4 / 16
4
しおりを挟む相変わらず仏頂面のアルミロはニーナを見ようともしなかった。
今日は定例茶会でルファーノ家で催されたのに、歓迎の挨拶すらなく今にも立ち去ろうとする気配がした。
「あの、アルミロ様。私は気に障ることでもしたでしょうか、それならば言って下されば…」
「は?わからないというのか?悉くボクがしようとする事を邪魔してきて!呆れたものだな」
「そんな!私は良かれと思って」
ニーナは目を見開いて「今までしてきたことは全て貴方の為なのです」と説明した。だが、彼の心は冷たくなって何一つ響かないようだ。
「お前の注意ごとなど聞きたくない!この粘着女」
「そんな……私はただ貴方の身を案じていただけですわ、普段のお世話も同様の意味で」
定期的にお世話という名目で彼の側にいたのだが、それも嫌だと詰れらる。確かに今のアルミロは常人と同じくらいに健康そうだ、だが、油断すれば大変なことになってしまう。生まれつきの病弱で介護が必要レベルなのだ。
「お願いですアルミロ様、普段のお世話だけでも続けさせてくださいませ。この間から碌に会えていませんわ。せめて五日に一度くらいお傍に」
「ならん!冗談ではないぞ、お前の辛気臭い顔を見ただけで吐き気がするんだ!それに会ってどうにかなると思っているのか!馬鹿々々しい!事細かく俺に指図するお前の相手も面倒だし、将来はどうこうとか理想ばかり高くてお前の愛が重いんだよ!」
「そんな……」
今まで隠れて治癒をしてきた彼女に対して言う言葉ではない、例え教えられなくても”そのような効果”は如実に表れていた。それをアルミロは丸ッと忘れて「邪魔」「鬱陶しい」の言葉で彼女を撥ね退けるのだ。身体を気遣うすべての好意を否定された食事、運動、睡眠などの管理、ニーナの献身的努力はなんだったのか。
「うぅ……わかりました、定期的なお世話はしませんわ、どうなっても知りませんからね」
「シツコイなぁ!泣いて気を引こなどと止してくれ!もういい、帰ってくれよ」
「はい……では失礼します」
彼女は涙を浮かべながらその場を立ち去った、いままでの苦労はなんだったのだろうと心底思い、悔しさと切なさに苛まれ涙がいつまでも枯れない。
***
「帰りました、お父様……」
「え?」
泣き腫らした愛娘の顔を見たガーナイン卿はギョッとする、いつもならば楽し気に帰ってきてアルミロとの会話を隈なく話すというのにだ。この変わりように卿は大変驚く。
「ど。どうしたの言うのだ!そのように真っ赤に目を腫らして、一体なにが?」
「……私、嫌われてしまったようです。申し訳ございません」
「理由を聞いても良いか?」
ことの経緯を聞いた卿は憤怒の形相で「あり得ない」と怒鳴った。ニーナは治癒を施すと凄く疲れるという、憔悴しきって三日間起きない事もあった。それだというのにこの仕打ちである。
「お父様、私はもう治癒をしなくても良いでしょうか。疲れました」
「ああ、あぁ良いとも!なんなら婚約を破棄しよう、このままではニーナも辛かろう」
「はい、お父様。それで良いです、ですが少しだけ時間をください。彼を諦める日数を」
卿はそれを了承して家令を呼んだ、婚約破棄に関する事項を煮詰めるためだ。
愛していたと思っていた彼の事をすぐさま忘れる事は難しいが、距離を置いて行こうとニーナは思った。
「いつか何も感じなくなるのかしら……あの人の名を聞いても」
2,508
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
【完結】「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました
山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」
確かに私達の結婚は政略結婚。
2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。
ならば私も好きにさせて貰おう!!
【完】幼馴染と恋人は別だと言われました
迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」
大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。
毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。
幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。
そして、ある日突然、私は全てを奪われた。
幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?
サクッと終わる短編を目指しました。
内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる