24 / 32
狸会議と後宮の変化
しおりを挟む
善は急げと皇帝は会議で後宮廃止案を提起した。
予想通り、官職たちは難色を示した。だがクレイブは諦めるつもりはない。
何より宰相が同意してくれた、その他側近たちも柔軟な態度だった。
「陛下、貴方が帝国民のために良い働きをしてくれるならいくらでも盾になってやろう」
「はは、頼りにしているぞケンフラー」
「はいよ」
それから会議を重ねる度、次第に良い反応を見せる者が増えてきた。
影響はゼベール産の魔道具にあった、これまでは魔力が低い者には扱えない品ばかりだった。
だが改良がなされ、僅かな魔力でも起動する文書転送魔道具が支給されたことが大きい。
「いやぁ、文官たちが特に喜んでいるぞ!階段を駆け上がって書類提出をせずに済むからな、運動不足にはなりそうだが」
「うむ、仕事が捗るのは良いことだな。残業も減って良いことじゃないか。なにもかも義兄殿のお陰だ」
加えて通話魔道具も導入が決定され、各部署の官職たちも作業効率の向上に大いに驚き、皇帝の心を動かしたハウラナ姫の母国ゼベールの価値を見直すようになった。
良い兆しが見えてきて、クレイブはサクサクと文書の仕分けをこなし、上機嫌で判を押して行く。
***
後宮の在り方が一新され、正妃候補ハウラナ以外の側室たちはだんだん立場がなくなっていく。
これまでは我儘放題が当たり前だった彼女たちには窮屈な檻でしかない。
不正の温床だった後宮の侍女たちが全員入れ替えられ、元武官の女子が侍女兼護衛となって配置された。
気難しく規律に厳しい彼女たちは、側室が甘えることを許さなかった。
何かを所望しても「予算内で購入してください」しか言わない。側室達はキーキーと不満を漏らして暮らすようになった。
「どうなっているの!これではまるで牢の中じゃないの!国へ帰ったほうがマシよ!」
「そうよ!何のために人身御供になったかわからないわ!」
どいつもこいつも、甘い汁を吸う事しか考えない女ばかりだと皇帝たちへ報告書が届く。
「やはりな、ハウラナ以外はクソしかいないな」
「やっぱり後宮は潰した方がいい」
廃止に前向きなものが、賛同の声を大きくしていった。
ハウラナと言えば、時々フィッと姿を消し花畑へ遊びに行っているが、必ず後宮へ戻っていた。
彼女の機嫌が良い時は、クレイブも出入りが許された。
「凄いな、年中花が咲いているのか」
初めて招かれた時のクレイブの驚きようは凄かった。
亜空間ボックスからヒョイヒョイと茶と菓子をだすのにも大騒ぎになった。
「クレイブ陛下、貴方変わったわね」
「そうかな?」
いちごジャムが乗ったクッキーを噛みながらハウラナが言う。
「喋り方がとても柔らかくなったわ、「余」から「俺」になっているし、良く笑うわ」
「そ、そうか?むむ」
良いことだから大丈夫よと、ハウラナが彼が眉間に作った皺を突くとクレイブは破顔した。
「ほらね、そういう顔が貴方らしい。確かに年上の家臣の前では気を抜けないかもしれないわ。でもいつもそれでは老け込むわよ」
「老け……それは嫌だな、ハウラナは俺より5歳も若い……」
たった5歳差と言えるようにしましょうとハウラナは笑った。
「つまりそれは、正妃になっても良いと?そう思っていいんだよな?」
「いいえ、それとは別。」
ビシリと否定するハウラナである。
「えぇ~……先は長いなぁ」
眉毛を下げて落胆するクレイブにハウラナはクスクスと笑う。
予想通り、官職たちは難色を示した。だがクレイブは諦めるつもりはない。
何より宰相が同意してくれた、その他側近たちも柔軟な態度だった。
「陛下、貴方が帝国民のために良い働きをしてくれるならいくらでも盾になってやろう」
「はは、頼りにしているぞケンフラー」
「はいよ」
それから会議を重ねる度、次第に良い反応を見せる者が増えてきた。
影響はゼベール産の魔道具にあった、これまでは魔力が低い者には扱えない品ばかりだった。
だが改良がなされ、僅かな魔力でも起動する文書転送魔道具が支給されたことが大きい。
「いやぁ、文官たちが特に喜んでいるぞ!階段を駆け上がって書類提出をせずに済むからな、運動不足にはなりそうだが」
「うむ、仕事が捗るのは良いことだな。残業も減って良いことじゃないか。なにもかも義兄殿のお陰だ」
加えて通話魔道具も導入が決定され、各部署の官職たちも作業効率の向上に大いに驚き、皇帝の心を動かしたハウラナ姫の母国ゼベールの価値を見直すようになった。
良い兆しが見えてきて、クレイブはサクサクと文書の仕分けをこなし、上機嫌で判を押して行く。
***
後宮の在り方が一新され、正妃候補ハウラナ以外の側室たちはだんだん立場がなくなっていく。
これまでは我儘放題が当たり前だった彼女たちには窮屈な檻でしかない。
不正の温床だった後宮の侍女たちが全員入れ替えられ、元武官の女子が侍女兼護衛となって配置された。
