3 / 13
3
しおりを挟む
カバリル家当主ザウラー公爵は次の贄を吟味立てするのに余念がない。
たった半年で伯爵家が傾いたのは誤算だったと渋面だ。
ギャンブルが好きで、食道楽の彼は伯爵家のワインが気にいっていた。王国一と称えられたあの味を只で呑めなくなったのを悔しがる。
そして狡猾なザウラーはラーボック侯爵家、マゼニル子爵家。そうターゲットを絞っているところだ。
「父上、ラーボックにしましょう、子爵家では格下すぎます」
「なぜだね?あそこが運営してる商会は加工品流通が安定してきて、業績が一気に上がったと聞いた。潤沢な資産があれば下位貴族でも問題なかろうが」
奸智に長けているザウラーは訝しい顔をする、彼の中では金があればなんでも良いのだ。
愚息ダニエルがさらに水を注す。
「レイチェルですよ」
「あの売女は関係ないだろ、あんなもの捨ててしまえ!替えなどいくらでもおるわ!」
卑しい元娼婦のレイチェルを公爵は嫌っている、自分を棚上げして金食い虫と罵っていた。
「お待ちを!俺の考えを聞いてくださいよ。彼女を侯爵家の養女に薦めるのです。俺はレイチェルを正妻にしたいのです。子爵では婚姻に支障がある、俺は金はどうでもいい。ラーボックには娘がいませんからね。そこをごり押しするんですよ。養女になった彼女と俺が結婚すれば金はいくらでも吸い取れる!」
「はん!そんなにあの女が良いのか?愚かな」
「どうとでも、まぁ彼女を着飾らせる金子くらいは貰いますけどね」
愚息はニタリと下卑た笑顔を向けた。
やっぱり金喰い虫だと公爵は毒づく。
「良かろう、脅しと場は私が作ってやる、うまく動いて見せよ。失敗したらあの女は捨てろ」
「わ、わかりました!我が愛の為にこなしてみせますよ!」
ザウラーは愛だなんだと青臭いことを言う倅に苛立つ、育て方を間違えたかと眉間に皺を作る。
「ふん、情などで腹は膨れぬわ」
公爵はそう吐き捨て、今日も美酒と血の滴る霜降り肉を貪る。でっぷり膨らんだ腹には、粗悪な脂身が詰まっているに違いない。
***
毒婦レイチェルがベッドの上で甘い声でダニエルを呼ぶ。
「俺のシュガーマフィン、愛しい人。なにかお強請りかい?」
「うふ、察しが良い貴方。大好きよ、ねぇ……わたしの耳元が寂しいと思わない?」
ダニエルが彼女の耳たぶを甘く噛んで囁く。
「そうだね、指と胸元にも飾ろう。それと上品なドレスもだ」
その言葉にレイチェルの顔が輝く。
「ああダニーなんて素敵なの!でもどうして?」
金蔓を失ったばかりの彼が妙なことを言うもんだと呆れる。
「キミと結婚する未来が開けそうなんだよ。レイチェル、キミは侯爵令嬢になるんだ。ラーボック家の養女になれば身分差で引き裂かれることは無くなるぞ!」
目の前の男の発言に(何をバカな)と内心思いつつ、「とても素敵な計略だわ」と称賛した。
浮世の辛酸を舐めて生きてきた、元娼婦のレイチェルの方が冷静な目を持っていたのだ。
たった半年で伯爵家が傾いたのは誤算だったと渋面だ。
ギャンブルが好きで、食道楽の彼は伯爵家のワインが気にいっていた。王国一と称えられたあの味を只で呑めなくなったのを悔しがる。
そして狡猾なザウラーはラーボック侯爵家、マゼニル子爵家。そうターゲットを絞っているところだ。
「父上、ラーボックにしましょう、子爵家では格下すぎます」
「なぜだね?あそこが運営してる商会は加工品流通が安定してきて、業績が一気に上がったと聞いた。潤沢な資産があれば下位貴族でも問題なかろうが」
奸智に長けているザウラーは訝しい顔をする、彼の中では金があればなんでも良いのだ。
愚息ダニエルがさらに水を注す。
「レイチェルですよ」
「あの売女は関係ないだろ、あんなもの捨ててしまえ!替えなどいくらでもおるわ!」
卑しい元娼婦のレイチェルを公爵は嫌っている、自分を棚上げして金食い虫と罵っていた。
「お待ちを!俺の考えを聞いてくださいよ。彼女を侯爵家の養女に薦めるのです。俺はレイチェルを正妻にしたいのです。子爵では婚姻に支障がある、俺は金はどうでもいい。ラーボックには娘がいませんからね。そこをごり押しするんですよ。養女になった彼女と俺が結婚すれば金はいくらでも吸い取れる!」
「はん!そんなにあの女が良いのか?愚かな」
「どうとでも、まぁ彼女を着飾らせる金子くらいは貰いますけどね」
愚息はニタリと下卑た笑顔を向けた。
やっぱり金喰い虫だと公爵は毒づく。
「良かろう、脅しと場は私が作ってやる、うまく動いて見せよ。失敗したらあの女は捨てろ」
「わ、わかりました!我が愛の為にこなしてみせますよ!」
ザウラーは愛だなんだと青臭いことを言う倅に苛立つ、育て方を間違えたかと眉間に皺を作る。
「ふん、情などで腹は膨れぬわ」
公爵はそう吐き捨て、今日も美酒と血の滴る霜降り肉を貪る。でっぷり膨らんだ腹には、粗悪な脂身が詰まっているに違いない。
***
毒婦レイチェルがベッドの上で甘い声でダニエルを呼ぶ。
「俺のシュガーマフィン、愛しい人。なにかお強請りかい?」
「うふ、察しが良い貴方。大好きよ、ねぇ……わたしの耳元が寂しいと思わない?」
ダニエルが彼女の耳たぶを甘く噛んで囁く。
「そうだね、指と胸元にも飾ろう。それと上品なドレスもだ」
その言葉にレイチェルの顔が輝く。
「ああダニーなんて素敵なの!でもどうして?」
金蔓を失ったばかりの彼が妙なことを言うもんだと呆れる。
「キミと結婚する未来が開けそうなんだよ。レイチェル、キミは侯爵令嬢になるんだ。ラーボック家の養女になれば身分差で引き裂かれることは無くなるぞ!」
目の前の男の発言に(何をバカな)と内心思いつつ、「とても素敵な計略だわ」と称賛した。
浮世の辛酸を舐めて生きてきた、元娼婦のレイチェルの方が冷静な目を持っていたのだ。
785
あなたにおすすめの小説
【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは
今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。
長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。
次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。
リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。
そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。
父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。
「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。
婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。
元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。
出ていくのは、貴方の方ですわよ?
※カクヨム様でも公開しております。
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる