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混沌の玉
しおりを挟む久しぶりに魔界に戻ったルチアは早速と同胞らを蘇らせた。彼らは涙を流して礼を述べる。
「まぁ、落ち着け。それでどのような方法で葬られたのだ?」
竜種と思われる魔物が一頭、謁見の間に出てきて答える。
「は、はい!私共は先行して戦ったのですが、アヤツは真っ白な玉を持っていました。大きさは手の平に乗る程度だったかと……それを掲げたと思えば幾度が明滅させて白い光が我らを飲み込んだのです」
「なるほどな、最終兵器と思われるものをすでに手にしていたか、しかしそれは数十人の司祭らが祈りを捧げ聖水を結晶化させたものだ。う~ん、それは混沌の玉と呼ばれるものだ。魔王を倒す最後の手段、やはり転生者か……」
あり得ないアーティファクトを所持していると思われるマリエラ・アマールは転生した運営の人間であると確信した。
ガスパルが進言する。
「その通りでございます、それを使用された後に魔王様は一気に力を失せられて討伐されたのですから」
「うん、そうだよな。私もプレイ中に使った覚えがあるぞ、ただもうちょい名前がどうにかならんのかと例えば清き玉とか聖なる玉とか、その辺はやっぱりクソゲーだよな」
「はて、ぷれい中とは?」
ガスパルの余計な詮索はおいといて、今はマリエラへの警戒をしなくてはならない。相手は造り手なのだから、何をされるかわかりはしない。
「ならば先手必勝だよな、相手が卑怯なことをするのなら手を緩める必要はない」
***
魔王はマリエラ・アマールが潜んでいると思われる山脈にやってきた。人里離れたそこは恰好の隠れ場所と言えよう。北の山脈は雪深く、万年雪が凍結している、どういうわけかいつも吹雪いているのだ。
「ゲームだからなんでもありなのか、困った環境だよなぁ」
彼女はファイアウォールを利用して周囲を固めた、こうして歩けば風雪などものともしない。ただ、火加減はたいへんだ。
「あちち!御主人もうちょっと範囲を広く」
「ああ、わかったよ。てか、付いて来なくても良いのに」
「そうは行きません!従者としてどこへでもお供しますよ!」
「はいはい」
歩く事数十分、いよいよ彼らが潜む洞窟を発見した。気配を読むことが出来る魔王はジュッと火の壁を消した。ここからは己自身の姿を消して行かなければならない。
「行くぞガスパル、姿を消す魔法を掛けるぞ」
「はい!」
魔王は洞窟を進む、入ってすぐに微温湯のような空気が広がった。どうにか魔法で寒さを凌いでいたらしい。
奥へ進むにつれて、異様な空気に気が付く。
「この臭いは……」
魔王ルチアは益々と警戒して進む。
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