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快適牢獄生活
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罪人マニエは一番環境の悪い部屋に入牢された。
彼女自身が最上階の牢獄を希望したからだ、それはとても楽しそうな笑みで入って行ったと後に看守が語る。
『振り返ってみれば、アレは嫌がらせの為だったと思うぜ』と看守は言う。
窓は細長く外の景色は碌に見えない、そのうえ夏は暑く、冬は極寒だ。薄暗くて一日も籠れば気が滅入りそうだった。
しかし、マニエにはどうでも良いことだ。
「昏いなら灯りをつければ良いでしょ?空気が濁る?循環すれば良いだけよ。でもそうね不満なのは狭いことかしら、だからブチ抜こうと思うの、それから鉄格子ドアは丸見えだから目隠ししたいわね」
円柱の高い監獄塔は4つに仕切られていてとても狭い、不満を感じたマニエは石壁を破壊して一つ繋がりにした。
天井が落ちないよう支柱も忘れない。ついでに窓も広げて板戸もつけた。
大掛かりなリフォームだったが彼女は至って涼しい顔だった。
何故ならそのように”呪い”をかけたからだ。
壁に”消えろ”と言えば簡単に穴が空くし、窓も同様だ。
鉄格子は”細かく散れ”と言えば目視出来ない網目状になった。
粗末な食事は看守に従順になる呪いを掛ければ簡単だ。
朝昼晩とデザート付きの豪華な食事を勝手に持って来るのだから。
「でも毎回は申し訳ないから果物を育てましょう」
献上された果実からタネを取り出して”育て”と言えば立派な林檎の木に育って美味しい実が鈴なりになった。
石造りの塔だ、そこに根を張った木は元気に育つ。呪いで育つので水も肥料も不要だ。
彼女の家には代々このような特殊能力を持って生まれるものがいた。それゆえに王族から婚姻の話があったのだ。
しかし、彼らは『所詮は呪い』と小馬鹿にしていた。
特にサンタアスは呪いの怖さを侮っていた。
だからこそ、浮気を繰り返したあげくは婚約破棄などをやらかしたのだ。
マニエが簡素で硬いベッドをリメイクして寝そべった時である。
小窓から白い小鳥が入ってきて囀った。
「まぁ、可愛いこと。化けるのが上手になったわね」
マニエがそう声をかければ、小鳥は銀髪の少年になり気まずそうに佇んでいた。
「ちぇっ、もっとびっくりしてよ姉さま」
「ふふ、だって不自然なんだもの。すぐわかっちゃうわ」
少年はトテテテと駆け寄ってマニエに抱き着いた。
「不自由はしてませんか?」
「ええ、平気よ。ありがとうランス」
「でもこういう所のご飯は美味しくないでしょ?心配です」
「ふふ、ありがとう。そうね、せっかくだから葡萄と梨、オレンジの種をお願いしようかしら?」
そんなもので良いのかと、ランスは可愛い首を傾ぐ。
「案外ここの石畳と相性が良いの、良く育つのよ」
紅く実った林檎を捥いで、幼い弟に一個差し出す。
「姉様の魔力が凄いから育つのではないですか?」
ランスは林檎を服の裾で磨くとがぶりと齧った、甘酸っぱい香気がそこに立った。
とても美味しいとランスは笑顔になる。
「ところで姉様の呪いを与えればバカ王子を更生できたでしょう?」
「あぁ……呪って従える価値もないと判断したまでよ」
なるほど、同感です。とランスは納得してシャリシャリと残りの林檎を食んだ。
「それにしても美味しい!姉様、ボクに何個かわけて下さい、タルトかパイを作らせて持ってきますよ」
「まぁ!ありがとう、監獄ではロクに楽しみもないから嬉しいわ!」
暇を持て余しているという姉マニエの為に、本や娯楽になりそうなものを持参すると約束してランスは小鳥に変化して飛び立った。
