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アンドレ
しおりを挟む『私は何を見せられているの……』
夫と魔族の美少年が仲睦まじく寄り添っていて、互いにケーキを食べさせあっていた。彼女は苛立ちと呆れを綯交ぜにして無言でやり取りを見ていた。
「ほらぁ旦那様、クリームが口の端に……ペロリ」
「ふふ、擽ったいよ。キミもついているよ」
「旦那様とって~」
もうここまで来ると愛情のゲージはダダ下がり、マイナスになってしまった。愛していたのは幻想だったのだと思わずにいられない。クリステルは額に怒りの青筋をピクピクさせている、いつ爆発しても可笑しくない。
「おや、手が止っているよ。クリステルは苺ケーキが好きだったじゃないか」
「……たったいま大嫌いなりましたの」
「なんだって?可笑しいな料理人を替えようか」
そういう問題ではないと彼女は青筋をもう一本増やす、どうしてわからないのかとゲンナリした。すると少年は彼の身体に隠れて「ニヤリ」と厭らしく微笑んだ、絶妙に彼の視界に入らない箇所を知っている。
カッとなったクリステルはスックと立ち上がり、ヅカヅカと窓の方へ歩いて行きカーテンを開けてしまった。後ろの方で「ギャァ!」と声がしたがお構いなしだ。
「こんな暗がりにいては不健康ですわ、外の空気を吸わないといけません」
「何をするんだクリス!彼は陽の光に弱いのだぞ!」
「あらぁ?どうして、アレルギーでもあるのかしら。それとも魔族か何か?」
「う……いやそれは」
ジョルジュは彼が魔族の混血であるとは告白していない、わざわざ忌み嫌われる存在を明かすわけにはいかなかった。ただ、皮膚が弱く虚弱体質なのだとクリステルには言っていた。
「か、彼はアレルギー持ちなんだ、陽の光にあたると痒くなるんだ」
「へえ、そうなの。でも変ね彼から煙がでているじゃない。やはり魔族なのでは?」
「え」
家具の影に逃げ込んで縮こまるアンドレを見た、確かにブスブスと煙が立っていて皮膚が爛れていた。流石にそれを見たジョルジュは「ひぃ!」と声を上げてしまう。
「ああ……旦那様ァ……痛いです、助けて……」
「わ、わかった、すぐに……クリス、すぐにカーテンを閉めるんだ!さぁ早く!」
「ええ~?」
「お願いだ早く閉めてくれ!」
彼はアンドレを庇うように立ち塞がっていて少しでも陽が当たらないようにしている。だがクリステルは一向にカーテンを閉める気はなさそうだ。
「お願いジョル、ほんとうの事を教えて、彼は魔族なのでしょう?」
「ち、違う!決して違うぞ!」
押し問答えをしているうちにアンドレはバタリと倒れ込んだ。
「はっ、さっさと自分で閉めたら良かったのよ」
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