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魔物をいくら倒せどまだまだ湧いて来る、恐らくいまがピークと思われた。各部隊の隊長が騎士達を鼓舞するが疲弊した者達は目が死んでおりどうにもならない。止む無く一時撤退と判断したようだ。
「将軍閣下、期待に添えられず申し訳ございません……」
己の血か返り血なのか分からない体の騎士総隊長がゼェゼェと喘ぎながら膝を着く、すでに剣を握るのも辛そうだ。それを見た将軍は目を瞑り「止むをえまい」と嘆息する。
「え?撤退ですって?何よ乗って来たところなのに」
さきほど尖った氷柱でゴブリン達を団子のように串刺しにしたマルガネットは「情けない」と言った。彼女はまだまだ余力があるのか左側に無数の氷礫を作りそれを一気に尖らせ噴射した。すると広範囲に散っていたウェアウルフ達一掃する、それはまるで片手間に排除したかのような軽やかさだ。
「す、すごい……戦姫……?」
「まさに戦姫、いいや戦姫様ァ!」
「おお……なんて雄々しい」
目の前で繰り広げられた戦闘の一端を見せつけられた騎士達は愕然とした、そして剣でちまちま戦っている己らを何と無力なのかと恥じた。騎士達が前線から退いたと思ったマルガネットはニコリと微笑み「ならば遠慮はいらないわよね」と魔物が湧いているだろう瘴気沼に狙いを定める。
「待て!其方の実力はわかったが深追いするのは危険であるぞ」
部隊長各らしきが苦々しい顔でそう呟き駆け寄ってきた、だがマルガネットはそれを無視してレイに声をかける。
「行けるわよね?レイ」
「ん。ああ任せてください、まだ4分の1も力を使っちゃいないので」
頼もしくそう言う彼は白い歯をニッと見せて馬から降りると体制を整えた、迷いはない。馬を労い「うまく逃げてくれ」と背をポンポンと叩く。
マルガネットもまた馬から降りるとグルングルンと腕を回し、魔物たちに容赦しないと立ち塞がる。
「そこの貴方、御自分のことを優先させなさい。私達に構っている暇があるのなら」
「ひ、……」
氷の刃を出した彼女を見て尻餅をつく、そして「ひぃひぃ」と泣きながら這って行った。なかなか情けない姿である。
いよいよ根源と思しき瘴気沼に辿り着く、怪しく揺れる暗褐色の水面からトロールのような魔物が這い出てきたではないか。
「どんどん強い魔物が……少しばかり乱暴にいくわよ」
「あぁ、こちらは大丈夫ですよ」
サポートに回ったレイが力強く言う、そしてわらわらと出てくる魔物を炎で屠って行く。やはり際限なく出現してくる。
「ホワイトバインド!」
マルガネットがそう叫ぶと黒黒とした沼が収縮しだした、それでも魔物は這い出て来ようと藻掻いている。も一度収縮魔法を唱えると今度は黒い点になってボコボコと蠢くだけになる。
「やったな!マルガネット、これで魔物は」
「いいえ、まだよ。1,2回程度では収束しないわ……でもこれで魔物の数は減るでしょう、やれやれね」
瘴気沼は一つだけではない、少なくとも三カ所ほど確認が取れた。二つ目を抑え込み溜息を吐いた時だ、騎士が「大変だ」と言ってやってきた。
「何事?いくらなんでもこれ以上の面倒事は無理だわ」
辛うじて沼を抑え込んでいるマルガネットは流石に蒼い顔だ、小康状態となったもののこれ以上抑え込むのは困難と言えた。
「いえ、その魔物ではなく……民間人と思われる遺体が発見されまして」
「なんですって?まだこの辺にいたの……」
騎士が報告した惨劇の場はテルミナ・バルドラッド達の事ものだった、見るも無残に食い尽くされたその現場は目を覆いたくなるほどだった。馬車に残されたプレートすらも、美しかったBの文字は踏み荒らされ判読できない状態である。
「将軍閣下、期待に添えられず申し訳ございません……」
己の血か返り血なのか分からない体の騎士総隊長がゼェゼェと喘ぎながら膝を着く、すでに剣を握るのも辛そうだ。それを見た将軍は目を瞑り「止むをえまい」と嘆息する。
「え?撤退ですって?何よ乗って来たところなのに」
さきほど尖った氷柱でゴブリン達を団子のように串刺しにしたマルガネットは「情けない」と言った。彼女はまだまだ余力があるのか左側に無数の氷礫を作りそれを一気に尖らせ噴射した。すると広範囲に散っていたウェアウルフ達一掃する、それはまるで片手間に排除したかのような軽やかさだ。
「す、すごい……戦姫……?」
「まさに戦姫、いいや戦姫様ァ!」
「おお……なんて雄々しい」
目の前で繰り広げられた戦闘の一端を見せつけられた騎士達は愕然とした、そして剣でちまちま戦っている己らを何と無力なのかと恥じた。騎士達が前線から退いたと思ったマルガネットはニコリと微笑み「ならば遠慮はいらないわよね」と魔物が湧いているだろう瘴気沼に狙いを定める。
「待て!其方の実力はわかったが深追いするのは危険であるぞ」
部隊長各らしきが苦々しい顔でそう呟き駆け寄ってきた、だがマルガネットはそれを無視してレイに声をかける。
「行けるわよね?レイ」
「ん。ああ任せてください、まだ4分の1も力を使っちゃいないので」
頼もしくそう言う彼は白い歯をニッと見せて馬から降りると体制を整えた、迷いはない。馬を労い「うまく逃げてくれ」と背をポンポンと叩く。
マルガネットもまた馬から降りるとグルングルンと腕を回し、魔物たちに容赦しないと立ち塞がる。
「そこの貴方、御自分のことを優先させなさい。私達に構っている暇があるのなら」
「ひ、……」
氷の刃を出した彼女を見て尻餅をつく、そして「ひぃひぃ」と泣きながら這って行った。なかなか情けない姿である。
いよいよ根源と思しき瘴気沼に辿り着く、怪しく揺れる暗褐色の水面からトロールのような魔物が這い出てきたではないか。
「どんどん強い魔物が……少しばかり乱暴にいくわよ」
「あぁ、こちらは大丈夫ですよ」
サポートに回ったレイが力強く言う、そしてわらわらと出てくる魔物を炎で屠って行く。やはり際限なく出現してくる。
「ホワイトバインド!」
マルガネットがそう叫ぶと黒黒とした沼が収縮しだした、それでも魔物は這い出て来ようと藻掻いている。も一度収縮魔法を唱えると今度は黒い点になってボコボコと蠢くだけになる。
「やったな!マルガネット、これで魔物は」
「いいえ、まだよ。1,2回程度では収束しないわ……でもこれで魔物の数は減るでしょう、やれやれね」
瘴気沼は一つだけではない、少なくとも三カ所ほど確認が取れた。二つ目を抑え込み溜息を吐いた時だ、騎士が「大変だ」と言ってやってきた。
「何事?いくらなんでもこれ以上の面倒事は無理だわ」
辛うじて沼を抑え込んでいるマルガネットは流石に蒼い顔だ、小康状態となったもののこれ以上抑え込むのは困難と言えた。
「いえ、その魔物ではなく……民間人と思われる遺体が発見されまして」
「なんですって?まだこの辺にいたの……」
騎士が報告した惨劇の場はテルミナ・バルドラッド達の事ものだった、見るも無残に食い尽くされたその現場は目を覆いたくなるほどだった。馬車に残されたプレートすらも、美しかったBの文字は踏み荒らされ判読できない状態である。
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