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閑話 義兄と私と王族
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一人娘の私が嫁入りしてすぐに従兄が養子にはいった。
スペンサー家を継いでもらうために、お父様の弟(叔父)の子爵家次男が選ばれたの。
彼は穏やかで勤勉なの、幼少から仲が良くて私も本当の兄のように慕っている。
これでスペンサー本家は安泰だと一族が喜んだ。
養子縁組のお祝いにパーティが開かれた、残念ながら嫁入りしたばかりの私は参加できなかった。
イーライとの白い結婚の契約や本邸の管理で忙しかったからね。
何より自活するための勉強と準備に忙殺されていく日々で余裕などなかったわ。
いよいよ動こうとした矢先にアフォカップルが旅行に出て、家令が私に接触してきて私の精神は荒れた。
一応夫のイーライには何も望まないし期待もしてなかったけれど、当主を継いで少しはマシになるかと思えば、仕事のほとんどを家令に丸投げなんだもの。
先代の義父も同様に仕事が出来ないとのこと、それを享受していた家令もどうかと思う。
いずれ追い出される身としてはどうでも良いのだけどね。
とにかく、知識をフル活用して事業を起こすことに躍起になっていたわ。
白い結婚の間はイーライからの援助はほぼないのだから、稼ぐために必死よ。
とても大変で胃が痛い日も続いたけれど、新しい試みが形になっていくのは遣り甲斐あったし楽しくて仕方ない。
私の蘇ったと思われる知識の大半は見知らぬ異国の生活を中心に、美容と食事関連が占めていたわ。
だけどすべてがサクサク解決したわけではなかった。
化粧品は材料集めがたいへんで、調合しようにも道具もない。
全てが一からのスタートだ、私は知識の偏りに悩むこととなり学ぶことが増えて行った。
そこで同時進行でドーナツ店を開くことにしたの。
初期投資はかなりの額になって厳しいことになったけど、なんとか開店までに漕ぎついた。
大盛況とまではいかないけれど、そこそこ利益がでるようになって安堵したわ。
でも、私は立ち止まれない。次々と新しいものを店に取り入れるわ。
ドーナツは材料が単純だし、すぐに真似されてしまうでしょう。
軌道にのってすぐに、似たようなものがパン屋で販売されていたものね。どちらかというと揚げパンのようなものだったけど。
付加価値と新しい味を開発しないとあっという間に負けてしまう、頑張らなきゃね。
この国にも意匠権と商標登録があるので「ドーナツ」という名称だけは守らせて貰ったわ。
つぎに新しい商品を販売する時はレシピも秘匿しましょう。
その後、季節は真夏を迎えて化粧品開発に集中することにしたわ。
夏の必需品となるであろう、ベビーパウダーと日焼け止めを作り試験販売をした。
これも材料が単純すぎるから製造工程は当然に秘匿させて貰う。製造方法を守るのに特許権を出願したわ。
それでもどこからか材料が漏れてしまうでしょうけど、そこは法が守ってくれる。
完コピされたとしても、品質で負けないつもりよ。
ところで思いがけず大ヒットしたベビーパウダー。
予想した女性需要よりも男性などガテン系といわれる職に就いてる人々に重宝されて驚いた。
やっぱり誰でも悩みは同じなのね~。
広めてくれたのは従兄改め義兄でしたわ。
騎士団の方々は制服がピッチリな上に、猛暑の訓練で滝のような汗をかくらしいわ。
兄いわく『あいつらは水虫持ちだから大喜びだ』と……聞きたくなかった。
爽やかな香りのパウダーは取り合いになったのだと兄の友人たちから聞いたわ。
そして、騎士団経由で王族にまで広まったと聞いた時は驚いたわね。
私が化粧品開発をしていると耳にした王妃様から直接注文が来た時は卒倒しそうになった。
夏はガーデンパーティが頻繁に開かれるらしく、是非日焼け止めとパウダーをということ。
王家御用達となれば私の化粧品ブランドは永劫に守られることに。
有難いやら胃が痛いやら。
しかも庶民用と同じわけにもいかない、私は再び無い頭を捻ることになった。
ベビーパウダーと日焼け止めの香料を変えて王妃様専用のものを献上したわ。
清涼感あるミントをベースに高価なローズオイルを加えたの。
それから容器も特別なものに変更したわ。
コストがグンと跳ね上がるけれど、王妃が使う特別なものだから仕方ない。
初回は無償献上ですが、販売価格はそれなりに設定させていただきました。
届けてすぐに王妃様から令状と登城せよとご招待が……逃げられない強制召還よね。
ぜんぜん招待ではない。
王家御用達が決定した瞬間だとうちの両親は喜んでいた。
うーん、複雑。
***
汗ばむ季節はまだまだ続く。私は少しバテ気味になっていた。
城に赴く当日、実家から派遣された侍女も合流したものだから、私の侍女メイド達は大騒ぎになったわ。
誰が城までついていくかで大揉めしていたの。
収集がつかなくなり、やむなく私の怒りの一喝を落とした。
なんだか酷く怯えていたけれど、そんなに怖かったのかしら?
ゲフン……ともかく、みんなが落ち着くとドレスの着付けに入った。
一安心と思ったんだけど――。
「コルセットのサイズが合いません」
え?
「ドレスのサイズも駄目です」
ええ?
「指輪と腕輪も合いません」
なんで?
まさか、私はまた太ったのかしら!?
ドーナツの試食を頻繁にはしていたけれど、体型に響くほど食べたかしら?
