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トラブルがやって来た
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ベルント・アルゴリオの入学で少々不穏だった入園式を終えてからのことだ。初夏を迎えようという時期に再び学園を騒がせることが起こる。
「え……今度はドナジーナ嬢が中途編入するですって!?」
侯爵邸の食堂で夕餉の席に着いたばかりのフィオネは、良くない報せを父から聞かされてジュージューと香ばしいステーキを切る手が止る。急激に食欲が失せた彼女は水を嚥下して嘆息する。
財務省の長官として城務めをしている父は情報をすぐに掴むらしい、どうせなら愛する王子のエピソードでも持ち帰って欲しいと顔を顰めた。
「ああ、本来なら入園式に参加予定だったらしいが姫巫女の都合で遅れたようだ」
「……そうでしたの、入園は予定されていたことですのね」
すっかり食欲が消滅したらしい彼女は肉の皿を下げさせて、果実水を所望した。胃をキリリと捩じるような痛みが彼女の精神に追い打ちをかけてきた。
「はぁ……学園はアルゴリオ家に蹂躙される未来しかないのでしょうか」
「王は大司教に恩義を感じておられるからな、何かと優遇せよと学園に圧力を掛けるかもしれん」
「そんな……学園は平等のはずですわ、貴族舎と庶民舎は分けられはいますが学ぶ内容は同じです。もし成績などに影響しては本質がぶれます」
そんな娘の不安な意見を聞いた侯爵は同じことを危惧していたと見られて頷く。
「学園長は出来た方だが、そのほかの教師がどう出るか……ほとんどが王にならえのお辞儀バッタだからな、だが生徒の未来を潰すような不正行為が横行すようなら臣下たちは黙ってはいないだろう」
民を幸福に導くはずの姫巫女とその関係者が、将来国を担う若者達の芽を摘むようなら反旗を翻してもおかしくはない。
一部の者に敬われている姫巫女であるが、彼女が何かしらの力を発揮した功績は何一つ確認されていない。
それゆえに疑心暗鬼の者は少なくないのだ。
果たして彼女は奇跡などを披露する機会は訪れるのだろうか。
***
翌週の朝、噂の姫巫女が登園してきて早速と学園内を騒がせた。
どこから湧いたのか男女関係なく彼女の取り巻きの輪がすでに出来上がっていて、学内を我が物顔で闊歩する姿が目撃された。そのほとんどが下位貴族の子息子女だったがあからさまなゴマ擦りは呆れたものだ。
「姫様、お荷物をお持ちします」
「ひぃ様、足元をお気をつけて」
「巫女様!是非昼休憩はごいっしょに!」
よくよく見れば聖教会に足繁く通う貴族家の子供らが侍っている、敬虔な信徒と言えば聞こえは良いが、あまり評判が宜しくない家ばかりなのだ。教会の運営資金は御布施だがそれらを元手に教本を頒布、助祭以下の者達が手彫りした女神像などを販売して稼いでいた。
そして一番の収入源が大司教の治癒魔法だ、病気怪我で瀕死に陥った者をその御業で救いお布施という謝礼を受け取っているのだ。なにも間違ってはいないが、救うのは決まって金持ちばかりなのが疑問だ。
極稀に貧民を救うこともするが、それは慈善活動をしているという国王へ見せる為だけのパフォーマンスに過ぎなかった。
「恩恵ならぬ棚ボタを下位貴族達は賜っているということさ」
「しっ!声が大きいですわ」
いつものカフェでリカルデル王子とフィオネは細やかなお茶会をしているところだ。時計は15時過ぎを指している。
「はぁ、午前中はべったりと隣に陣取られて気持ちが悪いったらなかったよ」
「知ってますわ、左隣は私が座ってましたもの」
フィオネは何かを思い出したのか苛立ってレモンタルトに八つ当たりをする、ザクリと半分に割れたタルト生地が悲鳴を上げた気がする。
姫巫女ドナジーナは二人掛けの椅子へ無理矢理に腰を掛けてきて、ぐいぐいと押してきた。腹を立てたフィオネは負けじと踏ん張り落とされまいと臀部に力を入れて応戦していたのだ。
挟まれた王子はミシミシと圧迫されたが、『愛するフィが俺に尻を押し付けてくる』と邪な心で楽しんでいたのは秘密である。
「案の定、教師共はアルゴリオ卿に買収されいるな……態度が悪くても注意などしやしない。父上のゴリ押しも効いているのだろうが」
その言葉を拾ったのはフィオナではなく側近の一人バイロン侯爵令息だった。
「困ったことですね、うちの父上も王の振る舞いは捨て置けないと渋面ですよ」
「……そうだな、恩人とはいえ好き勝手させ過ぎている」
もう一人の側近ヴァレン伯爵令息が同調した、今のところ第二王子には二人の友人兼側近はふたりだけである。増やすべきだと進言をされているが早々信用できる人物はみつからない。
円卓を囲むようにして茶を嗜んでいる彼らは全員幼馴染みである。気の置けない彼らは腹を割ってなんでも語り合う。
「いずれにせよ玉座は挿げ替えようという意見はすでに出ているからな」
リカルデルはそう言うとレモンケーキを頬張った、飾りの果肉が酸味の強いものに当たったのか「すっぱ!」と声を上げた。
「もう、リカルったら……」
彼の口元が汚れたのでフィオナが優しく拭う、彼女のハンカチからほんのり薔薇の香りをかいだ彼はデレェとだらしなくなる。
