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彼女は気が付くとベッドの上で泣いていた、冷たいのは泣き腫らした目の周囲だけ。ケホリとひとつ咳をすれば「大丈夫」と気づかわし気な声が聞こえた。
母の声のよく似ていると思った、彼女は声の主確かめることもなくさめざめと泣いた。どうしてこうも都合が悪いことばかかり続くのだろうと呪いたくなる。
「もう嫌……嫌なの……」
布団を頭からかぶりそのまま眠りにつきたかった、だがそんな我儘は許されないだろうと歯を食いしばる。のそりと布団から這い出て見れば目に映ったのは見慣れた壁だった。
倒れた時に誰かが気を使って離れの居室に戻してくれたのかと訝しむ、だが、そんな親切な人があの屋敷にいたとは思えない。
「良かった、目が覚めたのね。葛湯を飲む?」
「え、どうして……」
彼女は信じられない光景を目にして瞠目した、柔らかな笑みを称えてそこにいたのは母アリーヌだったからだ。ロザリーはただ滂沱に涙を流して声にならない声を「あぅああ」と発した。
「ふふ、寝ぼけているのかしら、そうね昨夜は高熱を出して魘されていたのだから仕方ないわ」
「お……お母……様、ど、どうして!?ゴホゲホ……」
もう少し寝ていなさいと言われて、再び寝具に沈む。頭は混乱してどういう事かと自問自答したが答えはさっぱりだ。夢ならば覚めて欲しくないと彼女は強く思ったが紛れもない現実だった。
「一体どういうことかしら?ケホケホ……あぁ喉が痛いわ」
微熱が続いているせいなのか、頭はぼんやりとしていて覚束ない。何より解せなかったのは身体の変化だ。手の平はどう見ても5歳児の小さな手だった、当然だが足も小さく身体全体が縮んでしまっている。
いまは考えている暇はない、ぼんやりする頭をただ休めることだけに集中した。
***
「漸くベッドから出られたわね、まったく肝が冷えたわ。貴女ったらびしょ濡れで倒れていたのよ」
「……ごめんなさい、お母様覚えていないの」
ロザリーは嘘をついて謝った、いくらなんでも十六歳の自分が下女扱いされて、襤褸雑巾にされていたなどと伝えたところで「おかしくなった」と誤解を招きたくない。
母は滋養に良いものを用意しましょうといって張り切っている。
母アリーヌは身体が弱かったが、まだ症状は出ていない。ひょっとしたらこのまま黙って見ていなければ健康を取り戻すのではないかと考えた。
「ねえ、お母様。侍女とメイドがいないのは良くないと思うの」
「え!?どうしたの急に……そうねぇ他人を屋敷に入れるのは良くないと考えていたのだけど、やはり可笑しいのかしら」
頬に手をやって考え込む母はブツブツと独り言を言っていた。
母が身体を壊したのは家のことを一切やっていたからだと考えたのだ。加えて外の空気に触れない生活をしていることも良くないと思う。
「決めたわ!お母様、これからは身体に良いことをしましょう!体力をつけるべきなんです!」
「え、あらそう……?」
理由はわからないが何故か過去に戻れたロザリーは、過去を変えることで少しづつ未来の展望を明るいものにしたいと考えたのだ。
「絶対に早死にしてはならないと思うの!そのためにはどんな事でもするわ」
「う~ん、良く分からないけど健康的になるのは喜ばしいわね」
「そうよ!もっとお日様にあたるべきなの!ね、お母様」
ロザリーは早速とカーテンを開き、閉ざし勝ちだった窓をあけた。
眩い光が射してきて「ふぅ」と声を上げて目を眇めた、この、もう一度生き直すチャンスを逃してはならないと強く決意するのだ。
そんな彼女の胸元にはとあるペンダントが揺れている。
母の声のよく似ていると思った、彼女は声の主確かめることもなくさめざめと泣いた。どうしてこうも都合が悪いことばかかり続くのだろうと呪いたくなる。
「もう嫌……嫌なの……」
布団を頭からかぶりそのまま眠りにつきたかった、だがそんな我儘は許されないだろうと歯を食いしばる。のそりと布団から這い出て見れば目に映ったのは見慣れた壁だった。
倒れた時に誰かが気を使って離れの居室に戻してくれたのかと訝しむ、だが、そんな親切な人があの屋敷にいたとは思えない。
「良かった、目が覚めたのね。葛湯を飲む?」
「え、どうして……」
彼女は信じられない光景を目にして瞠目した、柔らかな笑みを称えてそこにいたのは母アリーヌだったからだ。ロザリーはただ滂沱に涙を流して声にならない声を「あぅああ」と発した。
「ふふ、寝ぼけているのかしら、そうね昨夜は高熱を出して魘されていたのだから仕方ないわ」
「お……お母……様、ど、どうして!?ゴホゲホ……」
もう少し寝ていなさいと言われて、再び寝具に沈む。頭は混乱してどういう事かと自問自答したが答えはさっぱりだ。夢ならば覚めて欲しくないと彼女は強く思ったが紛れもない現実だった。
「一体どういうことかしら?ケホケホ……あぁ喉が痛いわ」
微熱が続いているせいなのか、頭はぼんやりとしていて覚束ない。何より解せなかったのは身体の変化だ。手の平はどう見ても5歳児の小さな手だった、当然だが足も小さく身体全体が縮んでしまっている。
いまは考えている暇はない、ぼんやりする頭をただ休めることだけに集中した。
***
「漸くベッドから出られたわね、まったく肝が冷えたわ。貴女ったらびしょ濡れで倒れていたのよ」
「……ごめんなさい、お母様覚えていないの」
ロザリーは嘘をついて謝った、いくらなんでも十六歳の自分が下女扱いされて、襤褸雑巾にされていたなどと伝えたところで「おかしくなった」と誤解を招きたくない。
母は滋養に良いものを用意しましょうといって張り切っている。
母アリーヌは身体が弱かったが、まだ症状は出ていない。ひょっとしたらこのまま黙って見ていなければ健康を取り戻すのではないかと考えた。
「ねえ、お母様。侍女とメイドがいないのは良くないと思うの」
「え!?どうしたの急に……そうねぇ他人を屋敷に入れるのは良くないと考えていたのだけど、やはり可笑しいのかしら」
頬に手をやって考え込む母はブツブツと独り言を言っていた。
母が身体を壊したのは家のことを一切やっていたからだと考えたのだ。加えて外の空気に触れない生活をしていることも良くないと思う。
「決めたわ!お母様、これからは身体に良いことをしましょう!体力をつけるべきなんです!」
「え、あらそう……?」
理由はわからないが何故か過去に戻れたロザリーは、過去を変えることで少しづつ未来の展望を明るいものにしたいと考えたのだ。
「絶対に早死にしてはならないと思うの!そのためにはどんな事でもするわ」
「う~ん、良く分からないけど健康的になるのは喜ばしいわね」
「そうよ!もっとお日様にあたるべきなの!ね、お母様」
ロザリーは早速とカーテンを開き、閉ざし勝ちだった窓をあけた。
眩い光が射してきて「ふぅ」と声を上げて目を眇めた、この、もう一度生き直すチャンスを逃してはならないと強く決意するのだ。
そんな彼女の胸元にはとあるペンダントが揺れている。
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