なぜか淫魔になりまして

そらうみ

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「マサキ…何してんの?」
「え?何も?」
「百歩譲ってスキンシップが増えた事はまぁいいとして…なんで俺は今、机の上でお前に押し倒されてるんだ?」
「いつもの事では?」
「何もしてなくないじゃん!やる気だろ!?」
「いつもしてるだろ?無意識過ぎて自覚無かった」
「っ、ここ、教室!場所を考えろ!」
「なんで?誰もいないのに」
「誰か来るかもしれないし、誰も来なくても嫌だって!」
「?」
 俺の目の前には、マサキの不思議そうな顔がある。久々に見た表情だな。
 無事にマサキと付き合うようになり、俺はこの世界で生きていこうと覚悟を決めたのだが…最近、マサキについていけなくなっている…。
 四六時中一緒にいるのは良いとしよう。やたらとスキンシップが多いのも…まぁ良いとしよう。ただ…最近は場所を問わずに、隙あらばこんな感じで…。
 おい嘘だろ…初対面の頃、俺に興味なしだったマサキとは別人だな。
 俺はマサキを押して体を離す。
「俺は人目につくようなところでやりたくない」
「なんで?というか、タクミ。人前でキスも嫌がるよな?」
「人前ではな!慣れてない!恥ずかしい!」
「恥ずかしい?キスなんて一瞬だろ?」
「おま…この前キスしながら、止まらなかったよな!?」
「あーあの時。初めてタクミに殴られたな。痛かった…」
「っ…それは悪かった…本当に悪かったけど!あそこ普通に廊下だったよな!?」
「そうだっけ?」
「しかも、普通に人通りあったし…本当にどんな神経してんの?」
「なんで人前を嫌がるの?」
「恥ずかしくないのか?」
「別に?逆に、タクミは我慢出来るの?」
「出来るわっ!え?我慢できないの…?毎晩あんだけ部屋でやってるのに…?」
「いや?我慢しようと思えば出来る」
「出来るじゃん!!!なんで部屋の外ですんの?」
「え?他人への見せつけ」
「嘘…だろ…?」
 俺は呆れて固まってしまう。すると、マサキは俺が観念したと思ったのか、俺の制服のボタンを外そうとしてーーー。
「いい加減にしろっ!!!」
 俺はマサキを突き飛ばして教室を出て行った。

