その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

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ブルフィールド侯爵邸へ帰宅後――

私は悲しくて辛くてそのまま寝込みました。
義妹を愛称で呼ぶくせに……婚約者の私は名を呼ばれたのはいつなのかすら思い出せません。
「アイリス」それが私の名前です、きっとそれすら忘れてらっしゃるかも。


「ぐぅううう!ズゴゴゴゴゴ!」
どれくらい寝たのか、はしたなく鳴く己の腹の虫の音で目が覚めました。

侍女のルルが言うには三日ほど寝てたそうです。
そりゃーお腹がすきますね。


自室でブランチを食べていたら、ウィルフレッド兄様が見舞いにきました。
「がっつきのお前が寝込むなんて余程のことだね?」
「はーまぁ、その言い方……。実は婚約に疑問が生じまして」

先日の茶会に限らず、これまでのロードリック様の極寒ぶりを零しました。
ちょっぴりは慰めてもらえると期待したのです……が。

「ええ、あのロディがかい?信じがたいなー。紳士倶楽部での彼はユーモア話が絶えないし、いつも大笑いしてるけどなぁ?」

ええ!?うっそでしょう!

「それ誰の話ですか!ロードリック様の話ですよね?私の知ってる彼は寡黙でぜんぜん笑いませんけど!終始睨んできますけど!?話しかけても微動だにしませんけど!?」

捲し立てる私に落ち着けと兄様が言います。

「な、なんて言うか真逆だな?」
「激しく同意しますわ!やんちゃな九官鳥とハシビロコウほど違いますよ!」
間違いありません、私は物凄く嫌われているんです!

「酷いです……そんなに態度が違うなんて婚約破棄します!」
「ちょっとアイリス!落ち着いて!」

「うるせぇバカ兄貴!婚約破棄一択じゃボケェーーー!」
「妹が壊れたー!」


***

「あの彼が笑わないだと……。まさかそんな」
仕事から帰ったお父様までもお兄様と同じ反応をなさいます。

「アイリスや、あの朗らかな方がありえないのだが?」
「朗らか!?一番似合わない表現ですわ!あの極寒大魔王は目からブリザード出てますけど!凍てつく風しか感じませんけど!」

どうしてみんな私に賛同しないの?
いい加減疲れます!

「真反対過ぎて眩暈がします……、無理です。彼と結婚する未来が見えません」
「ははは、なにかの間違いさアイリス。そうだなにか拗ねてるんだろう?可愛いなぁ」

呑気な親の対応にプチリときました。

「どうしても結婚させる気なら修道院へ行くか自決を選びますわ!それとも一家心中をお覚悟くださいませ!死なばもろともじゃーい!」
「娘が壊れたーー!」

やっと私の本気が伝わったのか、両家で話し合いをすると約束してくれました。
ただ破棄できるかは怪しい雰囲気です……。

私に安寧は来るのでしょうか?
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