった。
とうとう挿入されることのなかった膣――レックスはおれの直腸側に射精をして、とうとう膣側の方に挿入はしなかった――は、物足りないといわんばかりにひくひくと震え、必死にレックスの陰茎を取り込もうと口を開けているのが分かった。
開いた膣口からは、とろとろと粘ついた愛液が漏れて止まらない。まるで、アルファの陰茎を、必死になってねだっているようだった。絶頂をしたばかりなのに、その部分だけがもどかしくてたまらない。
「ふぅ、ぁっ、はっ……ん、ぅ」
「先輩……?」
「レ、レックス……おれ……もう、どうしたら……」
とうとう、下腹部が疼いて止まらくなってきた。絶頂と射精を迎えたばかりなのに、一部分だけがアルファの精液を欲しがるように、どんどんと熱を上げていくのだ。
膣から発生した熱は身体中に伝播して、身体がどんどんと昂っていく。
もう、どうしたらいいのか分からず、おれは涙目になって、すがるようにレックスを見上げた。
おれはとっくに限界を迎えている。なのに、身体はさらに新たな快楽を欲しがって、勝手に熱を上げていく。
そうこうしているうちに、おれの陰茎は再び頭をもたげ始めていた。もう、そこから出せるものなど何もないというのに。
「先輩……」
レックスはおれを見下ろして、しばらくの間なにかを逡巡していた。だが、すぐに覚悟を決めたような表情に切り替わると、おれの両頬にそっと手を添えて、額に優しくキスを落とした。
「先輩……俺、先輩のこと誰よりも大事にするから」
「レッ、クス? ぁっ、な、なにを……!」
彼はおれの身体を転がすと、うつぶせの体勢に変えた。そして、あらわになったうなじに顔を寄せた。
彼がなにをしようとしているのかに気がつき、顔をあげようとしたのと同じタイミングで、レックスはおれのうなじに噛みついていた。
薄い皮膚に歯が突き立てられる痛み。
その痛みは、甘い快楽を伴って、おれの全身を駆け巡った。
「ぁっ……ぁ、ぁ……!」
「先輩……」
その痛みと快楽は、身体を突き抜けて、まるで魂の深い部分までに巡っていくような錯覚を覚えた。
レックスもまた、同様の感覚を感じているらしかった。おれの身体の上でがくりと脱力すると、額に汗を浮かべて、何かに耐えるように目をつぶっていた。
レックスと〈番〉になった――それが何を意味するのか、深く考える余裕もないまま、おれは身体の内を駆け巡る痛みと快楽にとうとう耐えきれず、今度こそ完全に意識を失ったのだった。
「ぇ、ぁ、はっ……?」
少しの間、今の自分の状況が呑み込めなかった。だが、グチュリという水音と共に、腰から脳天までを電流のような快楽が突き抜け、一気に現実へと引き戻された。
「ぁっ、ひぁ、ぁあッ!?」
思い出した。レックスは宣言通り、あの後、執拗におれの後孔を責め立てたのだ。そして通算五回目の絶頂の直後、あまりに強い快楽に、おれは意識を失ったのである。だが、意識を失ったのは数秒程度のことだった。
おれの意識が遠のいたからといって、レックスは指による愛撫を止めてくれたわけではなかった。前立腺と膣を両方いっぺんに責め立てられ、無理やりに引き戻されたのだ。
「ひっ、あっ、ぁっ、れっくす、おれ、もう……ぁっ、あアッ、んぁあッ!」
「はは、本気汁の量、やばっ……これで五回目のメスイキか。思ったより時間かかったなー」
おれの下半身は、今や透明な愛液ですっかりびしょ濡れになっている。後孔は度重なる絶頂によってほぐれ、その奥にある膣も口をやわらかくして、胎内にうずまったままのレックスの指にきゅうきゅうと絡みついていた。
「ふぁっ、ぁっ、ん、くっ……ん、ぁっ……」
連続絶頂によって体力を使い切り、おれは全力疾走をした後のように肩で大きく息をしていた。
快楽の余韻で頭がぼうっとして、考えることもままならない。
だが、何よりも恐ろしいのは、こんな状態になっても、身体の内の燻りが収まらないことだった。もう無理だと思うほどの絶頂を味わったのに、身体の熱がぜんぜん引いていかないのだ。
オメガのヒートはかなりしんどいと聞いていたが……これほどとは思わなかった。
ヒートを発症したオメガは、今後は、三か月に一回の頻度でヒートが起こるという。ヒートは一週間ほど続くというが……まさか、今日から一週間もこんな状態が続くのか?
しかも、これから三か月に一回?
番になってくれるアルファが見つからない限り、一生?
そう考えると、うちの両親が子供のうちからおれの婚約者を必死に探してくれた気持ちが、今さらながら身に染みて理解できた。
なるほど、これなら当事者同士の気持ちを無視してでも、早いところ<番>を見つけてやりたいと思うわけだ……
そんなことを考えていた時、ぎしりとベッドの軋む音がすぐ間近で響いた。見れば、いつの間にかレックスがおれの後孔から指を抜いて、顔を寄せている。そのまま、覆いかぶさるように唇を重ねてきた。
「んっ……ん、ぅ」
レックスはおれに完全にのしかかる体勢で口づけてきたため、おれの下腹部には布越しに彼のいきり立ったものが押し当てられていた。
「なぁ、先輩……悪ぃけど、俺もそろそろ限界……」
熱っぽい瞳でレックスはおれを見つめた。彼は頬にキスを落としながら、自分で下衣の前をくつろげて勃ち上がった陰茎を取り出した。そして、わざと腰を揺らめかせて、おれの陰茎に自分のものを擦り付ける。陰茎同士が触れ合う感覚は今までにない感覚で、背筋にぞくりと新たな快感が奔った。
「っぁ、ん、ぅ……」
「なぁ。俺、先輩のことぜったい大切にするよ。だからさ……先輩のこと、俺のものにしていい?」
「っ、レックス……」
熱のこもった瞳がひたとおれを見据える。
彼の声音は疑問形ではあったが、有無を言わさぬ重みがあった。その証拠に、彼はキスを終えると返事を待たずに、おれの両足を抱えた。
そして、あらわになった後孔へとぴったりといきり立った陰茎を押し付けた。彼の肉棒は淫水焼けをしていて、太さも長さも、正直、おれのものとは比べ物にならなかった。
アルファとオメガはこんなところも違うのか、なんて思いが一瞬だけ頭によぎったが、彼の陰茎がつぷりと後孔へ挿入された瞬間、そんな悠長な考えはすぐに霧散した。
「ぅッ、ぁ、く、ぅうッ、ぅぁっ、ぁっ……!」
「くっ……すげ、先輩のナカ、めっちゃ熱い……!」
指とは比べ物にならないほどの圧迫感。
肉壁をめりめりと割り開いて、肉棒が無理やりに押し入ってくる感覚に、おれは喉をのけぞらせて、引きつれた悲鳴をあげた。
「ぅっ、く、レックス……ぁっ、んっ、くっ」
だが、しばらくすると、身体は苦しいぐらいの圧迫感を感じているのにもかかわらず、肉壁はきゅうきゅうとレックスの肉棒にまとわりつき始めた。
まるで、アルファの陰茎に対して、身体が服従の意を示しているようだった。おれの気持ちとは裏腹に、身体は勝手に、この陰茎の持ち主が自分の<番>であると認識したみたいだった。
いや、それとも……心に身体が従った結果が、これなのだろうか?
「っ、先輩……!」
「ぁ、ん、ぁあッ!?」
「ゆっくりヤろうと思ってたけれど、そんなに締め付けられたら俺ももう我慢できねーわ……! 先輩、ごめん、なっ!」
「ぁっ、レックス、ぁ、そこ、やだっ、ぁあッ、あッ!」
さんざん絶頂を迎えたばかりだというのに、レックスが腰を押し進めてピストン運動を開始すると、おれの身体は再び絶頂を迎えた。
彼は腰を打ち付けながら、陰茎の先端でごんごんと膣口をノックしたかと思えば、今度はエラの張った部分でぞりぞりと前立腺を削る。
「ひぁっ、アッ、あっ、ぁっ!」
敏感になった身体は、その度に何度も何度も絶頂を迎え、おれは強すぎる快楽にボロボロと涙をこぼした。自分の陰茎からは、今や先走りとも精液ともつかない液体が漏れ出している。後孔からは、胎内からあふれた愛液があふれ続けて、室内にいっそう激しい水音を響かせていた。
「ぁっ、レックス、レックスっ……ぁ、ふぁっ、っ!」
押し寄せる快楽があまりにも強すぎて、自分がなくなってしまいそうだった。怒涛のような快楽があまりにも怖くて、おれはよすがを求めるように必死にレックスにしがみついた。
彼は一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐに片手をおれの身体に回して優しく抱きとめてくれた。
「先輩……っ、好きだ、先輩……」
「っ、レックス……」
彼の首におずおずと腕を回すと、レックスはおれの唇に口づけてきた。
唇を重ね合わせるだけのキスだったが、どうしてか、泣きたくなるほど優しいキスだった。
「先輩、俺……」
キスを終えて顔を離した時、レックスは何かを言おうと唇を開いた。だが、結局はその続きを告げることはなく、思いつめたような表情で唇を閉ざすと、おれの腰を両手でわし掴んだ。
「レックス、ぁっ……あ、んあッ、ふァあっ」
彼は一気に陰茎を引き抜くと、先端だけを埋めた状態でぴたりと止まった。後孔の肉壁は、彼の陰茎を恋しがるように先端にちゅうちゅうと吸いついている。
だが、続いてバチンと大きな音が立った瞬間、彼の陰茎は根本までがずっぽりとおれの中へ埋まっていた。
「ぃっ……!?」
結腸を突き上げるほどの勢いで陰茎を一気に押し込まれた快楽は、一瞬の間をおいて、おれの脳髄へと一気に叩きつけられた。
「ぁ、ひあッ、ぁああっ、ぁあッ!?」
「くっ……!」
おれは背筋をびくびくと痙攣させながら、目を見開いて絶頂と射精を同時に迎えた。
腸壁越しに子宮を殴られ、結腸を突き上げられる快楽は、すさまじかった。とうとう一度も触れられていない陰茎からは、白濁した精液がとろとろと零れだす。
同時に、レックスもまた射精を迎えていた。おれの中に陰茎を埋めたまま、びゅるびゅると熱い精液を吐き出している。
「ひっ、ぅ、ぅっ……んぅっ」
おれの身体は、精液を注がれる感覚にすら甘い快感を感じていた。アルファの精液を歓んで取り込もうと、肉壁がきゅむきゅむと彼の陰茎に吸いつく。その感触にすら小さな絶頂を迎えてしまい、おれは射精をしながら身体をびくびくと震わせた。
「ぁっ、ふっ、ぅっ……んぁ、はッ……」
レックスの陰茎が引き抜かれ、ぶるりと身体が震える。口を閉じることのできなくなった後孔は、くぱぁと口を開けて、彼の吐き出した精液と、おれの愛液が混ざりあった液体をどろどろとシーツに零していた。
「はっ、ぁ、あッ……ん、はぁっ、あっ」
だが、おれの身体は性交を終えた後も――いまだに熱が収まらなかった。
熱が収まらないどころか……むしろ、まだ満足しきっていないといわんばかりに、身体の熱は上がってていくようだった。
とうとう挿入されることのなかった膣――レックスはおれの直腸側に射精をして、とうとう膣側の方に挿入はしなかった――は、物足りないといわんばかりにひくひくと震え、必死にレックスの陰茎を取り込もうと口を開けているのが分かった。
開いた膣口からは、とろとろと粘ついた愛液が漏れて止まらない。まるで、アルファの陰茎を、必死になってねだっているようだった。絶頂をしたばかりなのに、その部分だけがもどかしくてたまらない。
「ふぅ、ぁっ、はっ……ん、ぅ」
「先輩……?」
「レ、レックス……おれ……もう、どうしたら……」
とうとう、下腹部が疼いて止まらくなってきた。絶頂と射精を迎えたばかりなのに、一部分だけがアルファの精液を欲しがるように、どんどんと熱を上げていくのだ。
膣から発生した熱は身体中に伝播して、身体がどんどんと昂っていく。
もう、どうしたらいいのか分からず、おれは涙目になって、すがるようにレックスを見上げた。
おれはとっくに限界を迎えている。なのに、身体はさらに新たな快楽を欲しがって、勝手に熱を上げていく。
そうこうしているうちに、おれの陰茎は再び頭をもたげ始めていた。もう、そこから出せるものなど何もないというのに。
「先輩……」
レックスはおれを見下ろして、しばらくの間なにかを逡巡していた。だが、すぐに覚悟を決めたような表情に切り替わると、おれの両頬にそっと手を添えて、額に優しくキスを落とした。
「先輩……俺、先輩のこと誰よりも大事にするから」
「レッ、クス? ぁっ、な、なにを……!」
彼はおれの身体を転がすと、うつぶせの体勢に変えた。そして、あらわになったうなじに顔を寄せた。
彼がなにをしようとしているのかに気がつき、顔をあげようとしたのと同じタイミングで、レックスはおれのうなじに噛みついていた。
薄い皮膚に歯が突き立てられる痛み。
その痛みは、甘い快楽を伴って、おれの全身を駆け巡った。
「ぁっ……ぁ、ぁ……!」
「先輩……」
その痛みと快楽は、身体を突き抜けて、まるで魂の深い部分までに巡っていくような錯覚を覚えた。
レックスもまた、同様の感覚を感じているらしかった。おれの身体の上でがくりと脱力すると、額に汗を浮かべて、何かに耐えるように目をつぶっていた。
レックスと〈番〉になった――それが何を意味するのか、深く考える余裕もないまま、おれは身体の内を駆け巡る痛みと快楽にとうとう耐えきれず、今度こそ完全に意識を失ったのだった。
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その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
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