頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)

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大きなリボン

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「頭が悪そうな顔……なるほどね」
小国ゼベール王国の第二王女ハウラナは、16歳の己の誕生日に盛大な溜息を漏らす。

彼女の容姿はフワフワな淡い金髪に小顔、やや垂れ目な大きな瞳。程よい高さの鼻、小さく愛らしい唇。
幼く愛らしいと言えば聞こえは良いが、ただの童顔である。


『頭が悪そう』『尻軽そう』『お花畑の女』……聞くに堪えない言葉が彼女を攻撃してくる。
男性たちからは庇護欲をそそると言われるが、その裏で「頭が空で股が緩そう」と噂されていた。

ハウラナの誕生日を祝う夜会にて、聞こえてきた謗りだった。

全員殴り倒してやろうかと、怒りに震える手が扇子をバキリと折る。

「ラナ、大丈夫かい?ほらそんなに怒らないで、シャンパンをどうぞ」
「お兄様……。はぁ……ありがとう!後数秒遅かったらそこの令嬢達の首を落とす所だったわ」
王女は交換した扇を緩くあおいで、仕込んだ刃をキラキラと光らせる。

「怖いな……、まぁそれも一興だとは思うけど誕生日だからね?」


なぜ見た目のせいだけで、これほど謗りを受けなければならないのかとハウラナは独り言ちる。

「大人っぽく見えるようハーフアップにしてと言ったのに、侍女たちときたら」
「まぁまぁ、ラナの可愛らしさを強調したかったんだろう?大きなリボンと珊瑚色のドレスが良く似合うよ」

そうじゃないとハウラナはイライラした。

可愛い色ばかりではなく、落ち着いた装いをしたいと常々思っている。
だがしかし、侍女達は「殿下は永遠の美少女で良いのです」と聞いてくれない。

「兄さま、幼女が着けるような大きめのリボンが頭悪そうに拍車をかけてない?」
「頭が?どうしてだい、可愛いが強調されてるだけだろう?」


身内の欲目なのか、兄王子カインは「怒った顔も可愛いね」と言ってヘラリと笑う。
きょうも彼女の訴えは届かない。



祝辞を一通り受け終えたところで、彼女の父国王陛下が登壇して臣下達へとある事を告げる。

「我が愛娘ハウラナが大帝国ダネスゲート皇帝の元へ嫁ぐことになった。皆の者、祝杯を今一度彼女へ」

ざわつく会場に宰相が「乾杯!」と声を張ると一斉にグラスが掲げられた。
カンカンと隣同士でグラスを交わしている音色が響く。


「おめでとう、ラナ」
「なにがおめでたいのよ……」

ハウラナは会場でただ一人、苦い顔でグラスを空にした。
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