公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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戦火の先に(覚醒)篇

足掻く皇帝

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「そもそも、俺達を呼ぶまでもなくモルティガが種明かししちゃえば良かったろ?」
レオニードはもっともな意見を彼にぶつけたのだが、何事も事象があるから面白いのですよ、と彼はヘラリと言った。


焼け爛れた痕跡を残す大地の向こう側には磔にされた女性の姿と、その横で不敵に笑うヴェラアズ皇帝の姿があった。10分ほど前にモルティガに拉致られてきたレオニードは戦場を目の当たりしているところだ。
「国同士の戦いというのはもっと一触即発のような緊張感があるのかと思ってた」
「はい、実際はこんなものですよォ、互いに命が惜しいですからね。忍耐強さと物資を多く持つものが有利です」

下手に仕掛けたら相手の思う壺なのだとモルティガは言う。
前世でも戦争というものを知らないレオニードは、どうにも受け入れ難いと思うのだ。攻めてきた方が不利に陥ることが多いらしい。

「そりゃま……敵地に身を投じるわけだし、当たり前か。スポーツもそうだよな」
ブツブツと独り言つレオニードの元に少し遅れてバリラとフラウット、ジェイラが到着した、短距離とはいえ転移魔法で飛ばされたらしくバリラの顔色は良くない。

「うっぷ……伝令で戦況はこちらが有利と聞いたけど」
「うん、そうなんだけどね。完膚なきまで相手の矜持をズタボロにしろと上がね」

レオニードは物見台に到着したらしいガルディを目線で指して溜息をつく。
ガルディ王は一見軽装で戦地にやってきた、防御がほとんどなさそうな装いだが魔法攻撃を弾く特別な仕様軍服だという。肌着は炭素繊維製で簡単には刃を通さない、これは獣王国からの支援のひとつだ。

この戦場において帝国出身のバリラは微妙な立ち位置なのだが、心情的にはテトラの味方をするつもりだと言った。
「ふん、都合が悪い者を排除して威張り腐る皇帝一家には辟易してたからね。ちなみに実家は穏健貴族派だから敵みたいなもんだよ、これを機に権威を完全に失墜してくれたら良い」
それを聞いたレオニードは安堵の顔をして、加減なく暴れられると言った。

「もっとも大包丁の出番はなさそうだけど」

相手がどう出るかテトラビス側ずっと静観していたが、業を煮やした皇帝が自ら動く。
腰に佩いた長剣を抜き、磔にされた銀髪の女性に切っ先を向けて宣う。

「テトラの侯爵にして冒険者よこれを見ておるのだろう?貴殿の親しき仲間がここにおる、助けたくば名乗り出るが良い!」

短慮な彼は声高に敵軍の方へ恫喝した、だが集結した1万の兵は物見遊山の態度を崩さず全体が冷淡な様子だった。
皇帝は駆け引きのつもりなのだろうとテトラの連中を見下す。

「脅しに屈しないというつもりかね?いいだろう、我らの本気を目の当たりにして後悔するがいい!」
青みがかった長剣が先ずは銀髪を斬り落とした、アシンメトリーになった御髪が冷風に晒され惨めに映る。
それから彼女のドレスが裂かれて、柔肌が露わになった。

これには女性陣が軽蔑の眼差しを皇帝に向ける。

「まだコケ脅しと思っているようだね、ふん、では次は……」
そこで、物見台からガルディ王が口を開き、愚行に走ろうとする皇帝に声をかけた。

「ヴェラアズ殿、ショーを楽しんでいるところ水を注して済まないが、そもそも交渉材料としてその人物は弱いのではないかね?聞けばその女性は貴殿の妹君なのだろう、皇帝家から追い出されたことは知っているし冒険者として我が国に腰を下ろしているのも聞いた、しかし、だからなんだ?という感情しかでない。我が国にとってなんの脅威にもならんよ」

ガルディは国の王として至極もっともな言葉を紡ぐ、場に居た従者達から失笑が漏れる。
だが、皇帝は顔色を変えず人質に価値があることを続けた。

「テトラの王よ、なんでも熟知していると言うのだな、愚かな。我らもレオニードとかいう者が貴殿の親しいものだと知っているのだよ、その者の冒険者仲間に愚妹が加わり、ともに行動してると把握済みなのだよ。近頃は家族同然となって同衾までしてるそうな」

真実はこちらこそが握っていると憎らしくほくそ笑む皇帝である。

「えぇ~同衾ってやらしいなご主人様、ムッツリスケベ」
「んなっ!同衾しとらんわ!」
「シッ、今はどうでもいいでしょうが」
抗議の声をあげて名乗り出そうになったレオニードをバリラが引き止めた。フラウットは飽きてしまい「話が長い」と言ってクッキーを噛みだす始末。

慌てて平静を装うレオニード達だったが、僅かな動揺を見せた一団を皇帝は見逃さなかった。
「そこの者!よく見れば密偵が寄越した人相書きに酷似しておるな、貴様がレオニードなるものだな!」
剣の先で定められ名指しされたレオニードは観念して肩を竦めながら群衆から前へ出た。

「はいはい、レオニード・ルヴェフル。しがない貧乏侯爵でーす」


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