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獣王国篇
残り物の御馳走 揚げパン
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モフモフ天国を堪能したレオは、厨房の片隅に放置されたモノをみつけると楽しそうにあるものを作ろうとしていた。
残り物だという籠いっぱいのパンを傍らに置き、ナミナミと鍋に注いだ油の熱さをチェックしている。
「レオニード殿、こんな硬いパンをどうするつもりだ?」
尻尾をモフられ尽くされたビケットは、やや警戒しながらレオの調理を見学している。不自然に逆立ってしまった箇所を撫でつけながら小首を傾げている仕草が愛らしい。
「工夫しだいでご馳走に化けるんだよ、破棄しちゃうなんて勿体ない」
「ほほう?」
炙って食べるか、スープに浸すかでしか消費していないというアライグマ達は、興味深そうにレオの調理に注目している。
「とろとろのミルクシチューを付けて食べるのは美味しいけどね、毎回は飽きるでしょ?」
「うむ、確かにな……、しかも猫族文官共は気まぐれで少なめにパンを焼くと足りない事もあるのでなぁ。調整が難しいのだ」
山と積まれた前日のあまりものを見上げて、料理長ビケットは溜息を吐いた。
「気まぐれなところが猫は可愛いんだけどね、黒豹さんの尻尾も触ってみたい!」
「……博愛なのだなレオニード殿は、俺にはよくわからん」
多種族交流している獣王国ではあるが、歩み寄れない部分は未だに多いとビケットは言った。
「些細な諍いが続いた我が国だが、偉大なるセレータ王の先祖が見事に統率されたのだ!我らアライグマ族は軍門に下り忠誠を誓った最初の種族なのだ!一番の忠臣だ、次いでオオカミと犬族が王を慕っておる。その他の種族も忠誠を誓って平和にしておるぞ。反抗的なのは猿共くらいだな」
「なるほど、そして王様の為にご飯を作っているんだね?」
「うむ、我らは手先が器用であるからな!調理のほかに裁縫などに従事しておるのだ!」
ビケットは誇るように小さな胸を張って見せた、つい可愛くてレオは頭を撫でてしまう。
「や、やめるのだ!毛が飛び散るだろう!調理中は駄目なのだ!なんの為のコック帽だ!」
「ゴメンゴメン、ついね」
そんな合間に油が良い加減に温まった、レオは躊躇うことなく次々とパンを投入していく。
クロケット以外に油を使う事などないビケット達は驚嘆の声をあげた。
「だいじょうぶなのか?油臭いパンなど嫌だぞ!」
「ちゃんと香ばしく揚げて、油を切るから平気だよ。よし、一回目は砂糖だけにしようか」
揚げたてのパンを、レオは楽しそうに油切り用バッドへ並べていく。
「冷めないうちに砂糖をまぶせば揚げパンの出来上がり!簡単で美味しいんだから!」
レオは三角に畳んだキッチンペーパーに優しく包み差出す、ビケットは恐る恐る手を伸ばして受け取った。
『ふっふーん、アライグマが油と甘い物が好きなことは知ってるからな、絶対気に入るさ』
腹の内でそうほくそ笑み、彼を観察している。
「……ハグッ!……!?な、なんだこれは!?サクサクでフワフワで甘くて美味い!揚げただけなのに!ジャリジャリの砂糖が嫌な感じがしない!むしろ楽しい食感!」
料理長のビケットが絶賛してガツガツ食らいつく様を見た料理人たちは、我先と揚げパンに群がった。
こうしてレオは、警戒心の強いアライグマ族達の心を掌握したのだった。
「ふふ、次はココアをまぶそうかな?飽きたらパンプディングもいいなぁ♪」
残り物だという籠いっぱいのパンを傍らに置き、ナミナミと鍋に注いだ油の熱さをチェックしている。
「レオニード殿、こんな硬いパンをどうするつもりだ?」
尻尾をモフられ尽くされたビケットは、やや警戒しながらレオの調理を見学している。不自然に逆立ってしまった箇所を撫でつけながら小首を傾げている仕草が愛らしい。
「工夫しだいでご馳走に化けるんだよ、破棄しちゃうなんて勿体ない」
「ほほう?」
炙って食べるか、スープに浸すかでしか消費していないというアライグマ達は、興味深そうにレオの調理に注目している。
「とろとろのミルクシチューを付けて食べるのは美味しいけどね、毎回は飽きるでしょ?」
「うむ、確かにな……、しかも猫族文官共は気まぐれで少なめにパンを焼くと足りない事もあるのでなぁ。調整が難しいのだ」
山と積まれた前日のあまりものを見上げて、料理長ビケットは溜息を吐いた。
「気まぐれなところが猫は可愛いんだけどね、黒豹さんの尻尾も触ってみたい!」
「……博愛なのだなレオニード殿は、俺にはよくわからん」
多種族交流している獣王国ではあるが、歩み寄れない部分は未だに多いとビケットは言った。
「些細な諍いが続いた我が国だが、偉大なるセレータ王の先祖が見事に統率されたのだ!我らアライグマ族は軍門に下り忠誠を誓った最初の種族なのだ!一番の忠臣だ、次いでオオカミと犬族が王を慕っておる。その他の種族も忠誠を誓って平和にしておるぞ。反抗的なのは猿共くらいだな」
「なるほど、そして王様の為にご飯を作っているんだね?」
「うむ、我らは手先が器用であるからな!調理のほかに裁縫などに従事しておるのだ!」
ビケットは誇るように小さな胸を張って見せた、つい可愛くてレオは頭を撫でてしまう。
「や、やめるのだ!毛が飛び散るだろう!調理中は駄目なのだ!なんの為のコック帽だ!」
「ゴメンゴメン、ついね」
そんな合間に油が良い加減に温まった、レオは躊躇うことなく次々とパンを投入していく。
クロケット以外に油を使う事などないビケット達は驚嘆の声をあげた。
「だいじょうぶなのか?油臭いパンなど嫌だぞ!」
「ちゃんと香ばしく揚げて、油を切るから平気だよ。よし、一回目は砂糖だけにしようか」
揚げたてのパンを、レオは楽しそうに油切り用バッドへ並べていく。
「冷めないうちに砂糖をまぶせば揚げパンの出来上がり!簡単で美味しいんだから!」
レオは三角に畳んだキッチンペーパーに優しく包み差出す、ビケットは恐る恐る手を伸ばして受け取った。
『ふっふーん、アライグマが油と甘い物が好きなことは知ってるからな、絶対気に入るさ』
腹の内でそうほくそ笑み、彼を観察している。
「……ハグッ!……!?な、なんだこれは!?サクサクでフワフワで甘くて美味い!揚げただけなのに!ジャリジャリの砂糖が嫌な感じがしない!むしろ楽しい食感!」
料理長のビケットが絶賛してガツガツ食らいつく様を見た料理人たちは、我先と揚げパンに群がった。
こうしてレオは、警戒心の強いアライグマ族達の心を掌握したのだった。
「ふふ、次はココアをまぶそうかな?飽きたらパンプディングもいいなぁ♪」
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