約束の夢を少女は信じた。

音爽(ネソウ)

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名も無き少女は夢を見る

不遇の少女

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いつもの優しい夢から覚めて、私は現実に打ちひしがれた。
手足のチクチクは慣れてるけど、寝心地が良いわけがない。

ワサワサと音を鳴らして、ワラから這い出て身支度を整えた。
今日の天気はどうだろうか。


木戸を開けてみれば薄曇りだった、気分も微妙になるが仕事は待ってくれない。
パタパタと藁クズを落としながら本邸の台所へ向かう。

私は飼葉置き場に住んでいる、一人になれる唯一の場所なので嫌いじゃない。
幼い頃は本邸の物置部屋に住んでいた、雇い主の家族は意地悪をしてくるので今のほうが大分楽だ。
精神的に……。

台所に入って竈に火を入れる、大きなヤカンでお湯を沸かす。
同時に昨夜仕込んだパンを焼いて、野菜を刻む。

目覚めの茶が用意できた頃、執事のベンと古株の侍女のネッチがやっと起きてきた。
お屋敷はさほど大きくないので、執事を含めて3人しか使用人はいない。

「おはようございます」腰低く挨拶をする。
しかし返答はない、いつもの事だ。毎朝恒例の暴言を吐かないのは機嫌が良いのだろう。
そうか今日は御給金の日。

下女の私は貰ったことがないので羨ましい。
極たまに萎びた果実を貰う程度。

ネッチと執事は私が用意した茶器類をキッチンワゴンに乗せて、主達の寝室へ向かう。
ご苦労さえ言わない、主の前で自分が用意した顔をするくせに。



イライラするなんて私は心が狭いな……。

気を取り直してスープの仕上げにかかった。
今朝は残飯を貰えるかしら?

香ばしく焼きあがったパンの香にクキョルと腹の虫が反応してしまった、恥ずかしい。

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