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名も無き少女は夢を見る
伯爵家の暴挙
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腕を乱暴に捻りあげられたブリデ嬢は呻き声をあげている。
私はどうして良いかわからず震えるばかり。
「ぐぎぃ!痛い、離せぇ!従者の分際で伯爵令嬢に乱暴するか!」
ギャイギャイと1人で騒ぐ様は品の欠片もない。
腕を掴んだ大柄な騎士が言った。
「ほう、家格ならば俺の方が上だぞ小娘。こちらは侯爵家だ」
「う、嘘だ!従者はみんな平民のはずだ!そこの汚い娘みたいにコキ使っていい存在だ!」
聞くに堪えない暴言を騎士に向ける、斬り捨てられても文句言えない状況だ。
私が頬を摩っていたら、あの騎士がハンカチを差し出す、とても柔らかで良い香がした。
「こんな綺麗なハンカチは借りれません!汚してしまいます」
遠慮して押し返す私に騎士は柔らかに微笑む。
「どうぞ使って、返却は良いです差し上げますよ」
下女なんかに丁寧な言葉をかけるなんて、どこまで優しい方なの?
嬉しくてまたポロポロと涙が出てしまう、打たれて赤い頬が益々熟れていく。
慰めれている様子が気に入らないお嬢様は騎士から逃れ私を打とうとしてた。
だけれど剛腕な騎士に敵うわけもない。
ガーガーと喚き散らし激高するお嬢様。あまりにウルサイので猿轡をされてしまう。
私のせいで申し訳ないけど、自業自得かな。
「ふぅ、伯爵家はこんなに品位がなかったかな?奥方はマナー講師のはずだが」
傍観を決め込んでいた王子様が嘆息なさった、先ほどから教師と言っているけど教鞭をとってる様子はない。
どこかのお家で教えているとか?
柔らかなハンカチに顔を埋め、成り行きを見守っていると、王子様が私に問います。
「夢の話面白かったよ、キミの名を聞いても良いかい?」
「え?私に名はありません……」
それを聞いた王子様はなにやら難しい顔をされて、横にいた文官とまたコソコソ話しだしたわ。
「キミの夢の話は興味深い、是非城へきて今一度詳しく聞きたい。良いかね?」
「ご命令とあれば……」
王族相手に「否」は言えない。襤褸雑巾みたいな私が登城して良いかわからない。
まさか処刑目的とか!?
赤から青に顔色を変えた私に、騎士様が「心配ないよ」と声をかけてくれた。
夢の話が不快だったのかと恐れたがそうじゃないみたい?
暴れるお嬢様をすっかり忘れてた時、ガヤガヤと喧しい声が聞こえてきた。
旦那様たちが帰宅したようね。
「おい!出迎えはどうした、下女さえいないではないか!」
「あなた躾が必要なようよ」
「そうだな!近頃は甘くし過ぎたようだ、梁に吊るして鞭打ってくれるわ!」
ご夫婦が恐ろしい折檻の話をされている、私はガクガクと震えた。
お嬢様に飯抜きされた上に折檻だなんて!
あまりの恐怖に私は気を失いかけ目の前が薄らぼんやりしてきた。
私はとうとう死ぬのだと諦め意識を手放した。
私はどうして良いかわからず震えるばかり。
「ぐぎぃ!痛い、離せぇ!従者の分際で伯爵令嬢に乱暴するか!」
ギャイギャイと1人で騒ぐ様は品の欠片もない。
腕を掴んだ大柄な騎士が言った。
「ほう、家格ならば俺の方が上だぞ小娘。こちらは侯爵家だ」
「う、嘘だ!従者はみんな平民のはずだ!そこの汚い娘みたいにコキ使っていい存在だ!」
聞くに堪えない暴言を騎士に向ける、斬り捨てられても文句言えない状況だ。
私が頬を摩っていたら、あの騎士がハンカチを差し出す、とても柔らかで良い香がした。
「こんな綺麗なハンカチは借りれません!汚してしまいます」
遠慮して押し返す私に騎士は柔らかに微笑む。
「どうぞ使って、返却は良いです差し上げますよ」
下女なんかに丁寧な言葉をかけるなんて、どこまで優しい方なの?
嬉しくてまたポロポロと涙が出てしまう、打たれて赤い頬が益々熟れていく。
慰めれている様子が気に入らないお嬢様は騎士から逃れ私を打とうとしてた。
だけれど剛腕な騎士に敵うわけもない。
ガーガーと喚き散らし激高するお嬢様。あまりにウルサイので猿轡をされてしまう。
私のせいで申し訳ないけど、自業自得かな。
「ふぅ、伯爵家はこんなに品位がなかったかな?奥方はマナー講師のはずだが」
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どこかのお家で教えているとか?
柔らかなハンカチに顔を埋め、成り行きを見守っていると、王子様が私に問います。
「夢の話面白かったよ、キミの名を聞いても良いかい?」
「え?私に名はありません……」
それを聞いた王子様はなにやら難しい顔をされて、横にいた文官とまたコソコソ話しだしたわ。
「キミの夢の話は興味深い、是非城へきて今一度詳しく聞きたい。良いかね?」
「ご命令とあれば……」
王族相手に「否」は言えない。襤褸雑巾みたいな私が登城して良いかわからない。
まさか処刑目的とか!?
赤から青に顔色を変えた私に、騎士様が「心配ないよ」と声をかけてくれた。
夢の話が不快だったのかと恐れたがそうじゃないみたい?
暴れるお嬢様をすっかり忘れてた時、ガヤガヤと喧しい声が聞こえてきた。
旦那様たちが帰宅したようね。
「おい!出迎えはどうした、下女さえいないではないか!」
「あなた躾が必要なようよ」
「そうだな!近頃は甘くし過ぎたようだ、梁に吊るして鞭打ってくれるわ!」
ご夫婦が恐ろしい折檻の話をされている、私はガクガクと震えた。
お嬢様に飯抜きされた上に折檻だなんて!
あまりの恐怖に私は気を失いかけ目の前が薄らぼんやりしてきた。
私はとうとう死ぬのだと諦め意識を手放した。
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