「え?なんでたっくん嫌がってるの?」
「…っお前もか…そうだとは思ったけどさ!!!」
 俺はイツキを捕まえて話を聞いてもらっていた。けれど、イツキもマサキと同じように、キョトンとした様子で俺の話を聞いている。
「え?たっくん、マサキ君と付き合ってるんだよね?」
「悪魔には…羞恥心とかないのか?」
「んー、人前を嫌がる子もいないわけではないけど…君たちはお互い好きどうしでしょ?隙あらばやりたくならない?」
「…これ、人前でマサキを拒否し続けていたら…マサキに嫌われるやつ?俺が折れないといけない?」
「んー?嫌いにはならにだろうけれど、悪魔の常識的には、なんでかなーっとは思うよね」
「…っ」
 俺がマサキに嫌われたら、それはこの世界での終わりを意味する。いや、生き残るのはもちろんだけれど、普通にマサキには嫌われたくない…嫌われたくないけどさっ!!!
「…っーーー」
 この世界の常識に馴染みきれてない俺…。元人間の感覚はそう簡単にはなくならない。どうしても人前だと恥ずかしいし、すぐに顔が赤くなる自分も嫌なのだが…。
 いや、もう気にしなくてもいいんだ…俺は淫魔なんだし!!!淫魔なんだから、何したって平気だろ!!!
「…俺って本当に淫魔?」
「たっくんまだ言ってるの?んーマサキ君がたっくんにべったりするのって、本当に周りへの見せつけがあるからね」
「マサキにそんな意思が?それって”強欲”の特性?」
「人前でいちゃいちゃするのって、今はこの人に夢中でーすっていう見せつけになるからね。周りにそういう態度を見せておかないと、マサキ君と恋人だっていっても声はかかるよ?たっくん淫魔だし、十分に有りうるよね」
「…まじかよ」
 マサキの行動が、まさかそんな意味もあったなんて…。
 言葉を失っている俺に、イツキはさらに付け加えた。
「まぁ、マサキ君も、普通にやりたいだけなんじゃない?」
「それもそれで…」
 この世界で生きていくと決めたからには…腹をくくるしかないのか!?
 俺の動揺を見ながら、何故かイツキが優しく微笑んでいた。
「たっくん、僕から最後の助言」
「何?最後って?」
「たっくんはもう立派な淫魔なんだけれど、何より淫魔だなーってところを教えてあげるね」
「どういう事?」
「たっくんってさ、マサキ君を前にしたら、よく顔が赤くなるよね?」
「えっ?あ…まぁ…」
 俺は恥ずかしくなって下を向く。慣れない自分が恥ずかしいのだが…未だにマサキの顔を見ると駄目なのだ。
 イツキはさらに優しい笑顔を俺に向けた。俺はその笑顔を見て思わずどぎまぎする。イツキの笑顔も、マサキと違った意味で未だに慣れない。
「たっくん…淫魔はね、相手の好みに合わせる習性が多少あるんだよ。僕が思うに、たっくんがマサキ君の前で恥ずかしがったり赤くなるのって、マサキ君の好きなタイプに合わせているんだと思う。だから、他人の前で上手く出来ないのを気にしなくていいよ。恥ずかしがっているのは、結局マサキ君の好みという事で」
「…っ」
「僕ね、悪魔なのに悪魔らしくなくて、初々しくて、可愛くて、優しい二人が大好きだよ。二人が恋人になってくれて、本当に嬉しい」
「…うん」
 俺はイツキの顔を見る。優しく微笑むイツキを見て俺はーーー。
「なぁイツキ…もしかして…俺らに混ざろうとしてる?」
「バレた?よき理解者、今までのお礼って感じで、一回くらい混ぜてもらえない?」
「もらえない。けど、アドバイスどうも。やっぱり、ちゃんと伝えないと駄目だよな…ちょっとマサキの所行ってくる」
「うん。頑張って」
 そういって、イツキは笑顔で俺に手を振った。

 俺はイツキと別れてから、ずっとマサキを探していた。部屋に行ってもマサキは戻っていなかった。そのまま部屋で待っていても良かったんだけれど、俺は一刻も早くマサキに会いたかった。
 周りを探しながら廊下を歩いていると、逆に周りの生徒からの視線を感じる…。
「”強欲”に”印”をつけさせた淫魔君じゃん」
 俺に向けて独り言のように声を掛けてきた生徒を見る。普段ならそのまま無視するが、俺は意を決してその生徒に近づいた。
「なぁ、"印"をつけさせた俺の事、どう思う?」
「え?どう思うって?うーん。すごいよなーって感じ?」
「すごいだけ?」
「なんで?ってのもある。まぁ君を誘いにくいかな?」
「そっか…」
「でも、君って彼と距離有るよね?一緒にはいるけどさ、それだけだよね?」
「え?いや、それは…」
「まぁ、君とどうしてもやりたい奴は、あの”強欲”に勝てばいいんだからさ」
「は…?勝つ?」
「え?悪魔なんだから、欲しいものがあれば力で奪えばいい」
「えっと…つまり?」
「え?あの”強欲”に勝てるくらいの奴じゃないと、俺に手を出すなって意味の”印”じゃないの?」
「…っ!?」
 俺はそれを聞いた瞬間、その場から駆け出していた。
 何だそれ?また訳の分からないルールが出て来たな!でもマサキが”印”を付けたのは、俺が精力を吸収しやすくするためであって…これだと、マサキが誰かから喧嘩を売られるのかもしれないって事だよな!?
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