私は忙しさにかまけて碌に鏡を見ていなかったことをすごく後悔した。
「す、姿見をすぐここへ!」
私はゴクリと唾を飲んで己の恐ろしい姿を見ることにした。
「……」
「え……あれ?……うそー!?」
鏡に映った私は人並みの体型になっていたの。
スペンサー家を継いでもらうために、お父様の弟(叔父)の子爵家次男が選ばれたの。
彼は穏やかで勤勉なの、幼少から仲が良くて私も本当の兄のように慕っている。
これでスペンサー本家は安泰だと一族が喜んだ。
養子縁組のお祝いにパーティが開かれた、残念ながら嫁入りしたばかりの私は参加できなかった。
イーライとの白い結婚の契約や本邸の管理で忙しかったからね。
何より自活するための勉強と準備に忙殺されていく日々で余裕などなかったわ。
いよいよ動こうとした矢先にアフォカップルが旅行に出て、家令が私に接触してきて私の精神は荒れた。
一応夫のイーライには何も望まないし期待もしてなかったけれど、当主を継いで少しはマシになるかと思えば、仕事のほとんどを家令に丸投げなんだもの。
先代の義父も同様に仕事が出来ないとのこと、それを享受していた家令もどうかと思う。
いずれ追い出される身としてはどうでも良いのだけどね。
とにかく、知識をフル活用して事業を起こすことに躍起になっていたわ。
白い結婚の間はイーライからの援助はほぼないのだから、稼ぐために必死よ。
とても大変で胃が痛い日も続いたけれど、新しい試みが形になっていくのは遣り甲斐あったし楽しくて仕方ない。
私の蘇ったと思われる知識の大半は見知らぬ異国の生活を中心に、美容と食事関連が占めていたわ。
だけどすべてがサクサク解決したわけではなかった。
化粧品は材料集めがたいへんで、調合しようにも道具もない。
全てが一からのスタートだ、私は知識の偏りに悩むこととなり学ぶことが増えて行った。
そこで同時進行でドーナツ店を開くことにしたの。
初期投資はかなりの額になって厳しいことになったけど、なんとか開店までに漕ぎついた。
大盛況とまではいかないけれど、そこそこ利益がでるようになって安堵したわ。
でも、私は立ち止まれない。次々と新しいものを店に取り入れるわ。
ドーナツは材料が単純だし、すぐに真似されてしまうでしょう。
軌道にのってすぐに、似たようなものがパン屋で販売されていたものね。どちらかというと揚げパンのようなものだったけど。
付加価値と新しい味を開発しないとあっという間に負けてしまう、頑張らなきゃね。
この国にも意匠権と商標登録があるので「ドーナツ」という名称だけは守らせて貰ったわ。
つぎに新しい商品を販売する時はレシピも秘匿しましょう。
その後、季節は真夏を迎えて化粧品開発に集中することにしたわ。
夏の必需品となるであろう、ベビーパウダーと日焼け止めを作り試験販売をした。
これも材料が単純すぎるから製造工程は当然に秘匿させて貰う。製造方法を守るのに特許権を出願したわ。
それでもどこからか材料が漏れてしまうでしょうけど、そこは法が守ってくれる。
完コピされたとしても、品質で負けないつもりよ。
ところで思いがけず大ヒットしたベビーパウダー。
予想した女性需要よりも男性などガテン系といわれる職に就いてる人々に重宝されて驚いた。
やっぱり誰でも悩みは同じなのね~。
広めてくれたのは従兄改め義兄でしたわ。
騎士団の方々は制服がピッチリな上に、猛暑の訓練で滝のような汗をかくらしいわ。
兄いわく『あいつらは水虫持ちだから大喜びだ』と……聞きたくなかった。
爽やかな香りのパウダーは取り合いになったのだと兄の友人たちから聞いたわ。
そして、騎士団経由で王族にまで広まったと聞いた時は驚いたわね。
私が化粧品開発をしていると耳にした王妃様から直接注文が来た時は卒倒しそうになった。
夏はガーデンパーティが頻繁に開かれるらしく、是非日焼け止めとパウダーをということ。
王家御用達となれば私の化粧品ブランドは永劫に守られることに。
有難いやら胃が痛いやら。
しかも庶民用と同じわけにもいかない、私は再び無い頭を捻ることになった。
ベビーパウダーと日焼け止めの香料を変えて王妃様専用のものを献上したわ。
清涼感あるミントをベースに高価なローズオイルを加えたの。
それから容器も特別なものに変更したわ。
コストがグンと跳ね上がるけれど、王妃が使う特別なものだから仕方ない。
初回は無償献上ですが、販売価格はそれなりに設定させていただきました。
届けてすぐに王妃様から令状と登城せよとご招待が……逃げられない強制召還よね。
ぜんぜん招待ではない。
王家御用達が決定した瞬間だとうちの両親は喜んでいた。
うーん、複雑。
***
汗ばむ季節はまだまだ続く。私は少しバテ気味になっていた。
城に赴く当日、実家から派遣された侍女も合流したものだから、私の侍女メイド達は大騒ぎになったわ。
誰が城までついていくかで大揉めしていたの。
収集がつかなくなり、やむなく私の怒りの一喝を落とした。
なんだか酷く怯えていたけれど、そんなに怖かったのかしら?
ゲフン……ともかく、みんなが落ち着くとドレスの着付けに入った。
一安心と思ったんだけど――。
「コルセットのサイズが合いません」
え?
「ドレスのサイズも駄目です」
ええ?
「指輪と腕輪も合いません」
なんで?
まさか、私はまた太ったのかしら!?
ドーナツの試食を頻繁にはしていたけれど、体型に響くほど食べたかしら?
私は忙しさにかまけて碌に鏡を見ていなかったことをすごく後悔した。
「す、姿見をすぐここへ!」
私はゴクリと唾を飲んで己の恐ろしい姿を見ることにした。
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