公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
119 / 172
トラブルプランツ スタンピード篇

閑話 獅子王とレオの内緒話

しおりを挟む
「なぜ俺とジャルバを引き合わせたんですか?」

レオは程よく冷めてサクサクになったフレンチクルーラーを摘まみながら王に伺う。
獅子王も同じくドーナツを鷲掴んで豪快に食べる。


「ジャルバとお前は異質だからだ、大袈裟に言うなら世界の異物だな、今まさにその異質な物を食べているわけだがな。余は知りたい、お前達はなんだ?真実を隠さず申せ」

獅子王の指摘にレオは口の中のものを吹き出しそうになる。
「げ、ゲホッ……説明しても信じる人はいないと思ってました」
「ふむ、余自信も仮説をたてたが……あり得んと思った」


黄金の鬣を僅かに振るわせて獅子王はじっとレオが白状するのを待つ。
温くなった茶を飲み干して「ふー」と息を吐いてからレオは告白をする。


「パラレルワールドというのを御存じという前提で話します。俺とジャルバは同郷です、前世でですがね。俺は転生して、ジャルバは魂だけこの世界に来たのです。似て非なるこの異世界に」

レオの目を見つめたまま聞き入る獅子王は、真実を見極めようとしているようだ。

「俺達は知識というものを持ったままこちらに来ました、かつての世界はこちらとは全く違います。本来なら記憶を持たずに生まれるはずでしょうが、助けられた部分は大きいです」

「して、前世の世界とやらは”ここ”とどう違う?」


「はい、まずは魔法などというものは一切ありません。その代わりなのか文明というものが恐ろしく発達しています、金属とカーボンの箱が空を飛び、おなじく金属性の箱が馬車より早く走ります、巨大で長い箱がいくつも連なって大勢の人間を乗せて恐ろしい速度で移動するのです。」

レオは、飛行機や自動車などの名称はいきなり理解できないだろうと思いザックリ説明した。
それでも追い付かないと見える獅子王は「なんの話だ」と頭を傾げていた。

「金属の箱が空を飛ぶ?あんな重いものがどうやって……それこそ魔法ではないのか」
「まぁ、俺も技術面の知識はさすがに持ってないので、魔法にかわる動力があると思っていただければ」


獅子王は「うぬう」と唸るとドラゴンが箱を運ぶようなものかと誤解する。
”やっぱり伝わらない”と思ったレオはただ苦笑いするばかりだった。


「その顔を見るに余の発言は見当違いなのだろうな……」
「失礼ながら、ぜんぜん違いますね。燃料を燃やして飛んだり、走ったりという感じなので」

それを聞いた王はさらに混乱して「燃やしたら大惨事だ!」と言った。

レオは説明が下手な己を悔しく恥じた。


「おそらくジャルバの方が上手く説明できると思いますよ、彼は頭が良いから」
「そうか、いつか島を訪ねる時にでも聞くとしよう」


それから獅子王は記憶持ちのレオを苦しんでいないかと労わる。

「うーん、たしかに前世の世界は便利だし、楽しいことが溢れてました。でも、同時に発展しすぎた分の撥ね返りも大きかったですよ、自然が壊れて気候が変動し、温暖化という影響で海抜が低い島国は海に沈みいつ消滅するかわかりません。いまの俺はこの世界に生まれ変われて良かったと思ってます」



「なるほど、手にあまる力は破滅を迎えるのだな。まるでジャルバではないか。結局あやつはどうして謀反を起こしたのかハッキリせなんだ。世界統一など成せるわけもないのに」

それを聞いたレオは躊躇い気味に話す。

「これは憶測ですが、姿形を変化させる薬を開発してた彼だけど倫理に反している技術だと恐れてたはずです。無謀な国崩しをしたのは獅子王様に止めて欲しかったのではと俺は思います。」

「倫理かなるほど……」
「はい、かつての世界には遺伝子操作という禁忌に近い技術がありました。治癒魔法なんて便利なものはありませんから医術というもので人間は病に勝とうとしていました。その最先端が遺伝子工学で」


「まてまて!理解が追いつかん!簡単に頼む!」
「あ、すみません。えーとジャルバは猿になってしまった己を嫌悪してました、それが今回の内乱のきっかけです。薬の危険性と禁忌な技術だと理解してたんですよ。結果ジレンマが彼を凶行に走らせたのかと」


その辺りは密偵モルティガに聞いていた獅子王も肯いた。

「そうか、余を頼ってくれたのか、やり方は大分間違っていたが……ジャルバお前は真面目過ぎておかしくなってしまったのかもしれんな。バカ者が……」


”阿呆”
”馬鹿者”
そう罵り合う二人は似た者同士なのだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...