頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)

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開戦、そして……

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イースレッドが放った密偵の口から、ゼベールを攻め落とす目論見で探りをいれていたことが判明する。
訓練期間も浅い末端者だった故に、すぐに拷問に根をあげた結果だった。

彼らなりに諜報活動をしていたようだが、あからさまな行動を取りすぐに正体がばれた。
監視魔導具に警戒はしていたが、なにも仕掛けて来ないとわかるや大胆になったのだ。

監視されつつ記録が残されている機能が備わっているとは知らなかった。
万が一の事態でも白を切れば良いと浅はかな考えで城内へ侵入したが、衛兵たちにより巧みに誘導されて深入りした所で御用となる。



王太子カインの予想通り、クレイブはイースレッドに宣戦布告をした。

「義兄殿、この度の戦は俺の矜持とハウラナの母国の名誉のためだ。正妃になれなかった腹いせに仕掛けてきた向こうが悪いのだ!」

「はいはい、表向きはそうしといてあげるよ」

カインの態度に些か不満そうな顔をした皇帝だったが、開戦前夜の決起集会で「愛の為の戦」と大袈裟な口上に両国の兵は「愛が重い」と苦笑する。

「無血開城が理想だけど、少しは暴れたいかな」
戦姫ハウラナはドレスから戦闘服に着替えて、指をポキポキ鳴らす。

「ハウラナ!愛くるしい顔に厳つい戦闘服、そのギャップがまた良いな!」
「変な褒め方しないでくださいな」


彼女の手を取り、唇を落とそうとしたがペチリと頭を叩かれるクレイブ。
「痛ってぇ、つれないなぁ」
「締まりのない顔は嫌いです」


***

戦いの火蓋が切られ、すぐ動いたのはイースレッド側だった。
先手必勝とばかりにイースレッド艦隊がゼベールと帝国へ同時に攻め入ってきたのである。


だがそれは悪手となる、優れた船ではあるが海戦向けの武器しか搭載していない。
轟音を上げて砲門から鉄の塊が次々と飛ばされる。

しかし、それは届く前にすべて海中に落ちていく。
指揮していた将軍は、無駄撃ちに終わった攻撃に落胆した。士気は下がるばかりだった。

「おのれぇ!小国ごときがぁ!障壁魔法など小賢しい真似を!堂々と戦わんか!」


咆える将軍のそばで呑気な声がした。

「戦争に卑怯もないでしょうが、だいたい先にコソコソうちに来たのはそっちでしょ姑息だねぇ」
「んぎゃ!?人が空に浮いている!」

「はーあ、だいたいね、障壁なんて使ってないよ?鉄の弾が重すぎて飛距離が伸びなくて落ちただけだよ」
やれやれと肩を竦めて小馬鹿にしてくるのはゼベール王太子カインだ。


「近距離の戦にしか向いてないのわかってるでしょ?火薬は湿気にも弱いもんね。短期戦でうちに勝てるの?」
「な、なななな!?」


カインが得意の火魔法を使って大きな火球を作った。
「球で攻撃ってこうするんだよ」

彼は熱風とともに火球を船体へぶつけた、その数100個以上。
木製の巨大戦艦は主砲も碌に使えず、あっさりと沈んでいった。


真ん中からV字に船体が傾き、沈む船の影響で渦巻く海流が発生した。船体から落ちた兵たちが巻き込まれて命乞いの絶叫を上げて消えていく。巨大船がゆえの2次被害だ。


「あーぁだから嫌なんだ戦争なんて……」
「お兄様、なるべく無傷で拿捕して欲しいと帝国の宰相が」
「んな無茶な、ついでに船が欲しいってか?帝国様は欲張りなことだ」


大砲が無駄とわかった敵艦隊は、弓と投石に変更して抗ってくる。
窮鼠猫を噛むが如く、必死な抵抗を見せたイースレッドだった。


「哀れだ、結局時代遅れの戦い方に戻るんだね」
「兄様、弓を亜空間収納しますわ。下がってください」
「いいけど、間違って料理長のところへ飛ばすなよ?」

「そんなヘマしません、送り先は決まってますわ!」


無数に飛んでくる矢を巨大な穴に飲み込ませ続ける、そしてハウラナは良い笑顔でこう言った。

「イースレッドの姫にプレゼントですわ!」


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