転生したら、HEROになれるはず

緋咲 ツバメ

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修業

剣士への道?

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最初は木の棒で木剣を受け止めていたが、所詮は木の棒。
徐々にヒビが入り、もう折れてしまうのも時間の問題であった。
「だせぇな、3対1で。」
三人組は声の主を見て。
「何か醒めたな。行こうぜ。」
そう息を絶え絶えにしながら、去って行った。
「ボウズ、大丈夫か?」
声の主は長身で銀髪の青年であった。
「えぇ、何とか。」
そう言うと、息を大きく吐いた。
「何故、やり返さなかったんだ?」
銀髪の男性はそう問いかけてきた。
「やり返して、益々敵意持たれても嫌ですから。それに3対1で勝てるか分からないですから。」
銀髪の男性は首を少し傾げながら。
「勝てるか分からないか、そう思ったのか……。」

そのまま、何やら考え込みはじめた。

「本当にありがとうございました。行きますね。」

「あぁ…、またな。」

またなの意味などを深く考えずに、その場を後にした。
分かった事はこの村はそんなに大きくはなく、村の周りには自然石で築かれた石垣で幾重かに囲まれていた。
いつも剣術の稽古をしてる広場は石垣を一つ越えた村の入口の手前だった。
村の入口には門番らしき数人の男が立っていた。
村の外に出るのは容易ではないようだ。

大した収穫はなかったが、黒髪の村人は他にいないらしい。
村人の殆どが赤髪か青髪だった。

村中を歩き回ったが、どうやらオレはあまり村人と仲良くはないらしい。
何の記憶もないオレには好都合であった。

村を歩き回り、家へと戻ると、入口の前にブライともう一人居た。
先程の銀髪の男だった。
「リョー、やっと帰ってきたか。」
銀髪の男性を気にしながら、ブライに挨拶した。
「リョー、こちらの方はレイ殿だ。」
「先程はありがとうございました。」
レイは手を左右に振り。
「礼なんて良いよ。君のお母さんには随分、お世話になったんだからさ。」
母親の記憶はないが、褒められて悪い気はしない。
「で、明日から剣術をレイ殿が教えて下さるそうだ。」
【えっ?あのひょろ造のシゴキから解放されるのか?】
レイの方を見ると、親指を立てて。
「そういう事だから、よろしくな。まぁ、そんなに長くは居れないんだが、君のお母さんのミューズさんとの約束だからな。他に気になる事もあるし。」
「よろしくお願いします。」
ひょろ造から解放される喜びと少し不安を抱えながら、頭を下げた。
「後、今日からここに泊まるから。」

レイはそう言いながら、家の中に入って行った。
レイはこの世界について、色々話してくれた。
レイは剣士らしい。
世界各地にはギルドがあり、レイも所属してるらしい。
普段のレイはギルドに来た依頼により、未踏の地を探索したり、害悪と認定されたモンスターを討伐したりするらしい。
未だに想像すらつかない世界であった。
ゲームの中の話にしか聞こえなかった。
モンスターが出るとか言われても、実物を見た訳でもなく、信じられなかった。

しばらく色々、話すとレイは明日に備えて、寝ないと……明日から猛特訓だから覚悟しといてねって、笑顔で言ったのが怖かった。
引きつった笑顔でお手柔らかにとしか言えなかった。

寝ようと目を閉じたが、昨日のプレゼントって……もしかして、レイの事?って、気になった。

もし、ひょろ造より厳しかったら、嫌だなって思いながら、何度も寝返りを繰り返した。

あれ?俺って、剣士になるの?なっちゃうの?
剣士になる妄想をしようかなって思ったが、とりあえず早く寝る事に専念する事にした。

翌朝、目を覚ますと、レイはまだベッドの中だった。
多分、いつもならたたき起こされているであろう時間。

鹿に似た家畜から取れる乳を容器に入れ、眠ってるレイを横目に飲み干した。

レイをじっと見てると、空中にマスが浮かんできた。
《レイ=ソリュー:27歳。■■剣◎、S級ハンター………現状、これ以上の情報を解読不能。》

なんだ、これ?
見えない文字はあるし、ほとんどなんの新しい情報もない。
でも、S級って事は凄いんだろうなってのだけ分かる。
とりあえず、レイはまだ起きそうにないので、村でもぶらつくか。

静かに家のドアを開いて、外に出ようとした瞬間。
「あれ?何処か行くの?」
レイが目覚めたらしい。
「ちょっと素振りでもしてこようかなって。」
「そう言えば、稽古の前に聞いておきたかったんだよ。リョーって、どんな剣振る気なんだ?」
「えっ?どんな剣って?」
レイ曰く、刺突剣、片刃剣、両刀剣、大剣、湾曲剣など多種あり、剣の使い方が違うらしい。
しばらく悩んだが………。
「片刃かな。」
心の何処かで刀を使いたいって気持ちがあり、そう言ったが。
「片刃かぁ……。まぁ、両刀剣の使い方が全ての基本だから、最初は両刀剣を教えていくけど。」

【えっ?じゃあ、なんで聞いたんだろ?】
そう思いながらも、レイが身支度するのを待った。
「それから……一つだけ言っておくと……無用な戦いはしろとは言わないが、身にかかる火の粉はちゃんと払うべきだよ。」
意味が分からなく、オロオロすると。
「昨日の私闘……三人倒さなくても、リーダー格さえ倒せば終わったんじゃないの?それに三人とも倒せないようには見えなかったけど。」
そう言われると、何も言い返せなかった。
確かに受け流す事も出来た様な気がした。
でも、前の人生でも何でもやれば、出来る気がした。
でも、それが出来たのは、妄想の中だけだった。
そんな風に考え込んでる間にレイは準備を終えていた。
「さて、始めようか?」
それから始まった稽古はひょろ造とは違い、レイは全ての稽古にその意味と一撃にかける集中を求めた。
素振りですら、相手を想像し、相手の攻撃を想定した素振りを課した。
体力的には疲れなかったが、考えながら剣を振るのがこんなにしんどいとは。
「明日から稽古前と稽古後に走るから、村周りを」
体力面に不安があるらしい。
確かに持久力はなさそうな気がしていたが、はっきり言われるとショックなものだ。
そんなに大きくない村と言っても、村の周りで3キロくらいはあるんだろうな。
いきなり稽古後に2周させられるとは思っていなかった。
「まぁ、今日はこんなもんかな。ある程度、体力ないと、防具つけたら、動けなくなるからな。」

「レイさん……」
「レイでいいよ。」
「……レイ、オレって剣士になるのかな?」
抱いてた疑問を投げかけてみた。
「あぁ、なれると思うよ。剣術始めたばかりの割には才能あると思うよ。」
レイには剣士になれるかと取られたようだ。
でも、才能があると言われて、悪い気はしなかった。
とりあえず剣士になろうかなって、軽く心に言い聞かせた。

レイとの修行が始まり、1ヶ月経とうとしてた。
そんなある稽古帰りの道で。
「リョー、そろそろ一旦、戻らないとダメみたいなんだ。」
最近、レイ宛に文書がよく届いていたのは気付いていたが。
「またヒマ見つけて、この村に来るから。ちゃんと修行しとくんだぞ。」
レイはこのまま、旅立つらしい。
その日の夜は久々に一人になる寂しさを感じてしまった。

翌朝、ドアの隙間に一通の手紙が挟んであるのに気付いた。
   “リョーへ
         剣は毎日の積み重ねが大切だから、休まな
        い様に。
        それから私闘は禁ずる。”

私闘を禁ずる?あれ以来、絡まれる事もないのになって。
だが、それはレイが居たからであったのは気付かなかった。
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