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新しい四月
9.5話 裏・四月号
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「じゃあ、はじめっか」
今日は真面目な四月下旬。
神田の体に、異常はあれ以来一度も起きてないが、一応プロファイルを作っておこうというのが葛城の提案だ。
神田が話しやすいように、僕と葛城、なぜかブラウンが同席した。
ハルは仲間外れだった。
本人は気にしてないみたいだからよかった。
「まず、術式の概要からだ」
僕が質問者だ。
「はい、術名『禁忌術・死者復活』しかし、これは偽で、真の名は、『憑依体召喚』でした」
淡々と話す神田の声を紙とペンと録音機で記録するのは葛城、記録係だ。
「うんうん、それで!」
「内容は、割と綺麗な水辺と、人形またはそれっぽいぬいぐるみを五体……」
「おいおいちょっと待て!それっぽいでいいのか?」
「ちょっと!廻君!録音してるんだから変な声ださないで!」
「わ、悪い……(別にいいんだ、それっぽくて)」
「続けますね、五体を自分を中心にして、正五角形になるように置きます。そしたら、例の液体を塗布します」
「ふんふん!興味深いですなぁ!」
葛城のペンは止まらない。
今にでもペン先が壊れそうだ。
ん?ボールペンだぞ。
「初日は、血ではなく絵の具を塗布しました……でも……」
急に神田が顔を落とした。
「どうした?気分が悪いなら言ってくれ、中断……いや、やめっから」
「そ、そうじゃないんです。一体だけ……」
「一体だけ……?」
「チョコレートを塗ったんですね……大量に……」
ブラウン以外の二人は予想外のコトバに面食らった。
「チョコレートォ!?なぜに?」
「家の絵の具が足りなかったんですよ、だから代用できて大量に余ってるのはチョコかなぁーって……あ、でもそしたら、儀式中に急にあり得ないくらいの頭痛がして、視界に映る全てがチョコレートに見えてきて……」
「なるほどな」
「ちょっと、廻君だけで納得しないでよね」
葛城がペンを止めた。
僕は葛城を無視して、録音機の電源をオフにして、とっておきの質問した。
「じゃあ神田、チョコレートヘッドってなんだ?」
「…………なんですかそれ」
寝起きのかわいい少女みたいな顔しやがって。
これは確実に知らないと、表情で読み取った。
「そうか……悪かった、今の質問はなしだ」
再び録音機をオンにした。
「今の何?廻君!?チョコレートヘッドって何?」
葛城は質問するが僕は答えない。
「次にいこう、その頭痛の最中は、意識がはっきりしているものなのか?」
「いえ、完全に意識を失っていると思います。なんたって目が覚めた後、記憶がないんですから」
ペンの音が聞こえる。
「じゃあ、目が覚めた後の気分と後遺症について」
「特にないです。すこぶる快調です」
「次は二日目、なぜアタックαを盗んだのか」
僕がこの質問をすると、葛城の体が大きな脈動を打った。
「(どうした?)」
「あの武器は幽霊退治に使えるって聞いて、もしかしたら昨日私を襲った意識の正体を倒せるんじゃないかなぁと思って……」
「なるほどね、わかった。でもアレは危険な武器だ二度と使用しないように」
神田はすぐに二回頷いた。
「つーか葛城、何で僕のアタックαを持っていたんだ(しかも器用に片方だけ)?」
「廻君をイジリたくてねぇ……ごめんなさい!片方だけだよって謝ろうと思ってたんだよ?許せよ廻」
「(ああ本当に片方だけでよかったよ)馬鹿野郎」
切り替えの気持ちで深呼吸した。
呼吸は、吐いてから吸うものだ。
くしゃみがでた。
「次、血を人形に塗って、その後について」
「はい、結果、塗布する量は少量でいいことがわかりました。そして、次に詠唱します」
すると神田は、また軟廻廊の書を取り出し、該当ページを開いた。
文字で満ちた3ページを読むらしい、具合が悪くなる前に閉じてもらった。
「憑依体が入っている時は、どんな感じなんだ?」
「そうですねぇ……ってえ?」
葛城が好奇心爆発で神田に接近していた。
それの襟を僕がしっかり掴み、引き離した。
「続けます、感覚はフワフワした感じです。私じゃない誰かが私を操作していて、何でもできる気がしてくるんですよね。そして私が体に命令するんです。」
「何て?」
『……おときたを殺せ☆って』
背筋が凍った。
変な汗で体温が下がるのがわかった。
「オーケー続けろ――」
「後は自分でコントロールできないですね、記憶が廻さんにセクハラされたところから始まってますから」
「もうそれは忘れて……」
ブラウンが一瞬反応した。
「セクハラってどういうことですか!?」
「僕に訊かないで!」
「ブッ……触ったなら触ったなりに堂々としていればいいのに、そうじゃないと本気で怒りますよ!」
神田が吹き出したところで終了した。
僕のセクハラはどうあれ、神田にもう一つの自我が存在していることは事実だ。
これからは、僕たちが彼女を見守っていかなければならない。
でも、もう一度河川敷を電撃で包むのは御免だ。
そうそう、憑依体について、葛城が命名した。
霊魂NO.06:operation empty
このネーミングセンスはどうにかならないか。
今日は真面目な四月下旬。
神田の体に、異常はあれ以来一度も起きてないが、一応プロファイルを作っておこうというのが葛城の提案だ。
神田が話しやすいように、僕と葛城、なぜかブラウンが同席した。
ハルは仲間外れだった。
本人は気にしてないみたいだからよかった。
「まず、術式の概要からだ」
僕が質問者だ。
「はい、術名『禁忌術・死者復活』しかし、これは偽で、真の名は、『憑依体召喚』でした」
淡々と話す神田の声を紙とペンと録音機で記録するのは葛城、記録係だ。
「うんうん、それで!」
「内容は、割と綺麗な水辺と、人形またはそれっぽいぬいぐるみを五体……」
「おいおいちょっと待て!それっぽいでいいのか?」
「ちょっと!廻君!録音してるんだから変な声ださないで!」
「わ、悪い……(別にいいんだ、それっぽくて)」
「続けますね、五体を自分を中心にして、正五角形になるように置きます。そしたら、例の液体を塗布します」
「ふんふん!興味深いですなぁ!」
葛城のペンは止まらない。
今にでもペン先が壊れそうだ。
ん?ボールペンだぞ。
「初日は、血ではなく絵の具を塗布しました……でも……」
急に神田が顔を落とした。
「どうした?気分が悪いなら言ってくれ、中断……いや、やめっから」
「そ、そうじゃないんです。一体だけ……」
「一体だけ……?」
「チョコレートを塗ったんですね……大量に……」
ブラウン以外の二人は予想外のコトバに面食らった。
「チョコレートォ!?なぜに?」
「家の絵の具が足りなかったんですよ、だから代用できて大量に余ってるのはチョコかなぁーって……あ、でもそしたら、儀式中に急にあり得ないくらいの頭痛がして、視界に映る全てがチョコレートに見えてきて……」
「なるほどな」
「ちょっと、廻君だけで納得しないでよね」
葛城がペンを止めた。
僕は葛城を無視して、録音機の電源をオフにして、とっておきの質問した。
「じゃあ神田、チョコレートヘッドってなんだ?」
「…………なんですかそれ」
寝起きのかわいい少女みたいな顔しやがって。
これは確実に知らないと、表情で読み取った。
「そうか……悪かった、今の質問はなしだ」
再び録音機をオンにした。
「今の何?廻君!?チョコレートヘッドって何?」
葛城は質問するが僕は答えない。
「次にいこう、その頭痛の最中は、意識がはっきりしているものなのか?」
「いえ、完全に意識を失っていると思います。なんたって目が覚めた後、記憶がないんですから」
ペンの音が聞こえる。
「じゃあ、目が覚めた後の気分と後遺症について」
「特にないです。すこぶる快調です」
「次は二日目、なぜアタックαを盗んだのか」
僕がこの質問をすると、葛城の体が大きな脈動を打った。
「(どうした?)」
「あの武器は幽霊退治に使えるって聞いて、もしかしたら昨日私を襲った意識の正体を倒せるんじゃないかなぁと思って……」
「なるほどね、わかった。でもアレは危険な武器だ二度と使用しないように」
神田はすぐに二回頷いた。
「つーか葛城、何で僕のアタックαを持っていたんだ(しかも器用に片方だけ)?」
「廻君をイジリたくてねぇ……ごめんなさい!片方だけだよって謝ろうと思ってたんだよ?許せよ廻」
「(ああ本当に片方だけでよかったよ)馬鹿野郎」
切り替えの気持ちで深呼吸した。
呼吸は、吐いてから吸うものだ。
くしゃみがでた。
「次、血を人形に塗って、その後について」
「はい、結果、塗布する量は少量でいいことがわかりました。そして、次に詠唱します」
すると神田は、また軟廻廊の書を取り出し、該当ページを開いた。
文字で満ちた3ページを読むらしい、具合が悪くなる前に閉じてもらった。
「憑依体が入っている時は、どんな感じなんだ?」
「そうですねぇ……ってえ?」
葛城が好奇心爆発で神田に接近していた。
それの襟を僕がしっかり掴み、引き離した。
「続けます、感覚はフワフワした感じです。私じゃない誰かが私を操作していて、何でもできる気がしてくるんですよね。そして私が体に命令するんです。」
「何て?」
『……おときたを殺せ☆って』
背筋が凍った。
変な汗で体温が下がるのがわかった。
「オーケー続けろ――」
「後は自分でコントロールできないですね、記憶が廻さんにセクハラされたところから始まってますから」
「もうそれは忘れて……」
ブラウンが一瞬反応した。
「セクハラってどういうことですか!?」
「僕に訊かないで!」
「ブッ……触ったなら触ったなりに堂々としていればいいのに、そうじゃないと本気で怒りますよ!」
神田が吹き出したところで終了した。
僕のセクハラはどうあれ、神田にもう一つの自我が存在していることは事実だ。
これからは、僕たちが彼女を見守っていかなければならない。
でも、もう一度河川敷を電撃で包むのは御免だ。
そうそう、憑依体について、葛城が命名した。
霊魂NO.06:operation empty
このネーミングセンスはどうにかならないか。
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