「うふふ、さらに快適になっちゃうわね!」
彼女自身が最上階の牢獄を希望したからだ、それはとても楽しそうな笑みで入って行ったと後に看守が語る。
『振り返ってみれば、アレは嫌がらせの為だったと思うぜ』と看守は言う。
窓は細長く外の景色は碌に見えない、そのうえ夏は暑く、冬は極寒だ。薄暗くて一日も籠れば気が滅入りそうだった。
しかし、マニエにはどうでも良いことだ。
「昏いなら灯りをつければ良いでしょ?空気が濁る?循環すれば良いだけよ。でもそうね不満なのは狭いことかしら、だからブチ抜こうと思うの、それから鉄格子ドアは丸見えだから目隠ししたいわね」
円柱の高い監獄塔は4つに仕切られていてとても狭い、不満を感じたマニエは石壁を破壊して一つ繋がりにした。
天井が落ちないよう支柱も忘れない。ついでに窓も広げて板戸もつけた。
大掛かりなリフォームだったが彼女は至って涼しい顔だった。
何故ならそのように”呪い”をかけたからだ。
壁に”消えろ”と言えば簡単に穴が空くし、窓も同様だ。
鉄格子は”細かく散れ”と言えば目視出来ない網目状になった。
粗末な食事は看守に従順になる呪いを掛ければ簡単だ。
朝昼晩とデザート付きの豪華な食事を勝手に持って来るのだから。
「でも毎回は申し訳ないから果物を育てましょう」
献上された果実からタネを取り出して”育て”と言えば立派な林檎の木に育って美味しい実が鈴なりになった。
石造りの塔だ、そこに根を張った木は元気に育つ。呪いで育つので水も肥料も不要だ。
彼女の家には代々このような特殊能力を持って生まれるものがいた。それゆえに王族から婚姻の話があったのだ。
しかし、彼らは『所詮は呪い』と小馬鹿にしていた。
特にサンタアスは呪いの怖さを侮っていた。
だからこそ、浮気を繰り返したあげくは婚約破棄などをやらかしたのだ。
マニエが簡素で硬いベッドをリメイクして寝そべった時である。
小窓から白い小鳥が入ってきて囀った。
「まぁ、可愛いこと。化けるのが上手になったわね」
マニエがそう声をかければ、小鳥は銀髪の少年になり気まずそうに佇んでいた。
「ちぇっ、もっとびっくりしてよ姉さま」
「ふふ、だって不自然なんだもの。すぐわかっちゃうわ」
少年はトテテテと駆け寄ってマニエに抱き着いた。
「不自由はしてませんか?」
「ええ、平気よ。ありがとうランス」
「でもこういう所のご飯は美味しくないでしょ?心配です」
「ふふ、ありがとう。そうね、せっかくだから葡萄と梨、オレンジの種をお願いしようかしら?」
そんなもので良いのかと、ランスは可愛い首を傾ぐ。
「案外ここの石畳と相性が良いの、良く育つのよ」
紅く実った林檎を捥いで、幼い弟に一個差し出す。
「姉様の魔力が凄いから育つのではないですか?」
ランスは林檎を服の裾で磨くとがぶりと齧った、甘酸っぱい香気がそこに立った。
とても美味しいとランスは笑顔になる。
「ところで姉様の呪いを与えればバカ王子を更生できたでしょう?」
「あぁ……呪って従える価値もないと判断したまでよ」
なるほど、同感です。とランスは納得してシャリシャリと残りの林檎を食んだ。
「それにしても美味しい!姉様、ボクに何個かわけて下さい、タルトかパイを作らせて持ってきますよ」
「まぁ!ありがとう、監獄ではロクに楽しみもないから嬉しいわ!」
暇を持て余しているという姉マニエの為に、本や娯楽になりそうなものを持参すると約束してランスは小鳥に変化して飛び立った。
「うふふ、さらに快適になっちゃうわね!」
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