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しおりを挟む護衛騎士と悶着があったようだが、それも往なしてコランタムはドアをこじ開けようとしていた。ドカリドカリと音を立てて、ついには罅が入る。
「あぁ、お嬢様!私の後ろに御下がりくださいませ!」
「う、うん。わかったわ」
侍女は短刀を懐から出して身構えた、暴漢となったコランタムに対抗するには心元ないがそれくらいしか出来ない。そうしている間にドアに穴が開く。
そこからニュウッと腕が出てきて手探りを始めたではないか。
「ひぃ!なんてこと!エイッエイッ!この不届き者が!お嬢様には手出しさせませんよ!」
果敢にも不埒な者へ攻撃を仕掛けている侍女である、自分も恐ろしいはずだが気丈なことだ。攻撃を仕掛けられたコランタムは「ぎゃぁ」と声を上げ予期せぬ痛みに怯んだのか、一旦引いたようだ。
だが、それは更なる悲劇の幕開けでしかない。
怒り狂った彼は穴に集中してより大きくしようと襲撃に転じた、間もなくドアは開かれるだろう。侍女もセレンジェールも竦み上がり二人で抱き合って泣きだした。
「はぁ、はぁ……セレンよ、悪い子だ。素直に出てくれば良いものを少々痛い目に合わないとわからないようだね、ヒヒヒッ!乱暴に抱いてしまおうか」
下卑た物言いにセレンジェールは畏怖し「助けてぇ」とか細い声を上げる。その頼りない小さい声は彼の嗜虐性を刺激して余計に興奮させたようだ。
「はぁ、早く抱きたいものさ。なぁセレン、キミの豊満な肢体はさぞかし甘美なものだろうなぁ」
バキバキとドアが破れる音がすぐ目の前で聞こえてくる。恐怖に震える彼女は「いやいや」と首を振る。パニックに陥った彼女はグルングルンと眩暈を起こす、そして記憶の断片を思い出し始めた。
「あ、頭が痛い……うぅ、助けて……あ、貴方は……まさか」
「ああ、お嬢様お労しい」
次々と記憶の洪水がセレンジェールの脳を刺激してきて痛みを伴う、ドクンドクンと波打つ苦痛に彼女は耐え切れず床に転げまわる。
「セレン、セレンジェール、隠れん坊はおしまいだよーヒヒヒッ」
「……はぁ……これは……この声、聞き覚えがあるわ、私を悲しみに追いやった憎き相手……ぐうぅ!」
「お嬢様、しっかり!あぁ、神様……御救いください」
その時、バリンと砕け散る音が聞こえた、ついにコランタムがドアを完全に蹴破ったのだ。侍女は恐怖に悲鳴を上げてセレンジェールに覆い被さった。
そして、仁王立ちになったコランタムがのそりと押し入ってきた。ゆっくりとした足取りだったが、それは追い詰めた獲物を嬲るようなものだ。
「セレェーン、私の愛するセレンよ。今から結婚式といこうじゃないか、美しいドレスも指輪もないが勘弁しておくれよ?」
股間を膨らませている彼は以前興奮冷めやらずである、右腕は短刀で傷ついたのか血を滴らせていた。その様子を侍女の膝影から見ていた彼女は「はぁ」と溜息を洩らした。
気丈にもセレンジェールは侍女を優しく剥がして「大丈夫よ」と言ったのだ。
「不埒者め、誰に断わって私の名前を呼ぶ。許しませんよ」
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