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闖入者

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アロルドが図面を元にどのように加工して行くか親方と会議していた時だ、ちょっとした騒ぎが事務所のほうであった。何事だろうと彼らは駆け寄って行く、すると見知らぬ女性が誰かのバッグを握り締めて騒いでいた。

「なんだ?どうしたと言うんだ?」親方は事務員に問い詰める。
「ああ、良かったわ旦那様!ちょうど良い所へ、この女性がいきなり入って来てバッグを奪ったのよ」
「なんだと!?」

熱り立った親方は拳握り締めて「ふてぇ野郎だ」とその女性のほうへ向く。
その女性は髪を振り乱し興奮してる様子だ、訳がわからないことを喚いている。自分が何者かで何を奪ったかとしきりに説明しているのだが要領を得ない。

「うぅう……寄ってたかって酷いわ!私はただランチボックスを回収しようとしただけよ!」
「ランチボックスだと?」
親方はなんの話だと頭を傾げる、それから女性を立たせて座るように促す。ところがそれでも女性は抵抗する。

「あ!それは俺の鞄じゃないか!」
アロルドが激高して怒鳴った、すぐに返せと迫ったが女性は嫌だと必死に抵抗してくる。

「嫌!嫌よう!あの女が作った弁当なんて汚らわしい!私が処分してあげる!」
「はあ?」

彼女は言うが早いか鞄からランチボックスを取り出して床に打ち撒けた、これにはアロルドも親方たちも驚いて竦んでしまう。

「な、なんてことを……」
目の前で台無しにされたランチを茫然と眺めるしか出来ないアロルドだ。

「ひ、ふふふふ……ほらあ私がもっと美味しいものを作ってきたから、タマゴサンドよ!貴方の大好きなタマゴサンドなのよぉ!うふふふふふふ」
「ひぃ!寄るな!なんなんだよ!」

女性の手にしたそれはグチャグチャな代物だった、確かにタマゴらしきが挟まっていたがハミ出ていてとても美味しそうには見えない。しかも素手で持ってきたものらしくひしゃげていた。

「お、親方!すぐに衛兵を呼んでくれ!異常者だ!」
「あ、ああ……そうだな」
面食らっていて固まっていた親方たちは漸く動き出した。それから程なくして衛兵たちが「異常者はどこだ」と雪崩れ込んで来た。

「いやああ!放してぇ!私は彼の婚約者なのよぉ!だから美味しいサンドイッチを持ってきたのぉ!あの女より私の方が相応しいのよ~」
「あ~はいはい、わかったから取り合えず詰所に行こうな」
「アロルドぉ~タマゴサンドを食べてねぇ、うふふふふふ」

常軌を逸したその姿はゾッとするものだ、目が座り何処を見ているのかわからない。床に飛び散ったロサーナの愛妻弁当を搔き集めて「今日は厄日だ」と悄気るアロルドがいた。

「まあ元気出せ、俺が昼飯を奢ってやる……」
「親方……グスン」





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