上 下
3 / 9

秘密のこと

しおりを挟む




「あぁ、旦那様……会いたかったです」
「気分はどうだいアンドレ、今日は陽が強く射したから気が気ではなかったよ」
「ありがとう、でも平気。旦那様が分厚いカーテンを誂えてくれたから」
色白の美少年がそこにいた、少女と見紛うほど華奢で美しい顔をしていた。彼は魔族との混血で陽を嫌う。

「さあ、いつものように私の血を飲んで」
「ふふ、ありがとう」
彼の赤い唇がジョルジュに吸い付く、ガブリと噛めば言いようのない甘い快感がジョルジュを襲う。痛みよりも噛まれた快感の方が上を行くらしい。

「ごめんよ、キミのことをすっかり忘れて旅にでようだなんて」
「いいえ、こうして留まってくれたじゃないですか」
彼は唇を離してニコリと微笑む、血が滴った顎が妙に色っぽい。そして、再びジョルジュの腕を噛みつくのだ。

「あぁ、なんという快楽だろう……私はキミ無では生きられそうもないよ」
「嬉しいです、旦那様。あの女よりもですか?」
「あの女?……あぁクリステルの事か、済まないが彼女もまた必要な存在なんだよ。許しておくれ」
「そう……わかりました」


血を限界まで吸い上げれられ、淫楽に耽るジョルジュは精も出していないのにビクビクと震えた。まるで一晩中女を抱きしめていたような嬉しい気怠さだ。
「あぁ、旦那様……貴方を独り占めしたいよ」
赤い舌をペロリと出して眠りこけるジョルジュの唇を吸い上げた。


***


翌日、痺れるような気怠さを抱いて彼が離れから出て来た。
顔は恍惚としていたあまりにだらしない、そこにクリステルが現れた。彼はギョッとして、目を泳がせる。こんな早い時間に彼女がいたことに動揺を隠せない。

「や、やあ、眠れなかったのかい?籠城は御終いかな」
「ジョル……」
彼女は眠れない一夜を過ごして少しばかり気が立っていた。昨夜のことが脳裏に蘇ってきて苛立つ。あの美少年との関係を知りたいと切に願った。

「離れに何がありますの?いったい何を飼っていらっしゃるのかしら」
「飼っているだと!?失礼な!彼は素晴らしい子なんだ!」
「素晴らしい子ですって?」

言ってしまってから「しまった」と口を閉ざしたが後の祭りである。とうとう彼は降参して、隠していた事を吐露し始めた。

「彼はアンドレは……」





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄令嬢、不敵に笑いながら敬愛する伯爵の元へ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,920

旦那様に未練などありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:181

公女は祖国を隣国に売ることに決めました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:118

いらない婚約者は消えることにします

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:763

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:2,808

望んで離婚いたします

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,753pt お気に入り:823

お針子と勘違い令嬢

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:50

処理中です...