完結 弄ぶのも大概に

音爽(ネソウ)

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慈善活動

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あれから数日後、王女たちは教会が運営する孤児院へ慰問に訪れていた。
年長組には刺しゅう入りハンカチと靴下、小さい子らには積み木とヌイグルミが配られた。残った物はバザーへ出される。
「さぁ皆さん、きょうは美味しいクッキーとヌガーがありますよ」
王女が率先して二列に並ぶよう指示していた、ナタリアは補助をしていて幼児たちが転んで泣いたりするのを慰めている。
「うぇえええ!わぁあん」
「はいはい、大丈夫ですよ~転んでビックリしたのよね。怪我はないから安心してね」
言葉の覚束ない幼い子をナタリアは優しく抱きしめてあやしている。
それを少し離れた場所で愛しいものを見るような視線を送るステファンの姿があった。彼はクッキーの味に惚れただけではなく彼女自身にも興味があるようだ。

「……王子殿下、そのように注視されると居心地が悪いです。背に穴が空いたらどうするのですか?」
「背に穴か?そうだな責任はとるよ、嫁に貰ってあげる。いいや来てほしい!」
「お戯れを」
冗談だと軽く流された王子は眉をハチの字にして「本気なのに」と悄気るのだった。
一目惚れなどアテにならないと、身をもって知っているナタリアは素っ気なく彼のアプローチをあしらっていた。

「うふ、面白いものが見れたわ。今月の慈善活動は楽しくなりそうね」
王女と友人達は彼らの様子を伺ってコロコロと笑った。彼女らの侍女たちも「恋とは良いものですわ」と頬を染める。異国の王子と恋に落ちるなど夢物語のようだと囃すのであった。
「もう、好き勝手に言って下さるわ!」
ナタリアは玩具にされて少々拗ねてしまうが、どこへ行くにも王子が着いてくるものだから居たたまれない。

付かず離れずな二人を見ていた子供たちは「お兄さんたち恋人同士なの?」と無邪気な質問を投げて来る。
大慌てで否定するナタリアだが、水を得た魚の如く王子が生き生きと「そうなりたいんだ!どうしたら良い?」といい笑顔で飛びつく。
「おやめ下さい殿下、純朴な子供たちが誤解します」
「ええ?冷たいな~私の事はステファンと呼んでよ!ねぇナタリア?」
「呼びません!そんな気易い……」

そんなやり取りを観察していた童女が「チューしたらきっと仲良くなるよ」と揶揄ってきた。どこで知ったやらおませな子達が「チューチュー」と騒ぎだす。

「んまっ!?そのような事を……ど、どこで覚えるんですか」
「えっとね、寄付して貰った御本に王子と王女がチューして結婚する話があったの!」
「な、なんてこと」
子供だからと侮れないとナタリアは頭を抱え、王子の方はなんとか構って貰おうと周囲をうろつく。

「ねえねえナタリア。チューしようか?仲良くなれるらしいよ」
「なっ!!!!!」
赤くなったり青くなったり忙しいナタリアの顔色を見て「飽きないなぁ」とステファン王子は楽しそうに微笑む。

こうしてヴァヘナの使節団が国交の為の会議と条約が締結するまでの約一か月間、ステファンの求愛は続くのである。
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