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フェインゼロス帝国篇
帰国、そして新たな……
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厳しい冬が去り、雪割草が顔を出した頃。
獣王国でのあまりに濃い日々を振り返りながら、レオ一行は馬車に揺られていた。
フラウットの提案により、豪華な族長の馬車を借りたまま国境を超えたところだ。
「ほんとに良かったの?婆バさんに悪い気がする」
「なに言ってんの、素直に戻ったら夏まで引き止められるよぉ?」
さすがにそれは困るレオは口を閉ざした。
「年が明けて新たに冒険者PT再始動だし、戻ったら金塊のご褒美も待ってるからね。安泰な年にしたいよ」
「金塊ってあの業突く男爵の?」
バリラが眠い目を擦りながら聞いてきた。
「そうだよ、年明けという約束だったからね。新年だし細やかなお祝いをしよう、落ち着いたら屋敷の修繕だ」
「そっか、ギルドの繁忙期は初夏だもんな」
「まずは掃除ですわね、きっと埃の山ですわ」
「浄化作業がんばろうねぇ、ティル」
「私も混ぜて!さすがに犬小屋は勘弁してご主人様!」
「なにやら賑やかな屋敷のようですねェ。クフフフッ」
帰国に向けてそれぞれが新たな年に期待し、心を躍らせている、のだが……?
「なんか、ハスキーボイスが混ざってた気がするんだが……」
レオが仲間たちを見回して、眉間に皺を作った。
「バリラ、ティル、フラ、ジェイラ。うん、いつメンだよな」
「いつメン!ご主人様!わたしを仲間と認識してくれたのね!やったぁ!」
ジェイラが大袈裟に喜び飛び跳ねるものだから、馬車が若干軋んだ。
「落ち着けバカペット!借り物の馬車が壊れたらコトだろうが!」
「ごめーん!だって嬉しいんだもん!」
「あはははははっ!」「ふふふふ」「キャハハハ」「クフフフッ」
そのやり取りを皆は楽しそうに笑いあった。
「ちょっと待てい!やっぱりなんかいる!聞き慣れないハスキーボイスが聞こえたぞコラッ!」
「そ、そういえば、そうですわね」
馬車内を全員で見回したが違和感がわからない、馭者さんかと疑ったが初老のオジサンが出す声ではない。
ところで馭者さんは他国へ来てよかったのだろうか?
やや広めの馬車をくまなく探したが、原因の元がわからない。
「幻聴ってことにしとくか…………なーんて行くか!ボケェ!ジェイラ!違和感を捜索しろ!」
「はーい!まっかせて!」
彼女の特技であるスキルを使い車内に意識を集中した、そして。
……
…… ……
「そこお!窓枠の所になんかいたー!」
「「「「えええ!?」」」」
「あらあら、バレちゃいましたァ。クフフフフッ上手く擬態したつもりでしたが」
窓枠のすぐ横にあった真っ黒な把手がグニャリと歪み、床へデロリと落ちてきた。
人型になったそれは疎開先で会った蝙蝠男だった。
「どーもォ、レオ殿。ちょっとぶりですねェ!モルティガですゥ覚えてますか?」
「近い近い近い!」
正体を現すやいなや、レオの至近距離へやってきて手を握るモルティガ。
女子達はポカンとその変態紳士を眺めている。
「これは失礼、あぁ誤解なく婦女子の皆様。男色の趣味はございませんクフフッ。レオ殿は美味しそうな匂いがするものですから、つい捕食したくなるのですゥ♪」
それはそれで恐ろしいと一同の顔が強張った。
「レオをた、たたた食べるの?」
フラが青い顔をして魔法杖を構えた、いまにも氷塊を飛ばして攻撃しそうだ。
「いやいや、狐のお嬢さん。そこまで貪欲ではありませんよォ。飢餓に陥らなけらば噛みつきません」
女子たちが≪ぎゃあああああ!吸血鬼!≫と大騒ぎした。
馭者台から「どうかしましたか?」と心配そうな声が聞こえた。
なんでもないとレオが恐縮して返事した。
「皆、落ち着け!モルなんとかさんも煽らないで!」
「クフゥ、すみません。つい遊び心に火が尽きましてェクフフフフッ」
「それで、なんの用でしたか?国境越えてますけど」
「あぁ、ウッカリウッカリ!切実なお願いがございまして参じましたァ」
クネクネと意味不明な動きをとって、勿体ぶる蝙蝠男に一同は視線を集中した。
「是非ぜひぃ、皆様の冒険者パーティに加えて頂きたいのですゥ」
「あぎゃ!?」
獣王国でのあまりに濃い日々を振り返りながら、レオ一行は馬車に揺られていた。
フラウットの提案により、豪華な族長の馬車を借りたまま国境を超えたところだ。
「ほんとに良かったの?婆バさんに悪い気がする」
「なに言ってんの、素直に戻ったら夏まで引き止められるよぉ?」
さすがにそれは困るレオは口を閉ざした。
「年が明けて新たに冒険者PT再始動だし、戻ったら金塊のご褒美も待ってるからね。安泰な年にしたいよ」
「金塊ってあの業突く男爵の?」
バリラが眠い目を擦りながら聞いてきた。
「そうだよ、年明けという約束だったからね。新年だし細やかなお祝いをしよう、落ち着いたら屋敷の修繕だ」
「そっか、ギルドの繁忙期は初夏だもんな」
「まずは掃除ですわね、きっと埃の山ですわ」
「浄化作業がんばろうねぇ、ティル」
「私も混ぜて!さすがに犬小屋は勘弁してご主人様!」
「なにやら賑やかな屋敷のようですねェ。クフフフッ」
帰国に向けてそれぞれが新たな年に期待し、心を躍らせている、のだが……?
「なんか、ハスキーボイスが混ざってた気がするんだが……」
レオが仲間たちを見回して、眉間に皺を作った。
「バリラ、ティル、フラ、ジェイラ。うん、いつメンだよな」
「いつメン!ご主人様!わたしを仲間と認識してくれたのね!やったぁ!」
ジェイラが大袈裟に喜び飛び跳ねるものだから、馬車が若干軋んだ。
「落ち着けバカペット!借り物の馬車が壊れたらコトだろうが!」
「ごめーん!だって嬉しいんだもん!」
「あはははははっ!」「ふふふふ」「キャハハハ」「クフフフッ」
そのやり取りを皆は楽しそうに笑いあった。
「ちょっと待てい!やっぱりなんかいる!聞き慣れないハスキーボイスが聞こえたぞコラッ!」
「そ、そういえば、そうですわね」
馬車内を全員で見回したが違和感がわからない、馭者さんかと疑ったが初老のオジサンが出す声ではない。
ところで馭者さんは他国へ来てよかったのだろうか?
やや広めの馬車をくまなく探したが、原因の元がわからない。
「幻聴ってことにしとくか…………なーんて行くか!ボケェ!ジェイラ!違和感を捜索しろ!」
「はーい!まっかせて!」
彼女の特技であるスキルを使い車内に意識を集中した、そして。
……
…… ……
「そこお!窓枠の所になんかいたー!」
「「「「えええ!?」」」」
「あらあら、バレちゃいましたァ。クフフフフッ上手く擬態したつもりでしたが」
窓枠のすぐ横にあった真っ黒な把手がグニャリと歪み、床へデロリと落ちてきた。
人型になったそれは疎開先で会った蝙蝠男だった。
「どーもォ、レオ殿。ちょっとぶりですねェ!モルティガですゥ覚えてますか?」
「近い近い近い!」
正体を現すやいなや、レオの至近距離へやってきて手を握るモルティガ。
女子達はポカンとその変態紳士を眺めている。
「これは失礼、あぁ誤解なく婦女子の皆様。男色の趣味はございませんクフフッ。レオ殿は美味しそうな匂いがするものですから、つい捕食したくなるのですゥ♪」
それはそれで恐ろしいと一同の顔が強張った。
「レオをた、たたた食べるの?」
フラが青い顔をして魔法杖を構えた、いまにも氷塊を飛ばして攻撃しそうだ。
「いやいや、狐のお嬢さん。そこまで貪欲ではありませんよォ。飢餓に陥らなけらば噛みつきません」
女子たちが≪ぎゃあああああ!吸血鬼!≫と大騒ぎした。
馭者台から「どうかしましたか?」と心配そうな声が聞こえた。
なんでもないとレオが恐縮して返事した。
「皆、落ち着け!モルなんとかさんも煽らないで!」
「クフゥ、すみません。つい遊び心に火が尽きましてェクフフフフッ」
「それで、なんの用でしたか?国境越えてますけど」
「あぁ、ウッカリウッカリ!切実なお願いがございまして参じましたァ」
クネクネと意味不明な動きをとって、勿体ぶる蝙蝠男に一同は視線を集中した。
「是非ぜひぃ、皆様の冒険者パーティに加えて頂きたいのですゥ」
「あぎゃ!?」
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