するとそこへ厄介な一団が現れて無遠慮に声をかけてきた。
「ごきげんよう皆様、お隣に座っても良ろしくて?」
「げっ!姫巫女」
「え……今度はドナジーナ嬢が中途編入するですって!?」
侯爵邸の食堂で夕餉の席に着いたばかりのフィオネは、良くない報せを父から聞かされてジュージューと香ばしいステーキを切る手が止る。急激に食欲が失せた彼女は水を嚥下して嘆息する。
財務省の長官として城務めをしている父は情報をすぐに掴むらしい、どうせなら愛する王子のエピソードでも持ち帰って欲しいと顔を顰めた。
「ああ、本来なら入園式に参加予定だったらしいが姫巫女の都合で遅れたようだ」
「……そうでしたの、入園は予定されていたことですのね」
すっかり食欲が消滅したらしい彼女は肉の皿を下げさせて、果実水を所望した。胃をキリリと捩じるような痛みが彼女の精神に追い打ちをかけてきた。
「はぁ……学園はアルゴリオ家に蹂躙される未来しかないのでしょうか」
「王は大司教に恩義を感じておられるからな、何かと優遇せよと学園に圧力を掛けるかもしれん」
「そんな……学園は平等のはずですわ、貴族舎と庶民舎は分けられはいますが学ぶ内容は同じです。もし成績などに影響しては本質がぶれます」
そんな娘の不安な意見を聞いた侯爵は同じことを危惧していたと見られて頷く。
「学園長は出来た方だが、そのほかの教師がどう出るか……ほとんどが王にならえのお辞儀バッタだからな、だが生徒の未来を潰すような不正行為が横行すようなら臣下たちは黙ってはいないだろう」
民を幸福に導くはずの姫巫女とその関係者が、将来国を担う若者達の芽を摘むようなら反旗を翻してもおかしくはない。
一部の者に敬われている姫巫女であるが、彼女が何かしらの力を発揮した功績は何一つ確認されていない。
それゆえに疑心暗鬼の者は少なくないのだ。
果たして彼女は奇跡などを披露する機会は訪れるのだろうか。
***
翌週の朝、噂の姫巫女が登園してきて早速と学園内を騒がせた。
どこから湧いたのか男女関係なく彼女の取り巻きの輪がすでに出来上がっていて、学内を我が物顔で闊歩する姿が目撃された。そのほとんどが下位貴族の子息子女だったがあからさまなゴマ擦りは呆れたものだ。
「姫様、お荷物をお持ちします」
「ひぃ様、足元をお気をつけて」
「巫女様!是非昼休憩はごいっしょに!」
よくよく見れば聖教会に足繁く通う貴族家の子供らが侍っている、敬虔な信徒と言えば聞こえは良いが、あまり評判が宜しくない家ばかりなのだ。教会の運営資金は御布施だがそれらを元手に教本を頒布、助祭以下の者達が手彫りした女神像などを販売して稼いでいた。
そして一番の収入源が大司教の治癒魔法だ、病気怪我で瀕死に陥った者をその御業で救いお布施という謝礼を受け取っているのだ。なにも間違ってはいないが、救うのは決まって金持ちばかりなのが疑問だ。
極稀に貧民を救うこともするが、それは慈善活動をしているという国王へ見せる為だけのパフォーマンスに過ぎなかった。
「恩恵ならぬ棚ボタを下位貴族達は賜っているということさ」
「しっ!声が大きいですわ」
いつものカフェでリカルデル王子とフィオネは細やかなお茶会をしているところだ。時計は15時過ぎを指している。
「はぁ、午前中はべったりと隣に陣取られて気持ちが悪いったらなかったよ」
「知ってますわ、左隣は私が座ってましたもの」
フィオネは何かを思い出したのか苛立ってレモンタルトに八つ当たりをする、ザクリと半分に割れたタルト生地が悲鳴を上げた気がする。
姫巫女ドナジーナは二人掛けの椅子へ無理矢理に腰を掛けてきて、ぐいぐいと押してきた。腹を立てたフィオネは負けじと踏ん張り落とされまいと臀部に力を入れて応戦していたのだ。
挟まれた王子はミシミシと圧迫されたが、『愛するフィが俺に尻を押し付けてくる』と邪な心で楽しんでいたのは秘密である。
「案の定、教師共はアルゴリオ卿に買収されいるな……態度が悪くても注意などしやしない。父上のゴリ押しも効いているのだろうが」
その言葉を拾ったのはフィオナではなく側近の一人バイロン侯爵令息だった。
「困ったことですね、うちの父上も王の振る舞いは捨て置けないと渋面ですよ」
「……そうだな、恩人とはいえ好き勝手させ過ぎている」
もう一人の側近ヴァレン伯爵令息が同調した、今のところ第二王子には二人の友人兼側近はふたりだけである。増やすべきだと進言をされているが早々信用できる人物はみつからない。
円卓を囲むようにして茶を嗜んでいる彼らは全員幼馴染みである。気の置けない彼らは腹を割ってなんでも語り合う。
「いずれにせよ玉座は挿げ替えようという意見はすでに出ているからな」
リカルデルはそう言うとレモンケーキを頬張った、飾りの果肉が酸味の強いものに当たったのか「すっぱ!」と声を上げた。
「もう、リカルったら……」
彼の口元が汚れたのでフィオナが優しく拭う、彼女のハンカチからほんのり薔薇の香りをかいだ彼はデレェとだらしなくなる。
するとそこへ厄介な一団が現れて無遠慮に声をかけてきた。
「ごきげんよう皆様、お隣に座っても良ろしくて?」
「げっ!姫巫女」
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