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義兄妹
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てっきり隣のテーブルのことかと思った王子達だったが、姫巫女ドナジーナはなんと王子の真横へ腰巾着に指示して椅子を並ばせたのだ。図々しくもそこへ腰を下ろすその姿に一同は愕然とした。
「あらぁ今日のオススメデザートはレモン菓子ですのね、そこの貴女レモネードとロールケーキを持ってきて」
「はい、巫女様!御使命有難く存じます」
指名された女生徒は嬉しそうに注文カウンターへ走って行く、彼女に侍る生徒たちは下位の貴族だ、出入りできるカフェではないのだか姫巫女の権限を発揮させて来店したようだ。
すべてセルフサービスの学園カフェは自ら動くしかないのだが、姫巫女は端からそんな考えはないらしい。世話され尽くされて当たり前と享受しているのだ。まるで女帝のような振る舞いである。
「ねぇ、殿下ァ……私思いましたの。もっと親しくなるにはどうすべきなのかとね」
「……」
リカルデル王子は無言でもって抵抗をするのだが、そんな些末なことは気にしないとばかりにドナジーナは好き勝手に話をした。だが、その話が聞き流すような内容でなくなると王子は「バカな!」と声を出してしまう。
反応を得たことに気を良くした彼女はニッタリと厭らしい笑顔を浮かべ先を続ける。
「これは決定事項ですのよ、王様の許可を頂いてますわ。ウフフフッ」
彼女が言うには王宮の一室に居室を賜り、そこから学園へ通うことになったと言うのだ。しかも、送迎の馬車はリカルデルと同じであるのだと。
フィオネを愛する王子はとてもではないが受け入れ難いことだ。入学して以来、毎日欠かさずフィオナを送り迎えしていたのだから。婚約者同士の二人にとってとても大切な習慣であり希少な時間なのだから。
「例え王命だろうが私はキミを贔屓するつもりはない!最優先は婚約者のフィオナなのだから!」
語気強く宣った王子は席を立ちあがりフィオナが座る元へ行くと手を取って帰宅を促す。
王子の言動から誰よりも丁重に扱われていると再確認ができたフィオナは、安堵の笑みを浮かべて共に帰りましょうと言った。彼の愛は本物だと。
「嬉しいわリカル、まだ話足りないから是非続きは我が家で、側近の皆様もね?」
「ああ、そうしよう!侯爵夫人にもご挨拶したいな」
「それは良い案です!なぁ?」
「願ったりです、ボクらまで招待いただけるなんて!侯爵家の茶と菓子は美味しいから」
和気藹々と王子一行は空気の悪いカフェから去って行く。
その仲睦まじい様子を我儘巫女が黙って見過ごすはずもない、彼女はすぐに腰巾着たちに行く手を阻むように目配せした。彼らは頷くと素早く王子の前に立ちはだかり「姫巫女様に無礼です」と叫ぶ。
「貴様ら、妄信するのは勝手だが王子の行く手を邪魔するとはどういうつもりか?私に意見するとは良い度胸だな」
「ひっ!」
「きゃあ!」
王族独特の威厳でもって威嚇された生徒達は青くなって後退る、分が悪すぎると察した彼らは王子の前から散った。だが、姫巫女は使えない輩を睨みつけると自ら王子の元へ駆け寄ろうと席を立つ。
「お待ちを!リカルデル様!」
名を気安く呼ぶ巫女に苛立った王子は振り向いて口を開きかけたが、目の前で起こったことを目にして固まる。
「んぎゃぁーーーー!つ、冷たい!何よ何なのよ!?」
大量の氷水を頭から浴びたらしい姫巫女は絶叫して震え状況を把握できずにギャイギャイと喚き散らす。大騒ぎする巫女と取り巻きたちを余所にとても呑気そうな声が割って入った。
「あぁ、ごめんよ。ブンブンと煩いコバエがいるものだから排除しようと思ってね。目標を見誤ったようだ」
「ベルント!あんたどういうつもりよ!お父様に言いつけてやる!」
まるで幼子の癇癪のように叫んだ姫巫女に義兄は小馬鹿にした笑みを浮かべて「勝手にしろクソガキ」という台詞を吐き捨てた。
「あぁ、まだコバエが集団で屯しているなぁ排除しとくか」
彼はそういうと手の先から冷気を出して球状に膨らむ氷水を作り出して義妹の取り巻きたちを新たな標的にした。
とんでもない速さで冷たい球体が空を滑り彼らの頭上で弾けた。
冷水を浴びた彼らは一斉に悲鳴を上げてカフェから飛び出していった。一人取り残された巫女は見捨てられた形になり茫然としている。
「テメェもさっさと去ね!目障りなんだよ無能のハリボテ巫女の癖に」
「ひんっ!」
尻を足蹴りにされた彼女は前のめりになって無様に床に転げ、グシャグシャびちゃびちゃの最悪な状態な彼女はまるでモップのように滑って床を磨く羽目になった。
「ぶっ!なんだあれ」
「ぐふっ……笑うなんて失礼だぞヴァレン、フハハ」
「バイロンお前も笑ってるじゃないか、アハハハハッ」
王子達に笑われた彼女は破裂寸前の焙烙玉のように顔を赤くしてキーキー文句を垂れながらその場から逃げて行った。
「やあ、晴れ晴れしたよ。ありがとうベルント殿」
巫女に粘着されて誰より苛立っていた王子は礼を述べて手を差し出す、だがその手をチラリと見てベルントはソッポを向いた。
