8 / 12
慈善活動
しおりを挟む
あれから数日後、王女たちは教会が運営する孤児院へ慰問に訪れていた。
年長組には刺しゅう入りハンカチと靴下、小さい子らには積み木とヌイグルミが配られた。残った物はバザーへ出される。
「さぁ皆さん、きょうは美味しいクッキーとヌガーがありますよ」
王女が率先して二列に並ぶよう指示していた、ナタリアは補助をしていて幼児たちが転んで泣いたりするのを慰めている。
「うぇえええ!わぁあん」
「はいはい、大丈夫ですよ~転んでビックリしたのよね。怪我はないから安心してね」
言葉の覚束ない幼い子をナタリアは優しく抱きしめてあやしている。
それを少し離れた場所で愛しいものを見るような視線を送るステファンの姿があった。彼はクッキーの味に惚れただけではなく彼女自身にも興味があるようだ。
「……王子殿下、そのように注視されると居心地が悪いです。背に穴が空いたらどうするのですか?」
「背に穴か?そうだな責任はとるよ、嫁に貰ってあげる。いいや来てほしい!」
「お戯れを」
冗談だと軽く流された王子は眉をハチの字にして「本気なのに」と悄気るのだった。
一目惚れなどアテにならないと、身をもって知っているナタリアは素っ気なく彼のアプローチをあしらっていた。
「うふ、面白いものが見れたわ。今月の慈善活動は楽しくなりそうね」
王女と友人達は彼らの様子を伺ってコロコロと笑った。彼女らの侍女たちも「恋とは良いものですわ」と頬を染める。異国の王子と恋に落ちるなど夢物語のようだと囃すのであった。
「もう、好き勝手に言って下さるわ!」
ナタリアは玩具にされて少々拗ねてしまうが、どこへ行くにも王子が着いてくるものだから居たたまれない。
付かず離れずな二人を見ていた子供たちは「お兄さんたち恋人同士なの?」と無邪気な質問を投げて来る。
大慌てで否定するナタリアだが、水を得た魚の如く王子が生き生きと「そうなりたいんだ!どうしたら良い?」といい笑顔で飛びつく。
「おやめ下さい殿下、純朴な子供たちが誤解します」
「ええ?冷たいな~私の事はステファンと呼んでよ!ねぇナタリア?」
「呼びません!そんな気易い……」
そんなやり取りを観察していた童女が「チューしたらきっと仲良くなるよ」と揶揄ってきた。どこで知ったやらおませな子達が「チューチュー」と騒ぎだす。
「んまっ!?そのような事を……ど、どこで覚えるんですか」
「えっとね、寄付して貰った御本に王子と王女がチューして結婚する話があったの!」
「な、なんてこと」
子供だからと侮れないとナタリアは頭を抱え、王子の方はなんとか構って貰おうと周囲をうろつく。
「ねえねえナタリア。チューしようか?仲良くなれるらしいよ」
「なっ!!!!!」
赤くなったり青くなったり忙しいナタリアの顔色を見て「飽きないなぁ」とステファン王子は楽しそうに微笑む。
こうしてヴァヘナの使節団が国交の為の会議と条約が締結するまでの約一か月間、ステファンの求愛は続くのである。
年長組には刺しゅう入りハンカチと靴下、小さい子らには積み木とヌイグルミが配られた。残った物はバザーへ出される。
「さぁ皆さん、きょうは美味しいクッキーとヌガーがありますよ」
王女が率先して二列に並ぶよう指示していた、ナタリアは補助をしていて幼児たちが転んで泣いたりするのを慰めている。
「うぇえええ!わぁあん」
「はいはい、大丈夫ですよ~転んでビックリしたのよね。怪我はないから安心してね」
言葉の覚束ない幼い子をナタリアは優しく抱きしめてあやしている。
それを少し離れた場所で愛しいものを見るような視線を送るステファンの姿があった。彼はクッキーの味に惚れただけではなく彼女自身にも興味があるようだ。
「……王子殿下、そのように注視されると居心地が悪いです。背に穴が空いたらどうするのですか?」
「背に穴か?そうだな責任はとるよ、嫁に貰ってあげる。いいや来てほしい!」
「お戯れを」
冗談だと軽く流された王子は眉をハチの字にして「本気なのに」と悄気るのだった。
一目惚れなどアテにならないと、身をもって知っているナタリアは素っ気なく彼のアプローチをあしらっていた。
「うふ、面白いものが見れたわ。今月の慈善活動は楽しくなりそうね」
王女と友人達は彼らの様子を伺ってコロコロと笑った。彼女らの侍女たちも「恋とは良いものですわ」と頬を染める。異国の王子と恋に落ちるなど夢物語のようだと囃すのであった。
「もう、好き勝手に言って下さるわ!」
ナタリアは玩具にされて少々拗ねてしまうが、どこへ行くにも王子が着いてくるものだから居たたまれない。
付かず離れずな二人を見ていた子供たちは「お兄さんたち恋人同士なの?」と無邪気な質問を投げて来る。
大慌てで否定するナタリアだが、水を得た魚の如く王子が生き生きと「そうなりたいんだ!どうしたら良い?」といい笑顔で飛びつく。
「おやめ下さい殿下、純朴な子供たちが誤解します」
「ええ?冷たいな~私の事はステファンと呼んでよ!ねぇナタリア?」
「呼びません!そんな気易い……」
そんなやり取りを観察していた童女が「チューしたらきっと仲良くなるよ」と揶揄ってきた。どこで知ったやらおませな子達が「チューチュー」と騒ぎだす。
「んまっ!?そのような事を……ど、どこで覚えるんですか」
「えっとね、寄付して貰った御本に王子と王女がチューして結婚する話があったの!」
「な、なんてこと」
子供だからと侮れないとナタリアは頭を抱え、王子の方はなんとか構って貰おうと周囲をうろつく。
「ねえねえナタリア。チューしようか?仲良くなれるらしいよ」
「なっ!!!!!」
赤くなったり青くなったり忙しいナタリアの顔色を見て「飽きないなぁ」とステファン王子は楽しそうに微笑む。
こうしてヴァヘナの使節団が国交の為の会議と条約が締結するまでの約一か月間、ステファンの求愛は続くのである。
57
あなたにおすすめの小説
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
公爵令嬢のひとりごと
鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
破滅は皆さんご一緒に?
しゃーりん
恋愛
帰宅途中、何者かに連れ去られたサラシュ。
そのことを知った婚約者ボーデンは夜会の最中に婚約破棄を言い渡す。
ボーデンのことは嫌いだが、婚約者として我慢をしてきた。
しかし、あまりの言い草に我慢することがアホらしくなった。
この場でボーデンの所業を暴露して周りも一緒に破滅してもらいましょう。
自分も破滅覚悟で静かにキレた令嬢のお話です。
絵姿
金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。
それなのに……。
独自の異世界の緩いお話です。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※AIイラスト使用
※「なろう」にも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる