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独立篇

香ばし豚丼

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――とある休日の昼。



レオは猪豚のお裾分けがてら【木こりの家】へ食事に向かう。

ちゃっかり女子3人は付いてくるが「毎回驕らないからな」とレオに牽制されたが引かない。

例の金塊類だが貰えるのはもう少し先なので相変わらず貧乏侯爵のまま。





呼び鈴を鳴らせば、エプロンドレスのメリアお姉さんが満面の笑みで歓迎してくれる。

席ではなく当然のように厨房奥へ案内された。

どういうDNAなのか不思議なほど、グーズリーとメリアは似ていない。

同じなのは栗毛なのところだけである。





メリアは少し厳しい目になると。

「厨房へは手を洗って、これを着てください」と真っ白のエプロンとバンダナを全員に渡す。

飲食店は衛生が大事。





「メリアさん、猪豚を渡して食事したいだけなんだよ?」

「うふふ、兄がそれを許すとでも?」とても良い笑顔でレオの抗議をバッサリ。

客なんだけどな~とレオは愚痴る。





恐らく猪豚を持参したせいでメリアに火が付いたようだ。

メリアもパティシエール兼助手として厨房で働いている、ちなみに旦那さんは給仕係。

メリアは化粧をしていない為、一見地味に見えるが美人だ。



レオは密かに憧れている、人妻の魅力は罪だ。



「兄さん、レオさんが見えたわ。お肉のお裾分けですって」

「おう!?レオ師匠ちょっと待っててくれ!」

「師匠はやめてよ」

ベシャメルソースを混ぜる手を忙しなく動かし挨拶をくれる、とても忙しそうだ。



邪魔になるからとレオが退こうとするも「すぐ終わるから」と引き止める。

「とても良い肉ですね、こんなにたくさんありがとう」

「いえ、仕留めたら意外とデカくて食べてくれたら嬉しいです」



貴重なヒレまでお裾分けしてるレオに、女子達が何かを嗅ぎ取る。

なにか言いかけたフラの口を手で塞ぎ「野暮はやめましょ」とティルが微笑む。

圧を感じてコクコクと頷くフラ。



「季節は秋だが青い春だぜ」バリラがニヤニヤして見守る。

初な少年をベタな下世話で揶揄うことはしない。



だって絶対叶わない小さな恋心。

そのうち泡と消えてしまう。



***



ランチタイムが終わり店は仕込みと休憩で一旦店を閉じた。

賄いは猪豚にしようとグーズリーが言うのでレオが作らせてくれと頼む。

「醤油はあるよね、豚丼を作ろうと思うんだ」

「ぶたどん?聞かない料理だな、是非頼むよ師匠!」



先ずは薄切りロースを油で炒める。

フライパンから肉をよけ、砂糖をちょっと多めに焼き溶かす。

濃い飴色になるまで焦がして、醤油をジュッと垂らす。

かなり高温になったフライパンは醤油もほどよく焦がす。



「おお!香ばしいな、腹が鳴るぜ」

「ほんとねー、楽しみだわ」

兄妹は目を輝かせて待機している、ティル達もはじめて嗅ぐ匂いに驚く。



「焦がすと炭火で炙ったような風味がつくんだ」

「へぇ、面白いもんだ」

グーズリーはメモを取り感心する。



「俺はもっと焦がしたほうが好みだけど苦みが嫌な人もいるから」

「それは酒に合う風味だと思うぜ」

グーズリーが脱線するので、後方からメリアの怒気がたつ。

とうぶん禁酒だと言われ「勘弁して!」とグーズリーが嘆いた。



肉をフライパンに戻しすり下ろした大蒜と絡め最後に胡椒を一振り。

「甘辛タレの豚丼の完成だよ!」



「ご飯は?」とフラが突っ込んだ。
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