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出会い
しおりを挟むアンドレが倒れた後、彼は甲斐甲斐しく世話をしていた。余程、魔族であると知られたくないのか侍女にも執事にも世話をさせる気はないようだ。
「旦那様、痛いです。グスン……」
「うん、そうか。だが、大丈夫だぞ私は味方だからな」
魔族ゆえに傷痕もなく直ぐに完治していたが、アンドレはここぞとばかりに甘えている。大袈裟に痛がっては「良し良し」とジョルジュに慰められていた。
「さて、どうしたものかな。彼女にキミが心優しく穏やかな少年だと知らしめないと、でないと屋敷に置いてやれない」
「そんな!追い出さないで旦那様、ボクには身寄りがないんだ。ここを追い出されたら……」
「ああ、わかっているさ。そんな事にはならないよう配慮するよ」
「ありがとう旦那様、大好きだよ」
ガバリと起き上がってジョルジュに抱き着くアンドレはニタリと笑っている。そんな事など気が付かないジョルジュは「優しい子、きっと大丈夫さ」とデレデレだ。すっかり骨抜きにされた彼は目を覚ますことはないだろう。
美しい容姿を持つ魔族の彼は微弱に魅了魔法を使っている、そうとは知らないジョルジュは少しづつ浸食されていた。アンドレと出会った時からそれは彼を蝕んでいる。
***
出会ったきっかけは森の奥でのことだった、アンドレはついウッカリ陽の光を浴びてしまいグッタリしていた。ほんの僅か浴びただけでこのありさまだ。彼は獲物の兎を追ううちに狭い影に潜みこんで窮地に陥っていた。
ジリジリと迫る陽の光に身を縮み込ませていると彼に声をかける物好きがいた。
「どうしたんだい、そんな所で?ここは猟場だ危ないよ」
「え……人間!?ひぃ!寄るなあっちへ行け!」
怯えて縮こまるアンドレの姿を見て、彼はなんと劣情を抱いてしまった。恐ろしく美しい肢体を半裸で晒していたアンドレに見惚れた。それを目の当たりにして「なんて美しいんだ」と言った。
魔族は生まれながらにして人間を垂らし込む癖があり、微かに魅了の効果を発揮していた。
「その美しい鼻梁はなかなか無い、その目もキラキラとして堪らない。そして白い肉体……そそられる」
「え……まさか」
魅了に落ちていると知ったアンドレはこう持ち掛けた。
「ねぇ、貴方。ボクは血が欲しいんだ、その対価に信じられないほどの快楽をあげる。どう?」
「快楽……」
その時、大きく膨らんだ魅了魔法が彼を襲った。それは抗えないほどの大きさで、すっかりアンドレの虜になった。
彼はいきなりアンドレの唇を奪い何度も求めた。痺れるような快感が身体を巡る。
「いいよ、私の血を上げる。その代わり」
「ああ、良いともボクは愛の血を享受し、貴方には快感を与えてあげる、悦楽をともに共有しようじゃないか」
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