気難しく規律に厳しい彼女たちは、側室が甘えることを許さなかった。
何かを所望しても「予算内で購入してください」しか言わない。側室達はキーキーと不満を漏らして暮らすようになった。
「どうなっているの!これではまるで牢の中じゃないの!国へ帰ったほうがマシよ!」
「そうよ!何のために人身御供になったかわからないわ!」
どいつもこいつも、甘い汁を吸う事しか考えない女ばかりだと皇帝たちへ報告書が届く。
「やはりな、ハウラナ以外はクソしかいないな」
「やっぱり後宮は潰した方がいい」
廃止に前向きなものが、賛同の声を大きくしていった。
ハウラナと言えば、時々フィッと姿を消し花畑へ遊びに行っているが、必ず後宮へ戻っていた。
彼女の機嫌が良い時は、クレイブも出入りが許された。
「凄いな、年中花が咲いているのか」
初めて招かれた時のクレイブの驚きようは凄かった。
亜空間ボックスからヒョイヒョイと茶と菓子をだすのにも大騒ぎになった。
「クレイブ陛下、貴方変わったわね」
「そうかな?」
いちごジャムが乗ったクッキーを噛みながらハウラナが言う。
「喋り方がとても柔らかくなったわ、「余」から「俺」になっているし、良く笑うわ」
「そ、そうか?むむ」
良いことだから大丈夫よと、ハウラナが彼が眉間に作った皺を突くとクレイブは破顔した。
「ほらね、そういう顔が貴方らしい。確かに年上の家臣の前では気を抜けないかもしれないわ。でもいつもそれでは老け込むわよ」
「老け……それは嫌だな、ハウラナは俺より5歳も若い……」
たった5歳差と言えるようにしましょうとハウラナは笑った。
「つまりそれは、正妃になっても良いと?そう思っていいんだよな?」
「いいえ、それとは別。」
ビシリと否定するハウラナである。
「えぇ~……先は長いなぁ」
眉毛を下げて落胆するクレイブにハウラナはクスクスと笑う。
30
あなたにおすすめの小説
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約を解消されたし恋もしないけど、楽しく魔道具作ってます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「君との婚約を解消したい」
「え? ああ、そうなんですね。わかりました」
サラは孤児で、大人の男であるジャストの世話になるため、体面を考えて婚約していただけだ。これからも変わらず、彼と魔道具を作っていける……そう思っていたのに、サラは職場を追われてしまった。
「甘やかされた婚約者って立場は終わったの。サラ先輩、あなたはただの雇われ人なんだから、上司の指示通り、利益になるものを作らなきゃいけなかったのよ」
魔道具バカなのがいけなかったのだろうか。けれどサラは、これからも魔道具が作りたい。
【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました
きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!
月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。
不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。
いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、
実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。
父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。
ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。
森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!!
って、剣の母って何?
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。
役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。
うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、
孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。
なんてこったい!
チヨコの明日はどっちだ!
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる