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とある屋敷を目の前にして、アネリは尻込みをしていた。
食事に誘われご馳走になった後に求婚され、呆けている間に馬車に乗せられて今ここに立つ。
「む、無理……ここって貴族街ですよね!?どう見ても貴族の城ですよね!」
「アネリ、お願いだ帰らないで!俺は次男だから、兄が家督を継げば平民になる身だよ!」
でも、とアネリは横に頭を振るばかりで進展しない。
厳めしい門前で男女が引いたり押し返したりを繰り返している。
そんな二人を困った顔で見守る門兵二人は、密かに執事に連絡を入れていた。
半泣きのアネリを宥めすかし、無理矢理屋敷へ招き入れた。
「酷いです……平民の私はどうしたら……」
「ご、ごめん、強引過ぎたね。もしキミを傷つけるようなことがあれば親とて敵に回す覚悟だよ。つまり両親に会ってほしいだけなんだ」
結局応接室に通されてしまったアネリ、借家の5倍はあろうかという部屋に身を縮めて蹲っていた。
ソファへ座って欲しいとディーンと侍女が何度も言うが、一向に動こうとしない。
委縮してしまった彼女をただ宥め続けるディーンである。
「お願い帰らせて!ここは私には身の置き場がないの!」
とうとうハラハラと泣き出してしまったアネリだ。
「ま、参ったな……ごめんね泣かせるつもりはなかったんだ、仕方ない今日のところは」
アネリを抱きかかえて馬車へ戻ろうとした時だ。
「なんの騒ぎですか」
ちょっと冷たい声が彼らに浴びせられた。
「は、母上……騒がせて申し訳ありません、客人が体調を崩されたので送るところです」
アネリに負担が及ばないよう当たり障りなく言い訳をしたディーン。
「客人?具合が悪いのなら休んでいただくべきでしょう、男ってどうして気が回らない愚図なのかしら」
ディーンの母グレイスは侍女らに指示をだして客間へお通ししなさいと言う。
「待ってください母上、彼女はこの家自体に神経をすり減らしているのです」
「どういうことですか?」
扇をパシンッと鳴らして息子を睨む。
その様子に益々精神状態が悪化したアネリは気絶したのであった。
***
その後、豪華な客間で目を覚ましたアネリは悲鳴を上げた。
侍女たちが大慌てでディーンを呼び、なんとか落ち着いて貰おうと冷たいハーブティーやマッサージを施す。
「アネリ!落ち着いて!」
「帰りたいと言ったのに~ディーンのバカ!大嫌い!触らないで!」
「大嫌い……?」
嫌われてしまったと蒼白になったディーンとすっかり臍を曲げてしまったアネリ。
そこへ再び母上登場。
「ディーン、貴方は少し離れなさい。ごめんなさいねお嬢さん、事情は聞いたわ、強引に嫁にしようだなんて愚息が申し訳ないことをしましたわ」
儚げな美人が腰を折ってアネリに謝罪した。
「いえ!あのすっかり御厄介になってしまい……か、帰っていいですか!?明日は仕事がありますので!」
「明日はもう今日になってますのよ、貴女は一晩ここで寝てたのですから」
「えええ!?どうしよう!いま何時かしら!クビになっちゃう!」
またもパニックに陥ったアネリに「だいじょうぶよ」と言って婦人が手配をしろと執事に指示をだした。
過度の緊張によってアネリがおかしくなってしまったことを婦人は何度も詫びる。
「私こそ取り乱してすみませんでした、とにかく帰ります」
「あらまぁ……では弁解だけさせてね、私は貴女を身分差で貶めるつもりはないわ。バカ息子も同じよ、だからね嫌わないでほしいの。お願いします」
「お、奥様そんな!たかが平民などに頭を下げないでください!なんなら殺してください!」
「ぷ!いやだ貴族はそこまで横暴じゃないわよー。やーねホホホホッ!ましてや未来の娘に無体などしませんよ」
砕けた物言いをする婦人にアネリは漸く安堵の溜息を吐いた。
「ん?未来の娘?」
食事に誘われご馳走になった後に求婚され、呆けている間に馬車に乗せられて今ここに立つ。
「む、無理……ここって貴族街ですよね!?どう見ても貴族の城ですよね!」
「アネリ、お願いだ帰らないで!俺は次男だから、兄が家督を継げば平民になる身だよ!」
でも、とアネリは横に頭を振るばかりで進展しない。
厳めしい門前で男女が引いたり押し返したりを繰り返している。
そんな二人を困った顔で見守る門兵二人は、密かに執事に連絡を入れていた。
半泣きのアネリを宥めすかし、無理矢理屋敷へ招き入れた。
「酷いです……平民の私はどうしたら……」
「ご、ごめん、強引過ぎたね。もしキミを傷つけるようなことがあれば親とて敵に回す覚悟だよ。つまり両親に会ってほしいだけなんだ」
結局応接室に通されてしまったアネリ、借家の5倍はあろうかという部屋に身を縮めて蹲っていた。
ソファへ座って欲しいとディーンと侍女が何度も言うが、一向に動こうとしない。
委縮してしまった彼女をただ宥め続けるディーンである。
「お願い帰らせて!ここは私には身の置き場がないの!」
とうとうハラハラと泣き出してしまったアネリだ。
「ま、参ったな……ごめんね泣かせるつもりはなかったんだ、仕方ない今日のところは」
アネリを抱きかかえて馬車へ戻ろうとした時だ。
「なんの騒ぎですか」
ちょっと冷たい声が彼らに浴びせられた。
「は、母上……騒がせて申し訳ありません、客人が体調を崩されたので送るところです」
アネリに負担が及ばないよう当たり障りなく言い訳をしたディーン。
「客人?具合が悪いのなら休んでいただくべきでしょう、男ってどうして気が回らない愚図なのかしら」
ディーンの母グレイスは侍女らに指示をだして客間へお通ししなさいと言う。
「待ってください母上、彼女はこの家自体に神経をすり減らしているのです」
「どういうことですか?」
扇をパシンッと鳴らして息子を睨む。
その様子に益々精神状態が悪化したアネリは気絶したのであった。
***
その後、豪華な客間で目を覚ましたアネリは悲鳴を上げた。
侍女たちが大慌てでディーンを呼び、なんとか落ち着いて貰おうと冷たいハーブティーやマッサージを施す。
「アネリ!落ち着いて!」
「帰りたいと言ったのに~ディーンのバカ!大嫌い!触らないで!」
「大嫌い……?」
嫌われてしまったと蒼白になったディーンとすっかり臍を曲げてしまったアネリ。
そこへ再び母上登場。
「ディーン、貴方は少し離れなさい。ごめんなさいねお嬢さん、事情は聞いたわ、強引に嫁にしようだなんて愚息が申し訳ないことをしましたわ」
儚げな美人が腰を折ってアネリに謝罪した。
「いえ!あのすっかり御厄介になってしまい……か、帰っていいですか!?明日は仕事がありますので!」
「明日はもう今日になってますのよ、貴女は一晩ここで寝てたのですから」
「えええ!?どうしよう!いま何時かしら!クビになっちゃう!」
またもパニックに陥ったアネリに「だいじょうぶよ」と言って婦人が手配をしろと執事に指示をだした。
過度の緊張によってアネリがおかしくなってしまったことを婦人は何度も詫びる。
「私こそ取り乱してすみませんでした、とにかく帰ります」
「あらまぁ……では弁解だけさせてね、私は貴女を身分差で貶めるつもりはないわ。バカ息子も同じよ、だからね嫌わないでほしいの。お願いします」
「お、奥様そんな!たかが平民などに頭を下げないでください!なんなら殺してください!」
「ぷ!いやだ貴族はそこまで横暴じゃないわよー。やーねホホホホッ!ましてや未来の娘に無体などしませんよ」
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「ん?未来の娘?」
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