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「お願いです、お母様のためを思うのならば日の元に」
「……何故そのような事を急に、彼女は身体が弱いのだぞ」
父親であるテレンツォ・バイヤール卿は訝し気に娘を見た、普段から言葉を交わしたことが無い二人はギクシャクした関係だ。その娘から話があると言い募られ今現在ここにいる。
書斎にて対峙したふたりは親子らしい会話は初めてのことだ。
「身体が弱いからこそです、もっと陽の光を浴びて健康的に努めることが重要です!お願いします!」
「……どういう風の吹き回しなのか、5歳児とは思えない言動をするな」
「え、いいえそれは……物の本で」
しどろもどろな彼女は人生二度目を生きているとは言えず、どうしたものかと狼狽えた。本から情報を得たと苦し紛れの言をとったが果たして上手くいくだろうか。
「ふん……そこまで言うなら好きにしろ。ただし、上手くいかなかった時は速やかに引き籠るのだぞ」
「あ、ありがとうございます!」
了承を得た彼女はパァっと明るい表情になった、その笑顔はまるでアリーヌそのものだった。瞳の色は違っても紛れもなく血を分けたものの顔だ。
「アリーヌに良く似ておる……そうかお前はそのような顔をするのだな」
「お父様?」
「もう、良いだろう。行きなさい」
「は、はい。失礼いたします」
ドアを閉じた彼女を見送って卿は何事か呟く、それは小さな変化だったが確実に娘として意識する一端だった。
「お母様、御赦しがでましたよ!お散歩に出かけましょう!」
「まぁ、ロザリー。そのようにはしゃいで、落ち着きなさいな」
「だってだって、とても嬉しいのですもの!」
小躍りする娘に躊躇する母は「まずは5分だけね」と窘める、ロザリーは若干不服そうだが少しでも外の空気を吸えるならばと了承した。
「ほら、お母様。スズランの花が咲いています、でも毒なので触れない用に」
「あらあ、そうだったの?こんなに美しいのにね」
「はい、秋につける赤い実は特に要注意ですよ」
娘の博識さに感心する母は嬉しそうに笑う、そしてその白い花を遠目で見て麗しいものには気を付けねばと言った。
初回の散歩はこのように過ごして終わったが、また新しい花を見つけようと約束した。
母親を屋敷に連れ戻すとロザリーは続けて散歩に出た。
もっと面白い発見があるのではないかと期待してのことだ、彼女は植え込みに新しい花はないかと見分する。チューリップの花が咲きそうになっていた。
「あら……これも毒の花ね、注意しなければ」
思いのほか毒草が生い茂っていることに驚愕する、前回に生きていた頃には気が付かなかったと猛省する。
「あら、何かしら?」
生垣の端に赤い何かが掠めた、そちらの方に向かいじっくりと覗いてみれば金髪の少年がこちらを伺っているのに気が付く。
「あ、貴方……まさかクレマン!?」
名指しで言われたことに吃驚したのか、少年は酷く驚いた。まさか名を知られていたとは思わなかったのだ。
「どうして名前を知っているの?ボクはキミの名を知らないのに」
「あ、……どうしよう」
生垣から顔を出した彼は瞠目して、すっかり隠れているのを諦めたようだ。
「ねぇどうしてボクの名前を知っているの?ねぇ、キミの名前は?」
「……教えない」
思わぬ再会を果たした彼は意地悪そうな片鱗はまったく見られない。それどころか好奇心剥き出して親し気に話しかけてくる。6歳の彼はまだ毒を孕んでいなかった。
かつて寒空の下に水をかけてきた人物に彼女は良い印象は持てそうもない。
「……何故そのような事を急に、彼女は身体が弱いのだぞ」
父親であるテレンツォ・バイヤール卿は訝し気に娘を見た、普段から言葉を交わしたことが無い二人はギクシャクした関係だ。その娘から話があると言い募られ今現在ここにいる。
書斎にて対峙したふたりは親子らしい会話は初めてのことだ。
「身体が弱いからこそです、もっと陽の光を浴びて健康的に努めることが重要です!お願いします!」
「……どういう風の吹き回しなのか、5歳児とは思えない言動をするな」
「え、いいえそれは……物の本で」
しどろもどろな彼女は人生二度目を生きているとは言えず、どうしたものかと狼狽えた。本から情報を得たと苦し紛れの言をとったが果たして上手くいくだろうか。
「ふん……そこまで言うなら好きにしろ。ただし、上手くいかなかった時は速やかに引き籠るのだぞ」
「あ、ありがとうございます!」
了承を得た彼女はパァっと明るい表情になった、その笑顔はまるでアリーヌそのものだった。瞳の色は違っても紛れもなく血を分けたものの顔だ。
「アリーヌに良く似ておる……そうかお前はそのような顔をするのだな」
「お父様?」
「もう、良いだろう。行きなさい」
「は、はい。失礼いたします」
ドアを閉じた彼女を見送って卿は何事か呟く、それは小さな変化だったが確実に娘として意識する一端だった。
「お母様、御赦しがでましたよ!お散歩に出かけましょう!」
「まぁ、ロザリー。そのようにはしゃいで、落ち着きなさいな」
「だってだって、とても嬉しいのですもの!」
小躍りする娘に躊躇する母は「まずは5分だけね」と窘める、ロザリーは若干不服そうだが少しでも外の空気を吸えるならばと了承した。
「ほら、お母様。スズランの花が咲いています、でも毒なので触れない用に」
「あらあ、そうだったの?こんなに美しいのにね」
「はい、秋につける赤い実は特に要注意ですよ」
娘の博識さに感心する母は嬉しそうに笑う、そしてその白い花を遠目で見て麗しいものには気を付けねばと言った。
初回の散歩はこのように過ごして終わったが、また新しい花を見つけようと約束した。
母親を屋敷に連れ戻すとロザリーは続けて散歩に出た。
もっと面白い発見があるのではないかと期待してのことだ、彼女は植え込みに新しい花はないかと見分する。チューリップの花が咲きそうになっていた。
「あら……これも毒の花ね、注意しなければ」
思いのほか毒草が生い茂っていることに驚愕する、前回に生きていた頃には気が付かなかったと猛省する。
「あら、何かしら?」
生垣の端に赤い何かが掠めた、そちらの方に向かいじっくりと覗いてみれば金髪の少年がこちらを伺っているのに気が付く。
「あ、貴方……まさかクレマン!?」
名指しで言われたことに吃驚したのか、少年は酷く驚いた。まさか名を知られていたとは思わなかったのだ。
「どうして名前を知っているの?ボクはキミの名を知らないのに」
「あ、……どうしよう」
生垣から顔を出した彼は瞠目して、すっかり隠れているのを諦めたようだ。
「ねぇどうしてボクの名前を知っているの?ねぇ、キミの名前は?」
「……教えない」
思わぬ再会を果たした彼は意地悪そうな片鱗はまったく見られない。それどころか好奇心剥き出して親し気に話しかけてくる。6歳の彼はまだ毒を孕んでいなかった。
かつて寒空の下に水をかけてきた人物に彼女は良い印象は持てそうもない。
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