「貴殿のためにやったわけじゃねぇよ、アレを増長させている父には腹を立てている。あんなのが義理でも家族かと思うと苛立って仕方ねぇんだ」
「ほお?」
聖職者の息子とは思えない乱暴な物言いに王子は何故か好感を持った。
「あらぁ今日のオススメデザートはレモン菓子ですのね、そこの貴女レモネードとロールケーキを持ってきて」
「はい、巫女様!御使命有難く存じます」
指名された女生徒は嬉しそうに注文カウンターへ走って行く、彼女に侍る生徒たちは下位の貴族だ、出入りできるカフェではないのだか姫巫女の権限を発揮させて来店したようだ。
すべてセルフサービスの学園カフェは自ら動くしかないのだが、姫巫女は端からそんな考えはないらしい。世話され尽くされて当たり前と享受しているのだ。まるで女帝のような振る舞いである。
「ねぇ、殿下ァ……私思いましたの。もっと親しくなるにはどうすべきなのかとね」
「……」
リカルデル王子は無言でもって抵抗をするのだが、そんな些末なことは気にしないとばかりにドナジーナは好き勝手に話をした。だが、その話が聞き流すような内容でなくなると王子は「バカな!」と声を出してしまう。
反応を得たことに気を良くした彼女はニッタリと厭らしい笑顔を浮かべ先を続ける。
「これは決定事項ですのよ、王様の許可を頂いてますわ。ウフフフッ」
彼女が言うには王宮の一室に居室を賜り、そこから学園へ通うことになったと言うのだ。しかも、送迎の馬車はリカルデルと同じであるのだと。
フィオネを愛する王子はとてもではないが受け入れ難いことだ。入学して以来、毎日欠かさずフィオナを送り迎えしていたのだから。婚約者同士の二人にとってとても大切な習慣であり希少な時間なのだから。
「例え王命だろうが私はキミを贔屓するつもりはない!最優先は婚約者のフィオナなのだから!」
語気強く宣った王子は席を立ちあがりフィオナが座る元へ行くと手を取って帰宅を促す。
王子の言動から誰よりも丁重に扱われていると再確認ができたフィオナは、安堵の笑みを浮かべて共に帰りましょうと言った。彼の愛は本物だと。
「嬉しいわリカル、まだ話足りないから是非続きは我が家で、側近の皆様もね?」
「ああ、そうしよう!侯爵夫人にもご挨拶したいな」
「それは良い案です!なぁ?」
「願ったりです、ボクらまで招待いただけるなんて!侯爵家の茶と菓子は美味しいから」
和気藹々と王子一行は空気の悪いカフェから去って行く。
その仲睦まじい様子を我儘巫女が黙って見過ごすはずもない、彼女はすぐに腰巾着たちに行く手を阻むように目配せした。彼らは頷くと素早く王子の前に立ちはだかり「姫巫女様に無礼です」と叫ぶ。
「貴様ら、妄信するのは勝手だが王子の行く手を邪魔するとはどういうつもりか?私に意見するとは良い度胸だな」
「ひっ!」
「きゃあ!」
王族独特の威厳でもって威嚇された生徒達は青くなって後退る、分が悪すぎると察した彼らは王子の前から散った。だが、姫巫女は使えない輩を睨みつけると自ら王子の元へ駆け寄ろうと席を立つ。
「お待ちを!リカルデル様!」
名を気安く呼ぶ巫女に苛立った王子は振り向いて口を開きかけたが、目の前で起こったことを目にして固まる。
「んぎゃぁーーーー!つ、冷たい!何よ何なのよ!?」
大量の氷水を頭から浴びたらしい姫巫女は絶叫して震え状況を把握できずにギャイギャイと喚き散らす。大騒ぎする巫女と取り巻きたちを余所にとても呑気そうな声が割って入った。
「あぁ、ごめんよ。ブンブンと煩いコバエがいるものだから排除しようと思ってね。目標を見誤ったようだ」
「ベルント!あんたどういうつもりよ!お父様に言いつけてやる!」
まるで幼子の癇癪のように叫んだ姫巫女に義兄は小馬鹿にした笑みを浮かべて「勝手にしろクソガキ」という台詞を吐き捨てた。
「あぁ、まだコバエが集団で屯しているなぁ排除しとくか」
彼はそういうと手の先から冷気を出して球状に膨らむ氷水を作り出して義妹の取り巻きたちを新たな標的にした。
とんでもない速さで冷たい球体が空を滑り彼らの頭上で弾けた。
冷水を浴びた彼らは一斉に悲鳴を上げてカフェから飛び出していった。一人取り残された巫女は見捨てられた形になり茫然としている。
「テメェもさっさと去ね!目障りなんだよ無能のハリボテ巫女の癖に」
「ひんっ!」
尻を足蹴りにされた彼女は前のめりになって無様に床に転げ、グシャグシャびちゃびちゃの最悪な状態な彼女はまるでモップのように滑って床を磨く羽目になった。
「ぶっ!なんだあれ」
「ぐふっ……笑うなんて失礼だぞヴァレン、フハハ」
「バイロンお前も笑ってるじゃないか、アハハハハッ」
王子達に笑われた彼女は破裂寸前の焙烙玉のように顔を赤くしてキーキー文句を垂れながらその場から逃げて行った。
「やあ、晴れ晴れしたよ。ありがとうベルント殿」
巫女に粘着されて誰より苛立っていた王子は礼を述べて手を差し出す、だがその手をチラリと見てベルントはソッポを向いた。
「貴殿のためにやったわけじゃねぇよ、アレを増長させている父には腹を立てている。あんなのが義理でも家族かと思うと苛立って仕方ねぇんだ」
「ほお?」
聖職者の息子とは思えない乱暴な物言いに王子は何故か好感を持った。
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